リモートワークの浸透によって、働き方だけでなく、働く意識も変わった人が多いだろう。経済評論家で、あらゆる物事の効率化のプロとしても知られる勝間和代氏は、「1日7、8時間も長時間労働して成果を得る時代は終わったと認識しましょう。長時間労働をしないとお金が手に入らない、という思い込みは捨ててください」という――。

※本稿は、勝間和代『勝間式生き方の知見 お金と幸せを同時に手に入れる55の方法』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

時計にはさまれた男性
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働き方の常識を疑え

かつて、働くことは大人になるための通過儀礼の一つで、社会で苦役を味わうことで一人前になれる、と考えられていました。しかし、賃金を得ることと人間的な成長は別の話ではないか、と気づいた人たちから自由な働き方を構築し始めました。そして、労働に対する価値観を広く一般に揺るがし始めたところでコロナ禍になり、多くの人が働き方を変えることを余儀なくされています。

世界は瞬時に一変する可能性があることが生きる前提になり、生活様式も仕事の仕方もサスティナブルである必要性が高まったのです。そのため、サスティナブルな働き方でない長時間労働に疑問を抱いた人も多いのではないでしょうか。

1日7、8時間働く時代は終わった

現に、リモートワークの浸透によって、労働時間ではなく成果物で人事評価される傾向が強まっています。これは、長時間労働から短時間労働にシフトするチャンスとも言えるでしょう。

そもそも、労働時間というのは、私たちが何かの成果を上げるときの「投入量」であって、成果物ではないわけです。にもかかわらず、多くの給与体系が1時間でいくら、1カ月でいくらという時間ベースで払われているために、ほとんどの人が労働に対する概念を勘違いしてしまいました。

まずは、この労働に対する最大の勘違いを改めてください。1日7、8時間も長時間労働をして成果を得る時代は終わったと認識して、長時間労働をしないとお金が手に入らない、という思い込みは捨てましょう。

長時間労働の原因は?

コンピューターをはじめとするテクノロジーの進化によって、労働生産性はものすごく上がっています。一部の研究によると、本当に必要な顧客や市場、社会の価値につながる仕事だけにすると、労働時間は週に12~15時間で済むことが明らかになっています。現在、週に40~50時間も働いているとしたら、半分以上を不必要なことに費やしていることになるのです。

時計が星屑になっていくイメージ
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本来なら短時間労働で済むのに、なぜ長時間労働のままなのか。それは、雇用形態が旧態依然として、変わっていないせいです。

10人中9人が「長時間労働を頑張る怠け者」

雇用形態の問題なら、被雇用者はどうすることもできない、と言う人が多いと思いますが、私たち一人ひとりが賃金は時間ベースで払われるものではない、と考え方を改めなければ、変わるものも変わりません。女性に多い仕事と家事の両立の悩みも解決せず、男性の家事や育児参加も進みません。男女のどちらかが必ず負担を負う構図から抜け出すこともできません。抜け出すには、どうやったら短時間労働で十分な報酬につなげられるか、ということを真剣に考えなければならないのです。

ところが、これについて真剣に考えている人は、10人に1人もいないと私は感じています。確かに、短時間労働で十分な報酬を得られる仕事の供給量は多くありませんが、どうやったら抜きん出ることができるのかを考えなければ何も変わりません。私は、長時間労働を疑問なく行う人たちのことを、かつてその一人だった自分への揶揄も含めて、「長時間労働を頑張る怠け者」と呼んでいます。

短時間労働にシフトするカギ

今、私は週に5~7日働いていますが、最長で1日4、5時間で、できるだけ3時間以上は働かないようにしています。会社員時代と比べて仕事の数はまったく減っていないことを考えると、会社員時代はいかに不必要な社内仕事が多かったか、ということを痛感します。

これから短時間労働を目指そうと思うなら、まずは6時間以下を目標にすることをお勧めします。同時に、労働体系を成果報酬型に切り替える方法を探ってください。これが、短時間労働にシフトする最大のカギです。

もし私が時給1200円のパートをしたら…

私のケースは多少極端かもしれませんが、基本的に時間でいくらという仕事は引き受けてなく、成果報酬型の仕事が中心です。例えば、本の執筆は完全に成果報酬型です。多くの日数をかけて執筆しても、売れなければ初版の印税が手に入るだけです。数時間で済む講演を一つ行うのと大差ありません。

仮に私が、本が売れなかった場合のリスクを取らずに、かつ短時間労働をしようとしたら、時給で働くことになります。通常のパートタイマーの時給の相場は地方なら1050円ぐらい、東京でも1200円弱です。その時給の短時間労働では、残念ながら生活は非常に厳しくなってしまいます。

多くの人が成果報酬型にすることを怖がりますが、成果報酬型は最悪が0円である代わりに、上限は無限とは言わないまでも、時給で数十万、数百万まで上がる可能性があります。固定報酬型と違って、リターンが増えるチャンスが満載です。

「自分には無理」を突破するヒント

こういう話をするとよく、成果報酬型は能力がある人にしかできないでしょう、ということを言われますが、その場合、能力の生かし方についての考え方を少し見直す必要があると思います。

多くの人は、与えられた分野でどうやって活躍しようか、という考え方をします。しかし、より多くの報酬を得るには逆の考え方をすべきで、まず、自分がどの分野なら活躍できるか、ということを見極めてください。自分にとって不得意なことや、向いていない分野で成功することはかなり難しく、どんなに努力をしても無駄になる可能性が高いからです。

成果報酬型へのシフトは計画的に

いきなり成果報酬型に切り替えるのが難しければ、何カ年計画を立てて、少しずつ実現すればいいわけです。基本給は固定でも、ボーナスは成果報酬型という会社もあります。現に、私が30代のときに勤めていた証券会社がそうでした。転職するならそういう会社がお勧めです。

年齢が若ければ下積みとして割り切って一定期間、固定報酬型で働くのも一案です。ただし、3年以内には成果報酬型にシフトする、という期限付きの決意をしてください。日本では、「石の上にも三年」のようなことわざを用いて、一つのことを長く続けないのは根性なしのような言われ方をしますが、残念ながら人生は短いので聞く耳を持つ必要はありません。

経済的自由を得るには「S」以上に

アメリカの投資家で実業家のロバート・キヨサキの『金持ち父さん貧乏父さん』(筑摩書房)では、世の中で収入を得る方法は「ESBI」というキャッシュフロー・クワドラントだと定義されています。キャッシュフローはお金の流れ、クワドランドは四等分や四分割という意味で、ESBIは「Employee(従業員)」「Self-employed(自営業者)」「Business owner(ビジネスオーナー)」「Investor(投資家)」の言葉の頭文字をとったものです。そして、各クワドランドの金銭的価値観は、次の通りです。

勝間和代『勝間式生き方の知見 お金と幸せを同時に手に入れる55の方法』(KADOKAWA)
勝間和代『勝間式生き方の知見 お金と幸せを同時に手に入れる55の方法』(KADOKAWA)

E(従業員):安全
S(自営業者):独立
B(ビジネスオーナー):富の形成
I(投資家):経済的自由

世の中の9割の人は、自分のお金の儲け方をEの状態で止めます。しかし、Eのままでは、経済的自由も時間の自由も得にくい、というのがロバート・キヨサキの考え方です。

私はこの考え方には概ね賛成で、補足するなら、EをしながらSの準備としてブログやYouTubeを始めたり、投資信託などでIを行ったりするなど、並行してできることもあります。実際、私は会社に勤めていたころからブログを始めてアフィリエイト収入を得て、副業として本の執筆も始めました。

Eのままでも十分な収入をくれる企業は少数存在しますが、それは長時間労働と引き換えです。Eのままで、十分な収入と自由な時間を手にできる「キャッシュリッチ&時間リッチ」にはなることは定義上不可能なのです。