人に合わせる、というのはある面ではいいことですが、そのやり方をどんな時も使っていると、自己喪失に向かってしまうそうです。自分で感じたこと、大切なことまで抑えてしまい、NOと言えないうちに、どんどん苦しくなっていきますよね。統合失調症、適応障害を経験しながらも、自ら心理学を学び抑うつ状態を改善したきいさんが、自分自身を大切にするための心の整え方を教えてくれます。

※本稿はきい『しんどい心にさようなら 生きやすくなる55の考え方』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

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※写真はイメージです(写真=iStock.com/pepifoto)

尽くしたい人が陥りがちな心理状態

尽くすということは、相手のことを思って行動するという素敵なことです。そう、尽くすことは悪いことではありませんが、その動機には注目してほしいと思います。

尽くしている動機が、「心のこもった愛情」からなのか「自信がない」「相手の特別な存在になって離したくない(=支配欲・依存欲)」からなのか。

関係を継続する目的で相手を自分より「上」に見て、悪く思われたくない、叱られたくない、機嫌を取ろうと媚びたり服従したりする人はやりすぎ注意。自分の意思や思いに気づかず我慢している状態です。続けていくと、欲求不満で突如キレてしまいます。あるいは、自分よりも「下」「弱い」と思っている人へ怒りが向かうことや、自分自身に怒りが向いて、自己批判や過食などにのめり込むことも。

本当は、あなたが大切にされたい、わかってもらいたいんです。尽くす心は報われていますか?

自分を満たすことを優先して、自分にやさしく大切にできますように。

なぜ我慢を続けてしまうのか

自分自身の自然な欲求や要求を「ワガママ」や「迷惑」と捉える人がいます。

自分の意見は言うべきじゃない、こんなことで怒る私はおかしい、言い方がわからないから黙っていよう…。そんな風に意識が働いて、湧き上がっている気持ちを抑圧することに慣れてしまったんですね。

「口答えするな」「言うことを聞いていればいい」「お前の言うことは伝わらない、おかしい」など、かつての環境で尊重されないメッセージを受け取った。あるいは、個人的な要求を拒絶されることが多く、はみ出すと注意を受けたりして、言わない方がいいんだと学習したのかもしれません。

黙って、合わせて、自分を犠牲に頑張ってきましたね。

「私が我慢してすむならいい」を続ける。これは苦しいです。

反対に本音を言えないから「察してくれ」と雰囲気で伝えるのもよろしくありません。言わないと伝わらないし、相手任せのコミュニケーションになってしまいます。

自分が断ることをしないから、人に断られると傷つく。もし断られたらと思って頼むことや頼ることができない。自分をはっきり表現しないから、はっきり言われると怖かったり腹が立ったり…。そうした経験から、人と関わること自体を避ける人も多いです。

“勝手”は悪いこととは限らない

言おう。行動しよう。

自分の自由や勝手を、相手の自由や勝手を、もう一歩尊重してほしいです。あれはイヤ・やめてほしい・困ってるから助けて・行かない・やらない・やめたい…、悪いことじゃありませんのでコツコツ慣れていってください。相手に日頃から感謝や承認を伝えておくと「断り言葉」の厳しさも多少和らぎます。

自分の望むかたちで相手の反応が返ってくるのを期待せず、まずはあくまでも自分のためだと考えることが大切です。

「相手に見返りを求めること」と「自分を表現すること」は分けてください。

自分の本心を認め、怖くても言ってみること

相手の反応は怖いですよね。関係を壊すかもしれないと、不安でたまらなくなるのもわかります。

きい『しんどい心にさようなら 生きやすくなる55の考え方』(KADOKAWA)
きい『しんどい心にさようなら 生きやすくなる55の考え方』(KADOKAWA)

それでも言わないと、相手も悪気なく繰り返す場合があります。そして勝手に傷ついて、相手が悪い人に思えて、どんどんイヤになって、関係が続かないことも。

コミュニケーションを取らないで、察し合いをするのは限界があります。空気も気持ちも目に見えないもの。正確に読めるわけがありません。「私は人の気持ちが読める人だ」と思っていたら、その自信は傲慢です。

なんでもかんでも言いたい放題になろうというわけではありません。少しずつ断ることや、意思表示をすることで人間関係と世界を広げていけるはずです。

我慢ばかりになる性質を理解して、怖くても言おう行動しよう。