管理職のみなさんは、自身が「どんな上司か」客観的に考えてみたことはありますか? もちろん仕事は仲良しごっこではありませんから、好かれているか否かの問題ではありません。けれど、成果や結果にとらわれすぎて、部下といういちばん身近な存在に対し、気づかぬうちに無遠慮な態度をとってしまってはいないでしょうか。もう誰も叱ってくれない大人の隠れマナー連載。今月のテーマは管理職の立場において、より気をつけたい言動についてです。
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部下のやる気を奪う「上司としてのマナー違反」

部下が上司に対して気遣うべきマナーというのは事細かに学ぶ機会がありますが、一方で上司が部下に対し心がけるべきマナーがあるのはご存じでしょうか。

自分のもとでともに働く部下は、言い換えれば仕事の同志でもあります。いくらキャリアに差があるとはいえ、その間柄にもマナー=尊重や思いやりが欠ければ、チームワークはおろか、コミュニケーションにも支障が出ます。意思疎通ができないということは当然、仕事で結果を出し続けるのは難しいものです。

けれど、忙しい毎日において気心の知れた部下のことはつい後回しになりがち。対クライアントや他社への気配りは完璧でも、いつも一緒のチームに対しては言葉も態度も簡略化されることが多々あるでしょう。もしかして心のどこかに「部下ならきっと言わなくても感じ取ってくれる」というある種の信頼があるのかもしれません。

しかしながらそんな信頼がいつしか甘えになってしまったら……。ちょっとした日々のマナー違反がズレとなり、仕事の成果を左右してしまうことだってあるのです。

部下は手下でも家来でもない

よく聞くのが、まるで部下を自分の小間使いのように扱っているパターン。思いついたことを都度ごとに電話したり、自分が忘れたときのために取りあえず言っておくなど、これではまるでメモ代わりに部下を使うことになります。これでは身の回りのお世話をしてくれる操り人形は育つかもしれませんが、今後会社を成長に導く人材をとなるには程遠いですよね。それどころか、今現在進行中の仕事もチームでやっている意味がありません。

そもそも会社という組織は、一人ひとりがやるべきことに邁進まいしんすることで、いいパフォーマンスが生まれる個の集合体。チームでともに企画を運営する部下ならなおさら、アシスタントとは違いますから、本来の仕事の意義のほかに気をとられるべきではないし、ましてや上司が自分でできることまで任せてしまっては、そもそも部下の仕事に対するリスペクトがない、これもひとつのマナー違反です。

また反対に「言わなくても察してほしい」という考えで、必要なことを伝えないのもある種のマナー違反。部下は手下でも家来でもなければ、恋人でもありません。「察してほしい」という、立場を利用した受身の姿勢では、スムーズに仕事が進まないのはあたり前です。それこそ馴れ合いの中での“部下への甘え”は、行き過ぎるとパワーハラスメントにだってなりかねません。

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“丸投げ”と“任せる”のでは大違い!

さらに、みなさんはこんな経験ありませんか? たとえばまだ管理職についていない頃、企画ごと丸投げされたにもかかわらず、できてみたらすべてに対してダメ出しと修正の嵐だったこと。またたとえば現場を任されたにもかかわらず、決定権も振り幅もないまま、結果ただの伝書鳩として悩みながら企画を終わらせたこと……。

誰しもに心当たりがあるこんな苦い経験は、上司への信頼感を少なからず失わせたり、仕事への熱意を奪ったりするものだったはず。管理職になった今は反対に、部下に対しての礼儀やリスペクトを欠くことで、今度は自分たちのほうが部下にとっての“ドリームキラー”になっている可能性があるのです。

もちろん部下の意見をすべて採用する、というのではありません。ここで伝えたいのは、社会人として相手が誰であれ、仕事の礼儀がなっているかということ。

体裁としては“信頼して任せる”というスタンスをとっていても、あらかじめわかっていることを後出しで指摘したり、部下が真剣につくった案をたたき台にすることが前提であれば、それは管理職としての尊厳を欠く行為。本来マナーとは、お互いが心地よくものごとを進めるためのちょっとした気遣いや思いやりが基本にあります。つまり、自分以外の誰かに意識がきちんと向いている状態。それは相手が部下であっても同じこと。真のマナーとは、罰則があるルールとは違っていても、大人が品格をもって守るべき大切なものなのです。