『知らなかったんです。子どもを産んで育てることがこんなに大変で壮絶で、人生がまるっと変わってしまうような出来事なんて……』。そう語るのは、5歳と2歳の双子の三姉妹の母であり、子育てインスタグラマーのボンベイさん。長女を産んだ後、はじめての育児への不安はもちろん、夫婦関係、夫の両親との同居問題等、すべてがストレスになり、軽いうつ状態になったという。そんなボンベイさんが双子の妊娠を知ったときに決めたのは、完璧主義をやめることだった。そこで生まれたメソッドの数々「週に4日は豚汁とごはん」「泣き声にはイヤホンを」等を、一冊にまとめたのが初著作の『家事なんて適当でいい!』。ボンベイさんの提唱する「死なせない育児」とは一体? その一部を抜粋した。

※本稿はボンベイ著『家事なんて適当でいい!』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/paulaphoto)

お母さんの心をズタズタにする言葉「かわいそうに」

今まで自分のことだって完璧にこなせなかったのに、母親になった途端、突然スーパーマンみたいにすべてをうまくやらなくちゃいけない気がする。お母さんになった途端、周りの目も突然そう変わってしまうのかもしれません。周りから投げかけられる「かわいそうに」。親の心をズタズタにする言葉ランキングがあるならTOP3に入る言葉!

ちょっとでも子どもが泣きだすと「かわいそうに」。
(いえいえ、子どもは泣いて意思疎通するんです)
靴下を履いていないだけで「寒いねぇ~、かわいそうに」。
(足の裏で体温調節しているんです)

(中略)昔は言われるたびにグサッ、ビクッ、といちいち傷ついていました。(でも、冷静に考えると、大抵は「かわいそう」じゃないときに言われます)。

母親だって人間 完璧じゃなくて当たり前

自分自身のことにしても、

飲み会へ行く。今までは「女子会いいね~!」だったのに、「え、子どもは?」。
ひとり時間を楽しむ。今までは人生を謳歌していると好意的だったのに、「子どもがいるのにひとりの時間がほしいなんて甘えてる」。
仕事に精を出す。今までは評価されてきたのに、「一緒にいる時間が少なくて子どもがかわいそう」。

当たり前だけれど、子どもを産んだって飲みに行きたいし、ひとりの時間がほしいし、仕事をする、しないは自分で選択したい。

「親が人間だって何歳のとき気づいた?」これは、社会学者・古市憲寿さんの本『保育園義務教育化』(小学館)に載っていたフレーズで、読んだ途端、ガツンときました。この問いにすべてがあると思いました。簡単に言うと、母親って人間扱いされていない、という話です。これを読んで、母親になった途端、何もかも完璧にこなせて、すべてをうまくできるようになるわけじゃない、と気付きました。

一度全部を手放すと「大切にしたいこと」が分かる

育児が本当にしんどくなったとき、一度ぜんぶ怠けてみた。もう、育児も、家事も、自分のことも、すべて。そうしたら、自分は「何を怠けるとストレスがかかるのか」がわかりました。水回りが汚いのだけは耐えられないから最低限のキレイを保つ、とか。片付けや掃除ができない方がストレスだから、その分料理の力を抜こう、とか。手を抜いても自分にとってストレスにならないことはやらない。逆に、やらないと罪悪感を感じるものはやった方がいい。人それぞれ「何を大切にしたいのか」が違うのに、自分が大切にしたいことに「なんでこんな非効率なことやってるの?」と言われると、なんだか自分自身も否定されているようでつらくなりますだから、自分が「大切にしたいこと」に時間をかけるためならば、その他のことを効率化するなり手抜きをするなり方法を考えればいい。

私がもっとも大事にしているのが、「自分で自分の機嫌をとる」こと。「自分が幸せな気持ちになるリスト」を作るだけで、楽しい気分になります。例えば……。

●ココアを牛乳100%で飲む(貧乏性なので、いつもはお湯で飲む)
●コンビニにスイーツを1個買いに行く(1個じゃおさまらないけど)
●マンガ(電子書籍)を1冊買う(1冊じゃおさまらないけど)
●好きな音楽を絶叫しながら歌う(主にアニソン、懐メロ専門)

自分の機嫌とりは、生きていく上でとっても大事にしています。

「頼りたくない。自分でやりたい」という気持ちをがまん

私は、育児に疲弊しているとき、「すべてを自分でやらなくては」と考えていました。「できるなら、ぜんぶ自分でやりたい」と。子どもの日々の成長を見逃したくないし、すべてをやってあげることでママが一番だと思ってほしいから。長女を産んだ直後は独占欲もあったのか、他の人に娘を抱かれるのが心底嫌でした。でもそれが、結果的に自分の首を絞めているということにも気がつかずに……。私じゃないとダメなんだ。他の人には任せられない、と、全部自分で抱え込んで、いっぱいいっぱいになってしまう悪循環。そして、とうとう自分では抱えきれなくなって初めて、「これじゃダメだ」と気付いてからは、「頼りたくない。自分でやりたい」という気持ちをがまんして、まず近くにいる義母に頼る練習をすることにしました。

1時間だけ預けて、その間に私は寝かせてもらう。泣いているときに、抱っこをバトンタッチしてもらう。「ごはんを作ってほしい」と伝えて甘えさせてもらう。勇気を出して小さいお願いをしてみると、義母も、素直に頼られたり甘えられたりすることがうれしかったようで、まず、私と義母の関係が良くなりました。義母との関係が良好になると長女に対する独占欲のようなものも薄れていき、頼ることに嫌悪感や罪悪感を感じることもなくなっていきました。そして、人に頼ることの心地良さというか、心が軽くなっていくのを感じました。

もともと義母と険悪だったわけではありません。ひとりで頑なだった私が素直に「もうダメだから助けて」と頼ることで、さらに関係が良くなったのです。

甘えるのが苦手な人は「小さなお願い」から練習を

ボンベイ『家事なんて適当でいい!』(KADOKAWA)

これは夫との関係でも同じです。自分だけが我慢していたり、負担が大きいと思ったりしていると、相手と良好な関係は築けないのだと実感しました。そして何より、人から相談されたり信頼されたりするのはうれしいことなんだとわかりました。

以前の私は敏感すぎて、相手の気持ちに対しても臆病になっていました。きらわれたくないという気持ちもあって、「こんなこと頼んだら嫌じゃないかな」とネガティブに捉え、なかなか人に頼れない……というパターンは私だけではないと思います。

でも、ほんの少し勇気を出してお願いしてみると「あ、こんなに楽になるなら早く頼ればよかったな」と気付くはず。だから、今まで一人でがんばってきたお母さんはぜひ、小さなお願いから練習してみてほしいと思うのです。自分が楽になるばかりか、何よりも相手との距離がグンと近くなるはずです。