企業が抱える経営課題と、プロ人材の経験や強みをマッチングさせる「プロシェアリングサービス」を展開するサーキュレーション。エンジニアなどの技術職をはじめ、マネジメントに手腕を発揮する「プロ部長」も多く活躍しているといいます。複数社で活躍できるプロ部長と、従来型の部長、その違いはどこにあるのでしょう? サーキュレーション代表取締役の久保田雅俊さんが解説します。
ビジネスの女性の同僚と話しています。
※写真はイメージです(写真=iStock.com/JGalione)

プロ部長の第一条件は、課題解決の経験があること

プロ部長として活躍している人に共通するのは、課題解決をしてきた人である、ということ。問題を解決するためフレームワークや方法が確立されていて、なおかつ、その持論が自身の経験や知識に裏付けられている、ということが大きなポイントだと思います。

「社内政治に強い」「社内人脈が広い」など、いわゆる昭和的出世ポイントを重視してきた人は、他社で活躍するのは難しいでしょう。月次、週次の報告をポチポチ承認するのが仕事になっている部長も、厳しい。外にむけての視野を持ち、人脈を広げていることは「プロ」として活躍する大きな条件です。

管理職に求められるのは、まずプロジェクトを管理できること。緊急度が高い足元の課題に対し、決裁者として解決していく。そしてもうひとつは、重要度が高いものの、長期的な戦略が必要とされる課題に対しても対応ができること。最近では、長期的課題に関しては、オープンイノベーションの有効性が認知されはじめています。外部人材といっしょに課題を解決する、あるいは自身が他社に入って知見を提供する。こうしたスキルシェアはますます進んでいくでしょう。

力量をはかる目安は、組織の純増数

マネジメント力を端的に表すのは、担当部署やチームの人数、それも「純増数」です。「1万人の組織を引き継いだ」という人よりも、「50人の組織を200人に伸長させた」という人のほうが、課題解決のプロセスを持っている可能性が高いでしょう。

プロ部長には、どこかで自分の組織をスケールアップさせた経験を持つ人が非常に多いです。単純に大人数を見ていたというだけでは、その人の実力ははかれません。課題を見つけ、改善の機会を作り、組織を大きくした人。メンバーを純増させている、伸ばしている、というのは分かりやすい指標のひとつです。

また、プロ部長として活躍するには、自分の専門性やテーマを最低限1つは持っていることも必要です。「人事部長をやり、広報部長をやり、その後、営業部長もやりました」。これだけでは、果たして他社でも通用するかどうかはわかりませんね。

一方で、「人事においては自分で制度設計を組み、50人から500人まで組織を成長させた」という経験が語られたらどうでしょう。そこには自分の専門性、テーマがきちんと盛り込まれています。自分がどういう問題解決ができるのか、それをきちんと言語化できる力はプロ部長に必須の能力です。

プロ化は、女性のキャリアを飛躍させる

現在、マネジメントのキャリアに乗っている女性にとっては、今後、プロ部長のような働き方も身近になってくると思います。

なにしろ日本の企業では、経営陣に入る女性が圧倒的に足りていません。社内で上がっていく以外にも、自分の特技を活かして、プロフェッショナルとして外部から参画する道が広がってきます。

そのためには、自分の武器となるテーマを深掘りしていくことが重要です。たとえば「人事×新しい働き方」「広報×新しい働き方」といったテーマは、今、非常に求められているところでしょう。

部長職までいかなくても、何か1つのプロジェクトを立ち上げ、リーダーとして運営していく経験を積むことは、大きな一歩となるはずです。このとき大切なのは、プロジェクトの全体像を1から10まできちんと把握していること。何か聞かれたときに、答えられない穴があるという場合は、まだまだ上司の助けを借りている状態、と考えましょう。

自分で場所を変え、チャンスをつかもう

30~40代でプロ人材を目指す方には、まず自分から“場所の変化”を生み出していくことをおすすめします。場所を変えることで、当然インプット、アウトプットも変わってきます。新しい働き方をしている人たちに接することは、とても重要だと思います。また、足を使わなくでも一歩を踏み出すことができる、ナレッジへのダイブも有効です。本を読んだり、オンライン講座を受講したりして知の探求をすることも、自分が立つ場所を変えてくれる方法です。

「プロ人材としてやっていきたい、でも自分が外部で通用するか不安」。こんな声も耳にします。

この不安を解消するには、やってみることが何より手っ取り早いでしょう。ただ、いきなりプロ人材として参画するのでは、プレッシャーも大きい。そこでおすすめなのが、プロボノのステップを踏むことです。

たとえば起業している友人を手伝ったり、社内外の仲間と業務とは別のプロジェクトを立ち上げて試してみる、といったこともいいでしょう。主体的に自分の力を活かすチャンスをつくる。このスタンスも、プロ人材として立っていくときの支えになるはずです。