全身を覆う“ファシア”が柔軟性を左右する
長時間のデスクワークや立ち仕事の後、カラダがこり固まったように感じたことがあるのでは? 同じ姿勢を取り続けたり、筋肉を使わなくなったりすると、カラダは退化し、柔軟性を失っていくと話すのは、柔軟専門トレーナーの村山巧さん。硬くなった筋肉は、血管やリンパ管を圧迫。血流が悪くなると、痩せにくくなったり、肩こりや腰痛を引き起こしたりすることもある。そこで最近注目されているのが「ファシア」だ。
「臓器や骨、血管、筋肉、脂肪まで、全身を覆うボディスーツのようなものです。硬くなったファシアはいわば鎧。カラダが鎧で包まれていたら動きが鈍くなるのは当然ですよね。逆にファシアが柔らかくなれば、歩幅が大きくなったり、スポーツのパフォーマンスが上がったり、カラダを動かすのがラクに、スムーズになります」
全身のファシアはつながっているため、一部が硬くなるとほかの部分にも影響していく。硬い部分に引っ張られ、姿勢やカラダのバランスが悪くなることもあるという。
「例えば、前屈は腰の柔軟性が関係すると思われていますが、背中やふくらはぎなど、背面全体の硬さも大きく影響します。カラダを反ることができない人は腹部やももの前面、腰痛はカラダ前面にある大腰筋や大腿直筋、肩こりや腕が上がらないという人は脇の下の筋肉が硬くなっていることも多いです」
伸ばすより、ほぐすことが柔軟性を取り戻す近道
カラダを柔らかくするために有効なのがストレッチだ。
「ただ、一般的なストレッチは効果が出るまでにとても時間がかかる。また、ファシアが硬い状態でストレッチをしても、ターゲットの部分が伸びていない可能性があります。例えば、本来は脇腹を伸ばすべきなのに、背中を使うことで、なんとなく同じようなポーズをとっている場合があるのです。無理に伸ばそうとすると、余計硬くなる危険もあります」
マッサージのようなイタ気持ち良さがクセになる
そこで村山さんが提唱するのが、ほぐすことに重点を置いたストレッチ法。ファシアに圧をかけながら、カラダを動かすのがポイントとなる。
「ファシアをほぐすと、通常のストレッチよりもカラダが伸びやすくなるので、すぐに効果を実感できます」
硬くなったファシアに圧をかけるため、柔軟性が損なわれている部分ほど、強くマッサージされたような痛さと気持ち良さを感じるはず。
「痛い部分は念入りにほぐしてほしいのですが、痛ければいいというものでもありません。無理のない範囲で続けてください。このストレッチをすると血流が良くなるため、カラダの内側から温まる感覚も感じてもらえると思います」
また、ファシア・ストレッチは柔軟性を取り戻すためのテクニックであり、すぐに痩せたり、肩こりが治ったりするというものではないそう。
「ファシアが柔らかくなって、代謝が良くなったり、むくみにくくなるなど、痩せグセがつくことは期待できます。腰痛や肩こりの予防にもつながりますし、汗をかきやすくなった、冷えにくくなった、足がつりにくくなったという声も多いですね」
カラダが硬いとあきらめていた人こそ取り入れて、かつてないほどの柔軟性とバランスのいいカラダを手に入れて。
▼肩
▼腰
▼脚まわり
柔軟美トレーナーとして、都内のスタジオを中心に全国で柔軟クラスを開催。即効性のあるメソッドが話題となる。著書に『自分史上最高の柔軟性が手に入るストレッチ』(かんき出版)。