昼と夜の長さが同じになる「秋分」。それを過ぎると季節は次第に夜の長い「冬」へと移行していきます。季節の移り変わりに伴い、心身のバランスもくずれやすいため、この時期に大切な養生法を知りましょう!
※写真はイメージです(写真=iStock.com/west)

農作物の収穫を終えると、季節は、秋から冬へ。

秋分は9月23日~10月7日の時期で、日の出から日没までの昼と、日没から日の出までの夜の長さがほぼ同じになり、その後は徐々に夜の時間が長くなっていきます。

空高くイワシ雲やウロコ雲などが浮かぶ秋空が広がり、農作物は収穫の時期を迎えます。秋分に一番近いいぬの日は、秋の社日と言い、古くから作物を実らせてくれた田の神が山に戻る日と言われ、豊作を祈り、感謝を捧げにお参りする風習があります。これらの行事が終わると、季節は秋から冬へと次第に変化していくでしょう。

秋分は、昼と夜の長さが同じになる彼岸を迎え、夜の時間が少しずつ長くなります。秋分は先祖供養の日でもありますが、豊作の祝いの意味も含まれています。

季節のはじまりの初候は、秋の味覚であるマツタケやハゼが旬を迎え、空にはイワシ雲、ウロコ雲、サバ雲など秋特有の雲が見られ、道端には彼岸花ヒガンバナが咲き乱れます。季節が進む次候では、サンマやサトイモなどが旬を迎え、紫色がまぶしい紫苑シオンの花が咲き乱れます。

終わりである末候には、トラフグやギンナンが旬を迎え、稲の実りである収穫のサインとなる、金木犀キンモクセイの花が咲き乱れます。

カラダの中も、春からの積み重ねを収穫する時期

秋分は、ホルモンバランスが乱れやすい時期です。農作物も収穫時期を迎えるように、カラダの中も春からコツコツと積み重ねてきたものが実を結び、収穫する時期にあたります。特にホルモンはさまざまな状況が整わないと生産・分泌されないことから、この時期に大きな差を生みやすく、その差は肌の状態に現れると言われています。昔から「肌を見ればココロの調子がわかる」と言われるほど、ココロと肌は関係があるとされています。

もともと秋は肌のうるおいがなくなり、乾燥症状が出やすい時期。保湿などのこまめなスキンケアに加えて、生活習慣を整えることで皮膚のコンデションを改善し、心身ともに若返るようにしましょう。

秋分は、いろいろなものが実ることから、夏の成果が現れ、気持ちが充実するとともに、何事にも前向きになれる時期です。「思考は現実になる」と言われるように、これから冬に向かうこの時期の思考は、後半の季節を過ごすうえではとても重要です。読書の秋ともいわれるように、いろいろな考え方を身につけることで頭を鍛え、前向きになれるような思考を養いましょう。

日々の食習慣で、老化の原因「糖化」を予防!

「カラダとココロの養生法」

肌のコンディションを考えるうえでは、コラーゲンなどのタンパク質と糖が結びつく「糖化」が問題とされています。パンや白米などの主食や甘いお菓子類には多くの糖が含まれていますが、これらの糖とタンパク質が結びつくことで糖化が起こるとAGE(終末糖化産物)が発生し、皮膚の乾燥やくすみ、たるみ、シミなどの症状が起こりやすいとされています。そのため、近年、AGEはアンチエイジングの分野で注目されています。さらに、糖化は、美容面だけでなく、動脈硬化や糖尿病の合併症、がんやアルツハイマー型認知症などの多くの生活習慣病や病気にも発展する可能性が指摘されていることから、健康面でも無視できません。

そのようなことからも、普段から糖化を起こさない食習慣を心がけることが大切です。なお、AGEの発生は糖類の量だけではなく、調理方法にも大きく左右されます。通常、AGEは食品を高温で加熱することで褐色化すると、大量に発生することが知られています。そのため、糖分を減らすだけでなく、調理方法も焼いたり、揚げたりすることより、「蒸す」「煮る」、さらには「生」で食べるなどの調理方法に変えてみましょう。なお、肌のうるおいや乾燥、さらにはアンチエイジング対策が気になる人は、この機会に食習慣そのものを見つめ直してみることが大切です。

「食養生」

この季節は、サンマなどで栄養を補充しましょう。サンマは秋の風物詩でもありますが、特にサンマのはらわたには心臓を丈夫にし、疲れ気味のカラダを癒やす作用があります。辛み成分のショウガはカラダの芯を温め、代謝を高め免疫力をアップしてくれる働きがあり、全身の血流が良くなるため、気分を発散し、リフレッシュさせてくれるでしょう。

「お勧めのツボ」

秋分の時期を乗りきるためのお勧めのツボは、養老ようろうです(図表1)。養老は手首のシワの中心より1センチほど小指側の突起した骨の際、薬指寄りの下のへこんだところにあります。このツボは、アンチエイジングのツボとして知られるだけでなく、目の症状や肩から腕にかけての痛みにも効果的です。

イラスト=筒井よしほ(イラストAC)

養老をイタ気持ちいい程度に10秒程圧迫し、5秒空けて5回程度刺激するようにしましょう。また、継続的にアンチエイジングを行いたいときには、養老を定期的にマッサージしたり、米粒など小さな粒を絆創膏ばんそうこうなどで貼っておくとさらに効果的です。

下腹部の温め、筋肉トレーニングで、ホルモン分泌を調整

「タイプ別・老化の原因」

この時期は、今まで養生してきた成果がカラダにも表れてくる時期です。特に肌はホルモンのバランスや免疫機能、さらにはココロの状態などを色濃く反映しやすいため、この時期にアンチエイジング対策を行うことは重要です。

特に、一生懸命頑張りすぎている頑張り屋さんタイプの人は、交感神経が亢進こうしんしているために、骨盤内臓器に血液が流れにくい状態が続いています。そのため、下腹部を温めて骨盤内臓器の血流を良くし、ホルモンの生産性を高めるようにしましょう。

生活リズムの乱れることによっておこる生活習慣タイプの人は、マザーホルモンと呼ばれるDHEAを取るようにしましょう。DHEAは、デヒドロエピアンドロステロンというヒトの体内に存在するホルモンの略称で、主に体内の副腎皮質で分泌されています。体内で性ホルモンをつくるための原料となるため「マザーホルモン」と呼ばれています。分泌量は思春期に急激に高まり20代でピークを迎えますが、その後急激に分泌量が減少し、40代では約半分、80代ではほとんど分泌されなくなってしまいます。

年齢による加齢タイプの人は、強度の高い筋肉トレーニングを行いましょう。激しい運動や筋トレはテストステロンを分泌し、そのテストステロンは女性ホルモンであるエストロゲンに合成されます。テストステロンは精巣以外の副腎皮質でもつくられることから、女性でもトレーニングを行えば、女性ホルモンが分泌されることになります。

なお、自分のタイプに関しては、カラダの状態を入れるだけで簡単にわかる無料アプリYOMOGIを利用すると便利です。月に1回(毎月10日まで)入力すると、あなたに合ったその月の養生法が送られてきます。

「タイプ別・老化の対処法」

頑張り屋さんタイプの人は、お腹や仙骨の周りにカイロやお灸をしてみましょう。(図表2)。もし手で下腹部や仙骨部を触り、暖かいと感じる場合は、骨盤内臓器の機能が低下している証拠。まずは夜に下腹部にお灸を行うことで内臓機能を高め、その後は下腹部や仙骨にカイロを貼り、血流の状態を良くするようにしましょう。

丹田と仙骨
下腹部・骨盤部を温める:下腹部(丹田)や骨盤部(仙骨)をカイロなどを貼って温めるようにしましょう。

生活習慣タイプの人は、DHEAが多く含まれる大豆を摂取しましょう。DHEAには、免疫力を高めて病気を予防、筋肉量を増やしダイエットを促す、ストレスを軽減しうつを改善、不妊を改善するなど、さまざまな作用があります。1日50mgが基準であり、納豆1パックには65mg、お豆腐2分の1丁に55mg含まれているとされています。

加齢タイプの人は強めのバンザイをしながら行うスクワットがお勧めです。まず、足を肩幅程度に広げて両腕を真上に上げ、その姿勢を保ったままゆっくりヒザを曲げ、太ももと床が平行になるまで腰を落します。腰を落とした位置で2~3秒キープし、ゆっくりヒザを伸ばしながら元の位置に戻します。この運動を1日10回程行うと良いでしょう(図表3)。

バンザイスクワット
バンザイスクワット:両手を上に上げたままスクワットを行う。腰を落とした位置で2~3秒キープし、ゆっくりとヒザを伸ばして元の位置へ戻す。1日10回程度行う。

秋分は、秋から冬へと移り変わる最初の季節。昼よりも夜の時間が長くなるとともに、今まで育ててきたものを収穫する時期でもあります。ホルモンなどの物質は、食べ物だけでなく、規則正しい生活を続けなければ、生産されません。そのため、この時期に生活を見つめ直し、足りないものを補うことでホルモン調整を行うことが大切です。

「秋分の特徴」

●心身の症状
カラダ:ホルモンバランスの乱れ、皮膚の症状
ココロ:気持ちが充実する

●季節に多い症状
皮膚症状(老化)

●心身の養生法
糖化を防ぐ(AGE)

●食養生に効く食材
サンマ、唐辛子

●ツボ
養老ようろう