大暑は、高気温が続くことで、疲労もピークに達する
7月23日~8月6日は大暑(たいしょ)で、一年でもっとも暑い時期です。
真夏日や熱帯夜が続くため、浴衣や風鈴など、夏を涼むための風物詩が、ちまたには多くみられるようになります。
一方、疲労がたまることで、お腹の調子をくずしやすくなります。お腹の調子は、栄養吸収とも関係が深いために、カラダを回復させる物質が不足することで、疲れがさらに蓄積していきます。お腹の調子を整えて、エネルギーが貯まるのを待つことが何よりも大切です。
大暑は、気温もどんどん上昇し、真夏を実感できるようになります。
季節のはじまりの初候は、花火大会が各地で開催され、淡い紫色の桐の花が咲き乱れます。キュウリが実り、ウニが旬を迎えるようになるのもこの時期です。そして、季節が進む次候では、アナゴや枝豆が旬を迎えます。
終わりである末候は、太刀魚(タチウオ)やスイカが旬を迎え、クワガタやカブト虫を山でよく見かけるようになるでしょう。また、セミの大合唱である蝉しぐれを聞くことで、夏真っ盛りであることを実感できるでしょう。
カラダの疲れは、内臓の疲れにつながる
大暑は、カラダの疲れが次第に内臓の疲労に変化していきます。吐き気やむかつきにはじまり、食欲減退、さらには下痢や便秘などお腹をくずすようになるでしょう。この時期はお腹の負担になるような食べ物は避け、消化が良く、栄養価の高い食べ物を食べるようにすることが大切です。
なお、舌は内臓の鏡と言われています。特に舌のコケ(舌苔=ぜったい)は内臓の状態を表しています。正常では舌にコケはありませんが、お腹が冷えている場合には白いコケが、また、胃酸が過度に出ている場合には黄色いコケが見られます。お腹、特に胃の状態がどのようになっているかを知るために、定期的に舌のコケの状態を鏡で確認しましょう。
大暑は、夏の終わりの季節で、次からは秋がはじまります。季節は太陽の力が強かった陽から陰へと徐々に変化していきます。この季節は土用と重なる時期。土用にはもともと農業では土起こしや土いじりをせずに、地盤を固める時期であると言われているため、土木業でも、この時期には何かをはじめることを避ける傾向にあります。その意味からも、この時期はいろいろな変化により心が揺り動かされますが、新しいことをはじめるのを避け、しっかりと地盤固めをし、自分を見つめ直し、腰を据えることが大切です。
お腹の調子の良しあしは、体調管理のバロメータ
「カラダとココロの養生法」
この時期は疲れにともない、お腹を壊しやすい時期です。夏バテでご飯が食べられなかったり、食中毒でお腹を壊したり、下痢や便秘などの消化不良などを頻繁に起こすでしょう。食べ物を消化吸収することでエネルギーを得るわれわれにとって、お腹の調子はとても重要であり、お腹の調子が悪いと疲労回復ができないうえ、気分をコントロールしてくれるような脳内物質も合成できなくなります。だからこそ。お腹の調子を整え、カラダも気分も整えることが大切です。
お腹の調子を整えるために必要なことは、お腹のコンディション、腸内フローラの調整です。一般的に、肉類や魚介類、乳製品などに含まれている動物性タンパク質や脂肪が多い食事に偏ってしまうと悪玉菌が増えてしまいます。しかし、このような食品を摂らないというわけにもいきません。そこで、腸内を元気にしてくれる善玉菌を多く摂取し、腹内フローラを整えることが大切なのです。善玉菌である、ビフィズス菌や乳酸菌、納豆菌などはの発酵食品に多く含まれており、腸内フローラを整えてくれます。そのため、納豆や乳製品(ヨーグルト、チーズなど)、こうじ類(味噌、醤油、みりん、日本酒など)に加えて、善玉菌のエサとなる食物繊維(ゴボウ、ニンジン、オクラ、ホウレンソウなど)やオリゴ糖(玉ねぎ、ゴボウ、ネギ、バナナ、大豆など)を積極的に摂取し、カラダを整えるようにしましょう。
なお、正常では善玉菌のほうが悪玉菌よりも多く存在しているとされていますが、肥満の人の腸内フローラの分布は大きくくずれていることが知られており、近年では癌や糖尿病などでも腸内フローラのバランスがくずれていることは知られています。このように、腸内フローラの変化は、栄養を吸収できないだけでなく、将来的には病気にも発展するので注意が必要です。
「食養生」
この季節は豆類を多く取ることが大切です。豆類は、消炎作用や充血作用、清熱作用がある食べ物であり、消化を助けてくれる役割があります。そのため、うつやストレスの解消にも役に立ちます。また、大豆には大豆イソフラボンという女性ホルモンの原料が多く含まれていることから、更年期などの女性のトラブルにも有効です。
「お勧めのツボ」
大暑を乗りきるためのおすすめの、足の外スネにある足三里(あしさんり)というツボは、お腹の働きを活発にしてくれるツボです。場所は、ヒザの外側でお皿の下から指4本分下がった部位で、一番くぼんでいるところです。昔から足三里にお灸を据えることは、疲労回復につながると考えられています。なお、内臓の調子を整えるには、ツボを圧迫するよりは、お灸のほうが効果的です。熱さを感じるまで何個かお灸を据えてみましょう。
腸内フローラを育む食べ物と、軽い筋トレで体調を整えよう
「タイプ別・お腹の調子をくずす原因」
この時期は疲れが内臓に影響をおよぼす時期です。
特に、いつも一生懸命頑張りすぎている頑張り屋さんタイプの人は、お腹に負担がかかり、消化機能に影響を与えます。そのため、お腹を温めることで内臓血流を上げ、自律神経の調子を整えることが大切です。また、生活リズムの乱れによって不調がおこる生活習慣タイプの人は、消化がうまく行えていない可能性があります。スムーズな消化には、発酵食品など腸内フローラを整えるものや食物繊維をたくさん補給するなどし、消化・吸収しやすい状態に変える必要があります。
年齢による加齢タイプの人は、腸内運動を盛んにするために、腹筋を鍛えることが大切。お腹の筋肉は便秘の改善にも効果的であるだけなく、腸内の血流もよくしてくれます。そのため、お腹の周辺の筋肉を鍛えることが大切です。
なお、自分のタイプに関しては、カラダの状態を入れるだけで簡単にわかる無料アプリYOMOGIを利用すると便利です。
「タイプ別:お腹の調子を整える方法」
頑張り屋さんタイプの人は、お腹周りを温めましょう。特におへその下の下腹部は、消化機能を高めるのに効果的であるため、カイロなどの使用をお勧めします。また、足の親指の付け根内側にある「太白(たいはく)」やおへその上から指幅4本分に位置し、「みぞおち」と「おへそ」の真ん中あたる「中かん」などのツボが、お腹のコントロールには効果的。これらのツボをイタ気持ちいい程度に5秒程指圧することも効果的ですし、冷えている場合にはお灸がオススメです。お灸の場合は、熱さを感じるまで何回か行いましょう(図表2)。
また、生活習慣タイプの人は、発酵食品を多めにとり、お腹を整えるようにしましょう。発酵食品は、チーズや納豆、ヨーグルトのほか、キムチやお漬物も効果的です。キュウリやナスなどの夏野菜を浅漬けにし、毎日少しずつ発酵食品を摂取するようにしましょう。
最後に加齢タイプの人はお腹の周りの筋力の低下が起こっています。お腹の筋肉が少なくなると、腸の蠕動運動が弱くなり、内臓は冷えやすくなります。また、内臓を支えることができなくなり内臓下垂になります。仰向けに横になり、片方のヒザを立てて、足の裏をしっかり床につけた状態で反対側の足を持ち上げ、お腹に力が入ったところで、息を吸いながら上げた足の足首を直角に曲げ10秒ほどその状態をキープします。逆側も同様に行います。1日10~20回程度を目安に行いましょう(図表3)。
大暑は、夏の本番かつ夏のピークの時期です。この時期には、夏の疲れがお腹にまでおよび、内臓疲労を起こすことで、食欲不振やむかつき、吐き気、さらには便秘や下痢を引き起こします。お腹の周りを温めたり、鍛えたりするとともに、お漬物や消化が良い食べ物を多く摂取して、腸内フローラを整え、内臓の負担を減らすようにしましょう。
この時期は、新しいことをはじめるのではなく、しっかりと体調を整えるとともに腰を据え、次の季節に向けてココロもカラダも基礎固めを行いましょう。なお、次の季節からは秋になります。
「大暑の特徴」
心身の症状
カラダ:内蔵疲労(吐き気・胃もたれ・便秘・下痢)
ココロ:ココロの同様、気持ちが変化しやすい
季節に多い症状
お腹の調子が悪くなる
心身の養生法
腸内フローラを整える
●食養生に効く食材
豆類(大豆など)
●ツボ
足三里