しっかり結果を出す人と、結果が出せずに言い訳ばかりする人は何が違うのか。2700社以上の企業で組織の問題を解決してきた識学の安藤広大社長は「『結果は出ていませんが、こんなに頑張っています』『数字以外の部分で貢献したので評価してください』などと言って自分の問題点から目を逸らす行為は、『自己欺瞞』と言います。この状態になってしまうと、なかなか直りません」という――。

※本稿は、安藤広大『数値化の鬼 「仕事ができる人」に共通する、たった1つの思考法』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。

ビジネスシューズを履いた男性の足元とカラフルなグラフ
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数字は人の価値を表すものではない

まず、数字での評価は、別に「人間としての点数」や「人としての価値」を表しているわけではありません。

仕事上の「数字」は「機能」として切り分けて考えないといけないのです。

なぜ、数値化をするのか、それを考えていきましょう。

それは、「未来」に目を向けるためです。

数字は、いま、自分には何が足りていないのか、どういう課題があるのか。それを「見える化」しているだけです。

テストで20点が足りていないのは、「次にどうすればそれを埋められるのか?」を考えるための手段です。もちろん、過去のあなたに対する評価は下されます。

しかし、「じゃあ、次はどうするか?」が常にセットなのを忘れてはいけません。そこまでを考え切って初めて数字は意味を持ちます。

その手前だけで終わっているから、数字を見ることがどんどん嫌いになります。

それは、ダイエットをしようとしている人が体重計に乗って現実を見ることを怖がっているのと同じです。

数字として表せるものは、さっさと受け入れて客観的に分析するしかありません。そして、次につなげるのです。そうやって改善していき、次こそはうまくいったとしたら、どうでしょう。

途端に「数字」が好きになり、「数字」に向き合うのが楽しくなります。

その好循環をいち早く起こすのが、プレーヤー期間には求められることです。

「数値化」は誰が見ても公平な評価を可能にする

組織にいる限り、上司が評価を下し、部下がそれを受け取ります。

すると、次のような疑問が出てくると思います。

「評価する側の人に問題があったらどうするのか?」

人を評価する他者への疑念が出てくるはずです。そこに対する識学の答えは、こうです。

「組織に所属している限り、直属の上司から評価される存在として、あなたは働いている。だから、評価につながる結果を出そう」

どうでしょう。少し厳しい言い方に感じたかもしれません。

上司と部下の関係を正しく機能させるためには、「公平性」がとても重要です。誰が見ても公平で明らかな評価を、上司は部下に対して下す必要があるからです。それを可能にするのが、「数値化」です。

・売上が「いくら」なのか
・改善行動が「何回」あったか
・期限を「どれだけ」守ったか

と、すべてのものごとを、いったん、数値化して評価するようにします。もちろん、数値化が難しい領域もありますが、まずはすべて数値化できる前提で話を進めていきます。

数字がないから「不満」が生まれる

逆に、数字ではなく「曖昧な概念」で評価をすると、不公平が生まれます。なぜなら、気に入っている部下に甘い評価を下せてしまうからです。

すると、次のような不満が出てきます。

「私の給料、どうやったら上がるんでしょうか。こんなに頑張っているのに」
「なぜ、あの人のほうが能力が低いのに、給料が高いんですか?」
「この積極性の評価点、どうしてDなんですか。Aのつもりなんですけど」
「私だけ未達成なのに、みんなと同じ給料でいいんでしょうか……」

これは、経営者やマネジャーの方々に来る質問の一例です。みなさんも、感じたことがあったり、同僚から言われたりしたことがあるのではないでしょうか。

これらの問題は、すべて「数値化」で解決することができます。

部下の立場では、上司が評価せざるを得ない結果を出すことが最優先事項です。「あんな上司に評価されても仕方ない」と思うのではなく、結果を出すことが何より見返すチャンスになると思って、感情を横に置いてみてください。

ちなみに、識学を導入した会社では、数値化による評価制度を会社全体で徹底してもらうようにしています。

「導入されていない会社だったらどうすればいいのか?」と思うかもしれません。世の中の多くの会社では、曖昧な評価基準で感覚的に上司が評価を決めているからです。

その場合は、まずは上司に対して、お互いの認識のズレがないように、「どの数字を達成すれば、自分の評価につながるのですか?」と伝えてみましょう。あなた個人は、正しく数値化で物事を考える姿勢を貫いてほしいと思います。

ノートに書かれた評価のチェックポイント
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日頃から「数字のある会話」をしているだろうか

ここまで、評価に対するネガティブなイメージを取り除く話をしてきました。

どちらかといえば、「受け身」に感じたかもしれませんが、次は「主体的」な話です。

ここまでの話を受け入れたプレーヤーは、自分の目標達成のために動くようになります。つまり、心を鬼にするようになる。

すると、ある1つの共通点が現れます。

それは、「会話の中に数字が出てくる」のです。

逆に、会話に数字がない人というのは、どういう人でしょうか。

「これを売りたいんです!」「このビジネスはうまくいきます!」

こういった話し方をする人がいます。情熱で押し切るようなタイプです。

新入社員や20代の頃であれば、この言い方でも通用したかもしれません。

こういう若者を過剰に評価してしまう経営者や社長がいることも事実ですからね。

しかし、現実はそれだけではダメです。情熱で押し切る方法しか知らない人も、どこかでその壁にぶつかります。30代や40代で、こういう情熱的な言い方しかできない人は、社会人としてかなり厳しい状態になっていきます。

年次を経るにつれて、数字の根拠を出し、論点を整理して話すようにしないと伝わらない場面が増えていくはずです。

「この商品は1000万円の売上が見込めます。その理由には3つあって……」
「このシステムを社内に導入したら、毎月200万円のコストが削減できます。それだけで5人分の給料が捻出できます……」

このように、誰かに伝える段階では、数値化させることが有効です。

感情にうったえかける表現は、最後の味付けのようなものです。

腐った肉にどんなにスパイスを振りかけても、腐っている肉は腐っています。

もちろん、人間ですから数字だけで動かない面もあるでしょう。そこで最後に熱を伝える……、というのが正しい順番です。あくまで数字が先です。

よく、社長が験担ぎをしたり、神社にお参りをしたりします。

それは、「やるべきことはすべてやった」「数字的な検証はすべて考えに考え抜いた」というように、他にやるべきことを終えてから儀式的に行なうから意味があるのです。

これも、順番が逆にならないことが大事です。

1日を「数字」で振り返ってみる

とはいえ、いきなり数字のある会話ができるようになるわけではないでしょう。そこで、まずやってみてほしいのが、「自分の1日の行動を数字で考えること」です。

安藤広大『数値化の鬼 「仕事ができる人」に共通する、たった1つの思考法』(ダイヤモンド社)
安藤広大『数値化の鬼 「仕事ができる人」に共通する、たった1つの思考法』(ダイヤモンド社)

多くのビジネスパーソンは、半年や1年間で目標を設定していると思います。

そのゴールを漠然と目指している状態は、夏休みの宿題を抱えて「そのうちなんとかなるだろう」と思っている状態と一緒です。

中だるみしてしまい、後から焦って頑張るようなタイプの人を生み出してしまいます。

ここで大事なことは、大きな目標を「1日ごと」に分解することです。

これは、新入社員や若いプレーヤーであれば、上司によって管理されているかもしれません。日報を書いたり、「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」をする人もいるでしょう。

ちゃんと意図を理解した上でそれらに取り組んでいるなら、特に問題はありません。

しかし、多くの場合は、形骸化して仕方なく惰性でやっていることでしょう。

「言われたからテキトーに日報を書いています」
「なあなあのほうれんそうをしています」

そういう人が多いのではないでしょうか。

意図もわからずに、なんとなくやらされ感や義務感でやっていると、どんどん言い訳が増えます。

ごまかすのが当たり前になるはずです。

そうならないためには、1日ごとの数値化を「自分のため」にやるのです。

自分がどれだけやったのかを嘘偽りなく表すこと。まさに、心を鬼にできるかどうかが試されます。

言い訳の多い「中堅社員」の共通点

日報やほうれんそうでテキトーなことを書いてその場を逃れるのか、ちゃんと数字と向き合って報告するのか。これによる「差」は、年を重ねるごとに大きく開いていきます。

テキトーな報告をしている人は、次第に次のような発言を平気でするようになります。

「結果は出ていませんが、こんなに頑張っています」
「数字以外の部分で貢献したので評価してください」

こうやって自分の問題点から目を逸らす行為は、「自己欺瞞ぎまん」と言います。

この状態になってしまうと、なかなか直りません。

できていないことに向き合うのではなく、正当化して周囲に問題を押し付けるような考え方をしてしまうのです。そのほうがラクだからです。

今の日本の会社組織は、このタイプの中堅社員を一定数、生み出してしまう構造があります。

それを何としても食い止めたいなと私は考えているのですが、若ければ若いほど、まだ取り返せるチャンスがあるのです。

自分の足りない部分を考えることをしなくなり、すべて他人や上司、会社のせいにして考えてしまうようなら、気をつけてください。

そうならないために、数値化が必要なのです。

数値化ができる人は「失敗」が当たり前になる

数値化できるようになると、失敗を認めることができます。

「失敗しなくなる」のではありません。「失敗を認められる」のです。

そもそも、ビジネスにおいて失敗はつきものです。失敗があることが当たり前です。私自身、失敗の連続です。

大事なことは、失敗を失敗と認めて、次につなげることです。

同じ失敗を繰り返すことだけは、避けないといけません。たとえば、目標を立てて英語を勉強するとしましょう。「1日10単語を覚える」という目標を立てて、実行し、1日に8単語しか覚えられなかったとします。

そうであれば、次にどうすれば10単語が覚えられるのか、あるいは、そもそも10単語の目標が高かったのか。それを分析することができます。

失敗は貴重な情報です。

それを数値化して受け入れれば、絶対に次につなげることができます。

しかし、日々、なんとなく「10個も覚えられないなぁ」「集中力と気合いが足りないんだろうなぁ」と繰り返していると、いつまで経っても改善されません。

なんとなくダイエットを始めて、「なかなか痩せないな……」と思い続けるのと同じで、ムダな時間でしかありません。

失敗は数値化して次につなげてこそ、結果を生むのです。