※本稿は佐藤智春『その不調、栄養不足が原因です』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。
小さな不調をやり過ごすうちに鉄不足は加速
まず、以下のチェックリストを見てください。該当するものはありますか?
□ 朝、起きられない
□ 動悸や息切れがする
□ 肉をあまり食べない
□ 頭痛がよくある
□ やる気が出ない
□ 体温が低い
この中で3個以上あてはまる人は、ふらふら鉄欠乏タイプです。
鉄不足、つまり貧血が要因で不調になるのが、このタイプ。症状は息切れや動悸にとどまらず、だるさがとれない、冷えが生じる、胃腸が弱る、さらにはコラーゲンの生成にも影響が出て肌荒れなど美容面の不調までもが降りかかる、まさに「不調のデパート」。小さな不調をやり過ごすうち、気づけばツラさの多重債務状態。あなたはいま、鉄の負債まみれです!
血液検査では見つからない“隠れ貧血”
いつも疲労感が抜けない「ふらふら鉄欠乏タイプ」のあなたは、貧血(鉄不足)による不調の可能性が高い人です。動悸や息切れ、めまいといった代表的な症状のほか、朝起きられない、やる気が出ない、集中力を欠く、頭痛がつらい、口内炎をくり返すなど、多岐にわたる不調のデパート。
それでも血液検査では基準値内のために「貧血」と診断されないことが多く(隠れ貧血)、症状ごとに病院を受診してしまうようなことも起こりがちです。原因がはっきりせず、さまざまな不調が重なって悩んでいる人は、まずは鉄不足を疑ってみましょう。
鉄が不足して体のいたるところが酸欠状態に
貧血の原因の9割は鉄が足りない、鉄欠乏です。女性は初潮から閉経までの約40年、月経で鉄を失うため、自覚症状はなくても貧血の人が多いのです(隠れ貧血)。失う分を上回る量を食事で補給するのが理想ですが、成人女性の1日の鉄の摂取推奨量が10.5~11mg〔*「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より 成人女性(月経あり)の場合〕であるのに対して、現状は平均で6.8〜7.3mgしかとれていません(*「平成30年国民健康・栄養調査」より)。こうして体内で鉄の負債が少しずつふくらみ、鉄欠乏の症状が出始めます。特に、月経が終わった直後2日ほどは症状がきつい傾向にあります。
鉄は血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの材料になります。ヘモグロビンは体中に酸素を届ける運送屋なので、鉄が不足してヘモグロビンが減ると、全身が酸欠状態に陥ります。脳が酸欠になると、ぼ~っとしたりやる気が出なかったり。筋肉や肝臓に酸素が行き届かないと、疲れの回復に時間がかかり、常にだるさを感じるようになります。また、鉄はコラーゲンの生成にも欠かせないため、肌荒れや抜け毛など、美容面にも影響します。
食生活では、菜食主義やマクロビ食を好む人は、肉をとらないため、鉄不足になりがちです。また、ダイエットや筋トレに励む人は、肉を食べていても、鶏胸肉やささ身が中心だと、鉄欠乏に陥っているかもしれません。鶏肉は優秀なたんぱく質源ですが、鉄はほとんど含まれていないため、ヘモグロビンの材料にはなりにくいのです。激しい運動を行う人も、汗とともに鉄が体外に排出されてしまうので、要注意! 鉄もたっぷりで、筋肉の材料にもなる赤身の肉や魚をしっかりとることをおすすめします。
こんな生活をしている人は要注意
下記3点に心当たりがある人は要注意です。
①月経の出血量が多い(かたまりが出ることがある)
②肉や魚をあまり食べず、野菜中心の食事をしている
③ランニングなど、激しい運動を日常的に行う
経血量が多い場合は、失う鉄の量もふえます。また、ヘモグロビンの合成にはたんぱく質が必要なため、肉や魚の摂取が少ないと、貧血症状は改善されません。運動時に流す汗でも鉄を失うので、激しい運動をする人は意識して補給を。
貧血に効く食品&正しい食べ方
鉄欠乏性貧血を改善するためには、ヘモグロビンの材料になる鉄とたんぱく質をしっかりとることが大事です。毎日の食事で鉄を効率よくとるために知っておきたいのが、鉄は食べた分がすべて吸収されはしないということ。
そして、鉄には2種類あり、動物性食品に多いヘム鉄は吸収率が30%であるのに対し、植物性食品に含まれる非ヘム鉄は5%以下。つまり、ヘム鉄の食材を優先して食べるのが正解です。ほうれんそうや小松菜に含まれるのは非ヘム鉄であるため、肉や魚、卵などのたんぱく質といっしょにとると効果的です。
さらに、鉄の吸収に欠かせないのが、ビタミンCとの組み合わせ。たとえば、牛赤身肉のソテーにレモン汁をかけたり、パプリカやトマトを添えたり。食後のデザートにかんきつ類を食べるのもいいですね。鉄は意識して毎日コツコツとることが大事です。
鉄分豊富な食材リスト
以下にヘム鉄が多い食材、非ヘム鉄が多い食材をリストアップしました。ヘム鉄も非ヘム鉄も、たんぱく質やビタミンCをあわせてとると吸収がよくなります。
※いずれも100gあたりの含有量
吸収率 30% ヘム鉄が多い食材
● 豚レバー 13.0mg
● 牛ヒレ肉(輸入牛) 2.8mg
● 牛肩ロース赤身肉(輸入牛) 2.4mg
● カキ 1.9mg
● かつお 1.9mg
● めばち 1.4mg
● 豚ヒレ肉 1.2mg
● あさり(水煮缶) 29.7mg
● 牛もも赤身肉(輸入牛) 2.6mg
● いわし 2.1mg
吸収率5% 非ヘム鉄が多い食材
● 納豆(糸引き) 3.3mg
● 菜の花 2.9mg
● 枝豆(さやつき) 2.7mg
● 厚揚げ 2.6mg
● ほうれんそう 2.0mg
● 卵 1.8mg
● 小松菜 2.8mg
● 焼きのり 11.4mg
ビタミンCが多い食材
● 菜の花
● ブロッコリー
● パプリカ
● ゴーヤー
● 甘柿
● キウイ
● いちご
● オレンジ