病気でなくても、サプリメントなどを毎日服用している人も多いはず。その薬やサプリメント、何で飲んでいますか? 一緒に食べているものは大丈夫? 今回は、知っているようで知らない「薬の飲み方」をお届けします。

自己判断は禁物! まずは正しい知識を得ることからはじめよう

風邪やインフルエンザが猛威を振るう冬が終わったと思ったら、すぐに手強い花粉症の季節に……。仕事の疲れやストレスも相まって、気づけば1年中何かしらの薬を服用しているという現代女性も多いはず。

けれど、医師から処方してもらった薬を勝手に途中でやめてしまったり、ドラッグストアで気軽に購入できる市販薬でも、早く効果を得ようと「これくらいなら……」と自己判断で過剰摂取をしてしまったりなど、身に覚えのある人も多いのではないだろうか。副作用の危険を回避するためというのはなんとなく理解できるものの、基本的になぜ用法・用量・期限・期間を厳守しなければいけないのか知っている人は少ない。

そこで、薬の「服用方法」について、改めて正しい知識を得るべく、公益社団法人日本薬剤師会 常務理事の亀井美和子さんにお話を伺った。

用法・用量を守らないと、副作用の可能性も!

「薬の効果や安全性は、臨床試験で用法や用量を検討したうえで承認されます。添付文書に記載された用法・用量は、有効性や安全性が確認されているものです。服用時(食前・食後など)によって、薬剤の吸収や作用に影響する薬もあるため注意を伝えています。自己判断でそれ以外の用法・用量で服用すると、効果が現れなかったり、思わぬ副作用が発現することがあります。悪い作用が起こるのは、用量を多く使用したときだけとは限らず、使用量を減らすことで、症状が長引いたり、抗菌薬などでは薬剤耐性が生じたりすることがあるので注意が必要です」(亀井さん)

また、不適切な用法・用量で使用した結果、重い副作用が生じた場合は、「医薬品副作用被害救済制度」の救済給付の適用にはならないので、薬剤師からの提言は遵守すべきだという。

食事ついでにやってしまう、コーヒー・紅茶での服用は?

そして、ついやってしまいがちなのが、水などがないからと唾液だけで薬を飲み込んだり、食事ついでに水や白湯以外の飲料で薬を摂取すること。そのまま、あるいは、水や白湯以外の飲み物での服用がなぜいけないのか……。その理由は、内服薬の多くは小腸から吸収されるため、よく溶ける状態で服用すると吸収が速やかになるためだ。水なしで錠剤やカプセル剤を飲むと食道に貼りついてしまい、その場所に炎症が起きてしまうことも。また、紅茶、コーヒー、ジュース等での服用が勧められない理由は、薬との相互作用が起こる可能性があり、効果に影響があるだけでなく、ジュースなどに溶かすと薬自体の色や味が変わってしまう懸念もある。

「水かぬるま湯以外のもので飲んでも、大きな問題が生じない薬も多くありますが、一部の薬では影響が出ることもあるので、処方薬、市販薬を問わず、必ず薬剤師に相談してください」(亀井さん)

薬の服用時に日常でついやってしまいがちな危険な行為の2つめは、知らない間に別の薬や食べ合わせの悪いものと一緒に服用してしまうこと。食べ合わせの悪いものは何か、また、なぜ危険なのかをよく知っておきたい。

納豆も、薬によっては相互作用あり!

医薬品との相互作用で問題となる食品として代表的なのは、グレープフルーツジュース、クロレラ、納豆、カフェイン含有飲料、牛乳、アルコールなど。これらのうち、よくある例は、よく眠れるようにと、お酒と一緒に、いわゆる睡眠薬(催眠鎮静剤)を飲むこと。これは成分の血中濃度が高くなるだけでなく、他人にそれを勧めたり、その行為を同じ場にいながら許容することは犯罪になりかねないのでよく注意することが必要だ。

また、子どもに牛乳で抗菌薬や抗生物質を飲ませることは、薬の作用や吸収を低下させるので気をつけたい。さらに、毎日コーヒーを愛飲する人も多いだろうが、薬の種類によっては、体内でのカフェイン分解を抑制し、中枢神経刺激作用(神経過敏、イライラ、不眠など)が発現したり、カフェインが体内代謝を抑制したり、血中濃度が上昇し、鎮痛効果や出血傾向が強まる可能性などがあるので、コーヒーで薬を飲むことはもちろん、服薬期間中のコーヒーの摂取量等も注意したい。

食べ物では特に、健康にいいといわれている納豆やグレープフルーツは、要注意。特定の薬を飲んでいる間は、これらを制限しなければならないことがあるので、日常的によく食べる人は特に注意しておこう。

「ほかの薬や飲食物との相互作用はたくさんあり、処方薬であれば薬剤師が調剤前に確認しています。その確認をきちんと行うために、患者さんに質問したり、お薬手帳の提示を求めたりします。処方薬で治療中に、一般用医薬品(市販薬)を使用したい場合や、2種類以上の一般用医薬品などを併用したい場合は、併用する前に必ず薬剤師に相談してください」(亀井さん)

内服薬だけでなく、湿布薬や目薬のような外用薬でも薬の併用の注意点や使用制限はある。種類問わず薬を複数摂取したいときには、よく気をつけたい。

また、持って歩くのが面倒と思われがちな「お薬手帳」には、さまざまな電子版もあるので、なくしてしまったり、受診時に持参し忘れがちな人には、こちらを利用するのもお勧め。副作用を防ぐためにも、ふだんから自分がどんな薬を飲んでいるのかきちんと記録することが大切だ。

誤使用が、思わぬ経済的ダメージにもつながる

薬の服用が日常的な現代、油断や思い込みが大事につながることもあるのでちょっとしたことでも気をつけていきたい。医薬品に関しては、医師や薬剤師などの医療関係者が知ってさえいればいいと思われがちだが、「医薬品・医療機器等の品質、有効性および安全性の確保等に関する法律」には、一般市民が知るべき医薬品の適正な使用について記載があることは実はあまり知られていない。医薬品は使い方を誤ると、健康に不利益をもたらすだけでなく、仕事や家族そして経済面への心配にも大いに関わってくる。

メディアにあふれているさまざまな情報が、すべての人に当てはまるわけではないので、処方薬や市販薬を含め、医薬品についてわからないことや不安なことがあれば、必ずかかりつけの薬剤師や医師に相談するようにしよう。

知っておきたい薬と食品の相互作用
とくに薬と食べ合わせ・飲み合わせの悪いもの


(飲み物)
・グレープフルーツジュース
・牛乳
・アルコール
・カフェイン(コーヒー・紅茶・緑茶など)
(食べ物)
・緑黄色野菜
・納豆
・チーズ
(その他)
・クロレラ(サプリメント錠剤、粉末など)
※出典:「くすりの適正使用協議会」作成をもとに、編集部一部改編
風邪のときについやりがちな、一般医薬品(市販薬)との併用
“同時服用で、効果倍増!”は、ただの思い込み


一緒に服用しがちな例
・風邪薬+栄養ドリンク
・総合感冒薬+葛根湯
・風邪薬+せき止めシロップ
・風邪薬+花粉症対策薬

これらの併用は思いがけぬ副作用につながることも。購入前に必ず薬剤師に相談しよう。