※本稿は堀田秀吾『科学的に自分を変える39の方法』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
気づけば締切が近づいている
納期とされている締切まであと20時間。「まだまだ間に合う!」って大きく構えていた3日前の自分に「あとでやろうはバカヤロウ! 今すぐ取り掛かれ!」と言ってやりたい。そしてちょっと焦り出しつつも、まだ仕事に向かう気ゼロだった2日前の自分に「それ結構大変だよ! 時間かかるよ」と言ってやりたい。いつもギリギリにならないとやらない自分に腹が立つ&自分を待ってる担当者が怒ってる顔が浮かぶ。はあ、なんでもっと早くやり始めなかったんだろう……。
締切が迫っているのはわかっているのに、なかなか取り掛かる気になれない、人に迷惑をかけているのは察しているのにやる気にならない。その状況、すごくわかります。実際、締切に合わせて、いわゆる“ケツ合わせ”で仕事をする人は多いのではないでしょうか。
結果的に間に合えばいいのですが、仕事をやり終えてから「早く取り掛かって、さっさと仕事が終わっていれば、有意義な時間が過ごせたのに」という後悔も毎度のことなのでは。だって、やらずにモヤモヤ過ごしていた時間を経ずに、さっさと仕事に取り掛かって終えていたら、スッキリした気持ちで飲みにも行けてたし、ゲームだってできてたし、です。
先延ばし癖に有効な2つの方法
ストックホルム大学のローゼンタールらが、先延ばしグセがあると自覚している、インターネットや新聞広告などを通して募った150人の参加者を、①セラピストと共に改善プログラムを実施するグループ、②セラピストなしでプログラムを実施するグループ、③ウェイティング・リストに名前が載るだけのグループの3つに分けて実験を行いました。改善プログラムの内容は、長期的な目標設定をより具体的で実現可能な目的として設定。たとえば、「原稿を水曜日に書く」ではなく、「水曜日の朝9時から1時間原稿を書く」のように設定。そして、小さな目標を達成するごとに、コーヒーや休憩などの報酬が与えられるというものです。
これに対し、③ウェイティング・リストのグループは、先延ばし行動に対して感情的なストレスをかけるようにして、時間を追うごとにストレスをかける時間を増やしました。
この実験では、すべてのグループにおいて先延ばしグセが改善されるという結果が見られました。特にセラピストと共にプログラムを実施したグループは、ある意味「監督」がついているので、強制力が働き、より目標を達成しやすかったと考えられます。一方でセラピストがおらず、インターネット経由でプログラムを実施した人も効果があったということも特筆すべき点です。
目標もご褒美もとにかく細かく設定
目標や締切を細かく設定し、ご褒美を用意するだけで、締切を守ろうという気持ちと行動が伴うようになっていったのです。
「今月中に原稿を書いたら、年末は旅行に行く!」といった、目標もご褒美もざっくりした設定ではまだまだ弱い! 「火曜の朝11時から1時間」と決め打ちして、「5分毎に席を立って軽くストレッチ」「30分毎にチョコ1カケ」ぐらい細かく細かくご褒美を入れましょう。
ただし、時間を忘れて熱中しそうなスマホやらをご褒美にはしないように!
“運動”の驚くべき効果
ほかにも、マッコーリー大学のオートンとチェンの研究では、「運動も先延ばしに効果がある」ことがわかっています。運動不足の男女24人にまず2カ月間「特になにもせずに」いてもらい、その後2カ月間ジムに通ってもらい、その間のストレスレベル、精神的苦痛、自己効力感、およびその他の習慣に関する変化について調べました。
すると運動後は、ストレスが減少し、タバコやアルコールやカフェインの摂取量が減り、感情のコントロールができるようになり、家事に従事することも増え、約束も守るようになり、健康的な食生活になり、無駄使いも減り、学習習慣にも改善が見られました。アメイジング!
名だたる文豪たちには“締切前後の修羅場エピソード”が山ほどありますが、それは文豪ならでは。一般社会で生きるうえで、文豪的な振る舞いは通用しませんし、締切を余裕で守って、有意義な時間を過ごしたいものです。
ひとまず、締切のある仕事をいつも抱えているなら、毎日の目標を細かく設定し、ひとつクリアするごとに何かご褒美を用意する方法を取り入れてみてください。さらに長期的スパンでケツ合わせな自分を変えるなら、運動するのがおすすめです。進行通りに仕事を進め、ジムで気持ちのいい汗を流す……ステキなライフスタイルが見えますよ。