中年の危機にあるおじさんには長期休暇を
第1回目(「賢い女こそ、職場で男を立ててはいけない」)で触れましたが、男性が男らしさを証明するためのキーワードが2つあり、「達成」と「逸脱」です。
出世は男性にとってわかりやすい「達成」です。それだけに、40代にもなって出世の目がないと分かったらおおいにショックを受けます。現実的にはおよそ6割の男性は課長にもなれないのです。
出世できたからといって安心とはかぎりません。いわゆるミッドライフ・クライシスに陥る恐れがあるからです。それなりにいい会社に入り、出世もして、家族もいるけれど、こんな「平凡」な人生でいいのかと悩むわけです。
いずれにしても40代は人生の折り返し地点なので、一回、立ち止まって考えるには良いタイミングです。それにもかかわらず、とりわけ男性は、いつまでも歩き続けなければゆるされないような空気があります。
芸能界の例になりますが、アイドルグループの嵐が40歳を目前に活動休止するのは、社会的な影響を考えてとても良いことだと思います(※メンバー最年長の大野智が休止の2020年で40歳)。嵐ほどの経済的に大きな影響を持つ人たちでも立ち止まれるわけですから、一般の男性が立ち止まれないわけはない。「俺がこの仕事をしないと会社が回らない」などと頑なに考えず、ここらで溜まっている有休を消化したり、リフレッシュ休暇があるならそれを活用したりすればいいと思いますね。
仕事のできないおじさんは、なぜ退職を選ばないのか
出世できなかったからと言って、おじさんに逃げ道はありません。結婚していれば、妻子を養わなければなりませんし、仮に、独身だったとしても、働いていない男性の居場所は社会にありません。おじさんにとって無職ほど厳しい視線を浴びる肩書きはないでしょう。だからこそ、仕事自体に関心がなくなっても、やりがいを感じなくなっても、その場に居続けることを目的にして出勤するおじさんもいます。
最新のデータでは、男性の平均賃金を100とすると女性の賃金は約73(図表1)。ピーク時の年収が男性は424万円で、女性が270万円です(図表2)。単純に考えて、結婚している場合、女性の年収だけでは家計を担えません。だから既婚の男性は絶対に会社を辞められない。そんな不自由さに男性自身も気づくべきで、女性の賃金が上がりさえすれば、男性にも休業する、さらにはいっそ働かないなどの選択肢ができるはずなのです。
今の日本では、男性は学校を卒業すると定年まで働く以外の選択肢がありません。多様な働き方が実現できていないと感じます。女性はそこから出てくる弊害にイライラすることも多いと思いますが、その背景、原因がわかれば長期的には解決策が考えられるのではないでしょうか。例えば実質的に女性の職種となっている一般職、総合職の区別も、今後はなくなってくると思います。多くの女性が“普通に”働いていくことで、男性の働き方も、ひいては企業文化も変えていけるはずです。