※本稿は、武田友紀『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる「繊細さん」の本』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
お悩み①職場に不機嫌な人がいると疲れます
「職場に不機嫌な人がいて、同じ空間にいるだけでぐったりしてしまう」
「小さなことで文句を言われたりキツイ言い方をされたり、八つ当たりされやすい」
そんなとき、どうしたらいいのでしょう? 対策は次の3つです。
解決策:明るく声をかけるなどの気遣いは不要。自分をケアして
・できるだけ物理的な距離をとる
・相手ではなく自分をケアする
繊細さんは、まわりの人の感情に気づくからこそ、なんとかしなければと「明るく声をかける」「不機嫌な相手ほど手厚く対応する」といった行動をしがち。
でも実は、そうやって対応すればするほど、相手は繊細さんに寄りかかります。
「オレの機嫌をあんたがなんとかしてくれよ!」とばかりに、ささいなことに文句を言ったり、八つ当たりしたりします。相手に配慮するという繊細さんの長所が、不機嫌な相手に対しては裏目に出てしまうのです。
その人の機嫌は、その人のもの。誰かが立て直し続けることはできません。
不機嫌な人や八つ当たりをする人に対しては、物理的にも心理的にも距離をとり、寄りかからせずに放っておく必要があるのです。誰かの機嫌が悪いと気づいたら、「機嫌悪いんだなー」と思うにとどめ、あとは放っておいてください。
とはいえ、不機嫌な人のそばにいると落ち着かないもの。お手洗いに立つ、他の場所で作業するなど、できるだけ相手から離れましょう。家族の機嫌が悪いときは、お散歩や買い物に出かけるなど、思い切って外出してしまうのもひとつの手です。
不機嫌な人のそばで動揺したら、不機嫌な相手をケアするのではなく、穏やかな人と話す、女性ならハンドクリームを塗るなど、自分をケアする行動をとってみてくださいね。
お悩み②なぜか、いつも私だけ忙しいんです…
「同僚のフォローをしているうちに、大変な仕事が自分に集まるようになった」
「やらなきゃいけない仕事があるのに、みんな忙しくて手が回らないから、私が引き受けて夜遅くまでやっている」
こんなふうに、職場における繊細さんたちは、とにかく忙しくなりがち。なかには「もう少し時間に余裕がほしいと思って転職するけれど、どの仕事でもいつの間にか忙しくなる」と話す人もいます。
なぜ、繊細さんは忙しいのでしょうか?
繊細さんは非・繊細さんより多くの物事に気づくため、気づいたことに片端から対応していると、処理する量が単純に多くなり疲れ果ててしまうのです。
そのため、気づいたことに半自動的に対応するのではなく、対応すべきものと放っておくものを自分で選ぶ必要があります。
解決策I「気づく」と「対応する」を分け、気づいても対応しない人を観察
具体的には、自分の行動を「気づく」と「対応する」に分けて考えます。
・気づくのはOK!
繊細さんは、作業する、メールを見る、といったごく普通の行動をしているだけで、「この部分に無駄がある。こうすればもっと効率化できるんじゃないか」「この問い合わせには、こちらの状況も伝えておいたほうがいいだろう」などと、次々と改善すべき点に気づきます。これはOK。繊細さんにとって「気づく・気づかない」は、自分の意志でコントロールできるものではないのです。
・対応するかどうかは、自分で選ぶ
さて、ここからが肝心。気づいたことに対応するかどうかは、自分に余裕があるか見ながら判断します。
たとえば、メールの返信で、「聞かれたことに答えるだけではなく、こちらの状況も伝えたほうがいい」と気づいたとき。
サクッと状況を伝えられるなら対応してもOK。もし、状況を同僚に確認し、言い回しや伝える順番を考えて、資料も添付して……と、芋づる式にやったほうがいいことが出てきたら、いったん手を止める。時間をかけてでもやるべきことなのか、考えてみてください。ときには「気づいても対応しない」という選択も必要です。
なぜかいつも忙しくなる、仕事が溜まっていく。そんなときは「気づいたこと全てに対応しようとしていないか?」を振り返ってみてください。
心身ともに健康に働くためには「対応すべきことを自分で選ぶ」「致命傷でなければ、対応せずに放っておく」ことがとても大切なのです。
生命に関わる場合を除き、「気づいても対応しない」という選択肢は存在します。
実際、職場を見渡すと「自分より気づかない人」あるいは「気づいても対応しない人」がいるのではないでしょうか。気づかない同僚をモデルに、少しずつ自分の「やらなきゃ」の縛りをゆるめてみましょう。
解決策II「ちょっとお願い」と、まわりに頼る
・まずは、「頼る」という発想を持とう
これまで自力でがんばってきた繊細さんの中には、ひとりでなんとかすることが当たり前になっていて、「頼る」「誰かに相談する」という選択肢がそもそも頭に浮かばなかった、という人も。
まずは「人に頼る」という発想を持ってほしいのです。
それは、いわば洗濯機を使うイメージです。自分で手洗いできるからって洋服を全部、手で洗う人は今どきいませんよね。それと同じです。自分でできるからって全部自分でやろうとせず、人に頼る。大変なときだけでなく、日常的に頼る。
棚からファイルをとる、話を聞いてもらう、といった軽めのことから、仕事のお願いまで、「これ、誰かにお願いできないかな?」と考えてみてください。
・相手の状況を推測せず、言葉で確かめる
あれこれ想像するより「◯◯してほしいけど、どうかな?」と聞いてみるほうが断然確実で早いです。自分には大変なことでも相手にはなんてことなかったり、忙しそうでも意外とできることだったりします。
そして、聞くときの最大のポイントは「無理そうだったら言ってね」と一言つけくわえること。頼みごとを引き受けるかどうか、決定権は相手にわたします。
・相手が引き受けてくれたら、信じて任せる
頼んだら「いいよ」って引き受けてくれた。でも、やっぱり悪かったかな。本当は嫌だったんじゃないかな……などと振り返っていませんか。相手を心配しすぎるのは、実は相手の力や判断を疑う行為です。
「いいよ」と言ってくれた相手の判断を尊重して任せましょう。「無理だったら言ってね」と伝えている以上、「いいよ」と言ってくれたなら、それは相手の選択なのです。
「ちょっとお願い☆」は、繊細さんの人生を支える言葉。小さなことから頼る練習をしていくうちに、大きな相談事もできるようになっていきますよ。
お悩み③大人数の飲み会などの集まりが苦痛です…
メーカーで事務の仕事をしている会社員のNさん(20代・女性)。人とじっくり1対1で話すのは好きな一方、職場の飲み会など大勢で盛り上がる場は苦手です。
前の人のお皿が空いたら料理を勧め、会話に入れなくてぽつんとしている人には話をふり、興味がない話題でも大きめにリアクションをする。みんなが楽しめるように気を配り、飲み会のあいだじゅう気を張りっぱなし……。
楽しむフリをしているものの、「早く終わらないかな」と思い、お手洗いでひとりになるとほっとするそうです。
解決策:最適な刺激レベルを理解して、たっぷり休息の時間を持って
「人といると、疲れてしまう」――多くの繊細さんが抱えるこの悩み。これには実は繊細さんの神経システムが関係しています。それも、飲み会のように大勢がいる場のコミュニケーションで、繊細さんの心は次のようにフル回転します。
・話し声が部屋の中で反響しているか、通り抜けていくか
・誰が楽しんでいて、誰が無理をして笑っているか
・全員のお皿に料理が取り分けられているか?
・空調のかすかな音
表情、仕草、声のトーン、話の内容……人は情報の塊。誰にでも最適な刺激レベルがあり、他の人にとって何でもない刺激が、繊細さんにとっては強すぎるのです。
繊細さんには、ひとりでゆっくりと心を休める時間が必要です。
心ゆくまでひとりの時間をとり、感じすぎた刺激を流すことで、自分らしい穏やかさや明るさを取り戻すことができます。
充分にひとりの時間をとり、新たな刺激を楽しむ余裕があって初めて、また人と一緒に過ごしたい、誰かとワイワイ話したいという気持ちが起きるのです。