コロナ禍における、富裕層の人々の動きや変化を見てきた午堂登紀雄さんは、今後、あらゆる分野で格差が広がっていくのではないかと見ている。午堂さんが指摘する4つの格差とは――。
競争のはしご
※写真はイメージです(写真=iStock.com/Nazan Akpolat)

【お金の格差】重要になる投資マインド2つ

新型コロナウイルスの影響で、様々な格差が広がっています(あるいは今後広がる可能性が想定できます)。

たとえばお金。

10万円の定額給付金はいつ振り込まれるのかと一般庶民が待ちわびている間に、富裕層の資産は大きく増えました。むろん富裕層に限らずですが、今年3月の大暴落で株を買いまくった人たちが株式市場の急回復によって儲かったのです。

私自身、このタイミングで下がったら少し買い、また下がったら再び少しずつ買い増すというナンピン戦略で、大型優良銘柄、高配当銘柄を仕込みました。なぜ大型優良銘柄かというと、コロナの影響を直接受けず業績がしっかりした企業、あるいはコロナが明ければ業績回復が見込める企業であれば、下落は一時的なものだろうと予測したからです。

次に、なぜ高配当銘柄かというと、仮に予測が外れて含み損になったとしても、塩漬けにして配当だけを得続けることも可能であり、それならそれで割り切れると考えたからです。業績が悪化すれば配当も減りますが、もともと高い配当性向なら下がってもなお配当はそれなりに出る可能性が高い。

相場が戻るのは半年以上かかると見込んでいましたが、結果的には予想以上のスピードで回復し、定額給付金の10万円をはるかに超える利益をもたらしてくれました。

この教訓は、「そもそも暴落は市場のパニックであり、本来の価値よりも下がることが多い」ということです。

これはリーマンショックやチャイナショック、あるいは仮想通貨でも経験したことです。売りが投資家の不安心理をあおり、さらに売りを呼ぶ。下落を狙う投機筋がさらに売りをかける。信用買い(いわゆるレバレッジ取引)をしている人が強制ロスカットに遭い、さらに下落を加速させる。とにかく市場から逃げようとする人が殺到する。

だからその波に、少しずつ乗る。ただしこのタイミングでは、レバレッジはかけないのが基本です。

【仕事の格差】ダメな人のダメさがあぶり出されてしまう

次に仕事。

リモートワークが主流になると、働いている姿を見ることができません。つまり、努力しているかどうかはわからないため、成果での評価が重視されるということになります。

そして、労働時間という意識も薄くなります。タイムカードもなく、何時間働いていても成果が出なければ評価はゼロ。逆に、1日1時間の労働でも、成果さえ出せれば高い評価を得ることができる社会へと変わっていくでしょう。

これは、優秀な人にとっては就業時間に縛られない自由な環境が得られるメリットがある一方、そうでない人にとっては、ダメさがあぶり出されてしまうという恐怖の環境です。

さらに、モチベーション維持や時間管理、オンオフのメリハリをつけるなどといった「セルフマネジメント」ができる人と苦手な人も、生産性で差がつきます。

たとえば帰宅してから書斎で読書や勉強をするといった自己研鑚の習慣がなければ、書斎がなくリビングで仕事をしようとしても、どうしてもテレビや動画をダラダラと観るなど、生産性が下がります。

さらに前回の記事(「1億稼ぐ人に学ぶ、コロナ禍をチャンスに転換する新たなビジネスとは」)で述べたとおり、副業に取り組む人とそうでない人との間にも、情報発信力、ネット上でのブランディング力、そして結果的には経済力の差ができていくことが予想されます。

ではどうすればいいか?

本業での成果を追求するのは当然のことながら、たとえばオンライン会議などのように、物理空間でやっていた自分の仕事を仮想空間に持ち込めないか、発想の転換が必要です。

電子押印や電子契約に切り替えた企業もあるように、物理的に現場に行かなければできないことを減らす工夫をしていくのです。

また、家にいてダラダラするという人は、カフェやコワーキングスペースなどを利用するのも一つの方法です。

私も家にいるとダラダラとネットサーフィンをしてしまうので、なるべくカフェに行くようにしています。今もこの原稿をカフェで書いていますが、人がいるので適度な緊張感があり、エアコンも効いているなど慣れると快適です。

【教育の格差】休校中に“何か”をした子としなかった子の差

これも以前の記事(「学校のオンライン化を待てない富裕層が、いま自宅で実践している教育法5つ」)でも紹介しましたが、富裕層(だけではなく教育に関心の高い層)は、無策の学校をいちはやく見切り、民間企業が提供するオンライン学習の導入に舵を切りました。

6月から順次登校が始まっていますが、この3カ月間、何かをしてきた児童生徒と、何もしてこなかった児童生徒の間にどれほどの差ができているのか。そしてその差は縮小・挽回できるのか。

現時点ではまだわかりませんが、今後その影響が出てくる可能性は否定できません。

ただ、その「何か」は別に学業に限ったことではありません。私の知人で高校生の息子さんを持つ人がいるのですが、この休校中に起業したそうです(中高生向けの学習管理サービスで、いわゆるライザップの学習版といったイメージ)。

休校で自分が不満に感じていたこと、「あったらいいな」を試験的にやったてみたら好評だったため、高校に通いながらでも続けていけると起業に踏み切ったそうです。

むろんそのビジネスが軌道に乗るかどうかはわかりませんが、彼にとって非常に貴重な経験、そして貴重な財産になることは間違いないと思います。

【QOLの格差】住む場所の選択肢が広がる

テレワークをやってみたら、案外問題なくできたし、これからもやれそう。あるいは勤務先がテレワークの本格普及に踏み切った。という状況の人もいると思います。

そうなると、通勤の必要がなく、満員電車に揺られる必要がなくなります。顧客と会わない日はスーツを着なくてもいい。これはストレスの一つから解放されることを意味します。

性格的な違いもあるかもしれませんが、通勤がなく服装も自由というのは本当にラクです。

次に、通勤がなければ住む場所の選択肢が広がり、たとえば故郷へのUターンや地方への移住も可能です。

都市部や駅近に縛られなければ、家賃や住宅ローンの負担が減るといったメリットもあります。

山が好きなら山に、釣りが好きなら川や海沿いに、サーフィンが好きなら波のある浜辺近くに住んでもいい。畑を借りて家庭菜園に挑戦し、半自給自足といった生活も可能です。

これは好きな人にはたまらないと思います。もしかしたら、「庭付き一戸建て」から「畑付き一戸建て」が価値を持つようになるかもしれません。

新しい出会いの機会は減ると思いますが、ある程度の年齢になれば人付き合いは少ないほうがラクですし、いまはSNSでもつながれますから、さほど不便はないでしょう。

そう考えると、自分の理想的な生活を手に入れられる人とそうでない人との間に、QOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)、つまり人生の満足度にも格差が生まれる可能性があります。

ワクチンが普及しても元には戻らない

ワクチンが開発・普及し、仮にコロナの問題が過ぎ去ったとしても、ニュー・ノーマルと呼ばれる新しい生活様式が定着すれば、その影響は長引きます。

また、感染症だけではなく、首都直下型地震や南海トラフ地震、台風やゲリラ豪雨による浸水・河川の氾濫など、危機的状況は再びやってくるでしょう。

資本主義社会では、そうした事象によって格差は拡大します。もちろん他人と比べることに意味はありませんが、不利な状況に陥るのを避けるために、自分はいま何をすべきか、そしてどのような人生にすればもっと楽しくなるか、考え直すよい機会かもしれません。