「いえいえ、私なんて」「どうしてああなれないんだろう」、こんな口癖がある人は、もしかしたら自己肯定感が下がっているのかもしれません。自己肯定感とは自分に苦手なことやマイナスな部分があっても、自分は自分のままでいいと思える感覚。自己肯定感が下がると、他人よりも自分の価値が劣っていると感じ、ネガティブな感情がどんどん積み重なっていきます。そんな悪い考え方の癖を改善し、自己肯定感を上げるにはどうしたらよいのでしょうか。
ノートパソコンの前で仕事に疲れている女性
※写真はイメージです(写真=iStock.com/Poike)

幼少期からすりこまれた悪習慣を手放そう

われわれ日本人は、子どもの頃から「周りに迷惑をかけてはいけない」「相手の気持ちを考えて行動しなさい」と教わって育っています。また、周りの大人が指示した方向に進むことがよしとされている感覚は、みなさんも経験されたことがあるのではないでしょうか。

そういった謙遜や協調性は日本人の美徳となっています。しかしそれがエスカレートすると、集団の和を乱さないようにする、自分の意思を抑えてでも相手を立てるなど、世間体を強く意識し、周りからよく見られようとしてしまいます。そうなると自己肯定感はどんどん下がっていき、自分の言動や行動を自分で評価できず、常に誰かの基準やフィードバックがないと不安でたまらなくなるのです。

今回は、自己肯定感を下げる悪習慣についてお話します。今すぐにでもやめてほしいことは以下の3つです。

自己肯定感を下げる悪習慣1.「ないものねだり」をする

たとえば会社にいたら「もっと理解のある上司に恵まれていたら頑張れるのに」、同僚と比べて「あの人みたいに計画性をもって何か行動できたらいいのに」、友人を見て「私もあの人ぐらいもっとルックスがよかったらいいのに」……。

誰でも自分にないところを欲しがる=ないものねだりをすることはありますが、ないものばかりにフォーカスすると、その時点の自分自身を否定し、より自分を受け入れられなくなっていきます。

上記の例で言うと「上司に恵まれない」「計画性がなくて行動できない」「ルックスがよくない」自分にフォーカスして、それがない自分を責めてしまうということです。

これらは著しく自己肯定感を下げる行動。絶対にやめたほうがよいでしょう。

とくに自己肯定感の低い人が、ないものねだりをし始めると、無意識に自分の足りないところを探し、余計に自信をなくす、自信がないからまた探す、と負のループに陥ります。ですから、ないものねだりはやめて、今あるものに感謝することをこころがけましょう。自分はこのままでいいんだと思えば、自己肯定感も必ず上がっていきます。

自己肯定感を下げる悪習慣2.謙遜しすぎる

先ほどもお伝えしましたが、謙遜は日本人の美徳、あるいはマナーのようなところがあります。ただし、あまりに謙遜しすぎると、自己肯定感を下げる行為になります。

僕は産業医として、いろいろな企業の会議に参加しますが、そうすると前もって資料を印刷してくれたり、お茶の用意をしてくれたり、すごく気の利く人がいるんですね。そういう人に向かって、上司が「ありがとう」「気が利くね」と声をかけると、「いえいえ、それぐらいは」「そんなの誰でもできますから」と、わざわざへりくだって言う人がいます。そうやって謙遜しすぎるのは、自分の存在自体を卑下する行為になるので、おすすめできません。

上司にしてみれば、せっかくあたたかい言葉をかけても、「いえいえ……」と謙遜されると否定された気持ちになり、次から褒めにくくなります。そうすると、その人は誰からも褒められなくなり、周りからポジティブな評価を聞く機会が減ってしまう。それが進むと「誰からも評価されない」「自分は必要ない人間なんだ」という考えにまで陥ってしまう。

そういったネガティブな環境を自分が作ってしまうことを考えると、謙遜しすぎるのは本当によくないことです。

大事なのは「いえいえ」の代わりに、「ありがとうございます」と素直に感謝すること。「ありがとうございます。うれしいです」とポジティブな気持ちをあらわせると、なおいいですね。

自己肯定感を下げる悪習慣3.姿勢が悪い

一般的に感情と行動が生じる順番について、まず何かしらの出来事やイベントがあって、例えば楽しい気持ちになると、笑顔が出てくると思われがちですが、実は逆であるとする説があります。

「ジェームズランゲ説」という有名な説で言うと、出来事があって、笑うから楽しくなるというもの。まず身体の変化があって、それから感情の変化が出てくるということです。

そう考えると、猫背で暗く元気がないようにしていると、本当に元気がなくなってしまう。また猫背は胸郭が狭くなるので、肺の動きが制限されて、呼吸は浅く速くなります。そうすると交感神経が刺激されて、緊張感が高まりリラックスできない。ピリピリとした状態が続きます。そんな余裕のない自分をいいとは思えないですよね。

自己肯定感を上げるには、できるだけ胸を張って深く呼吸をし、笑顔で過ごしましょう。

悪習慣を根元から断ち切る「自分年表」のススメ

以上は今すぐにでも解消に向けて取り組める「3つの悪習慣」でしたが、もっと根本的に解決していきたいという方には「自分年表」をつくることをお奨めしています。

子ども時代に育った環境が、大人になってからの自己肯定感に関係するのは冒頭でもお伝えしたとおり。親や先生の言ったとおりに歩んできた人は、会社に入れば上司の意見を採用するので、ずっと違和感やモヤモヤを抱え続けることになります。それが「ないものねだり」といった悪習慣につながっていくのです。

この問題を根本的に解決するために、過去を振り返って「自分年表」をつくるといいでしょう。年表といっても履歴書のようなもので、何歳で小学校に入って、何歳でピアノを始めて、と時系列で書き出していきます。

ポイントは、なるべくこまかく書くこと。ピアノを始めたなら、なぜこれを始めたのか、自分がやりたいと思ったのか、親からやれと言われたのか、友だちがやっていたからか、それを少しずつ分解していくと、自分がやりたいのではなく、親に言われてやったとか、友だちがやっていたからとか、そういった自分の考え方の癖が見えます。そうすれば、どこを修正していけばよいかがわかってきます。

生きづらさを感じている人は、ぜひ自分年表を書いてみましょう。きっと過去は過去、今を自分らしく生きようと思えるはずです。