古くから日本の人々の暮らしに深く関わってきた暦。四季や十二節気ではなく、一年、二十四節のわずかな季節の変化に合わせた、ココロとカラダの整え方を教えます。

旧暦年初の「立春」は、すべてのはじまり

※写真はイメージです(写真=iStock.com/maroke)

2月4日~18日は立春(りっしゅん)です。立春は春の始まりを告げる節気であり、旧暦ではこの季節から新年がはじまると考えられています。何事もはじまりが肝心。ココロもカラダも充実させ、しっかり過ごせるかどうかで、この1年は大きく変わります。

特に、春は冬の間に貯めたエネルギーを解き放ち、新しいことに挑む時期であることから、充実した季節となるはずです。しかし、エネルギーが充実しないとストレスを貯め、不安になりがち。そして、このちょっとしたストレスや不安を放置しておくと、後々大きな病気を招く可能性があるのです。そのため、わずかな不安やストレスでも放置せずに、心身のケアに努めることが大切です。

立春を知らせてくれる節気のサインは、いくつかあります。まず立春のはじまりの初候にはフキノトウや白魚が、次候にはサヤエンドウやニシンが、立春の終わりである末候には明日葉(アシタバ)やイワナがみられるようになります。

実際、暦上では立春は2月4日からですが、地域により季節のサインがみられる時期は若干異なることから、自分の周りをよく観察して、季節のサインに合わせてカラダを調整するようにしましょう。

春のはじまりには、「肝」に関係した症状が現れやすい

春は東洋医学でいうと「肝(かん)」が関係する季節です。東洋医学では、「肝」は血液を蓄え、体内の血液量を調整する役割があります。また、各臓器を調節し、胆汁を分泌するなどの機能も。さらに「肝」は、中枢神経や自律神経系、目とも深く関係しています。

立春は、春の中でも初期ですので、「肝」に関係する目の症状や、中枢神経に関連した筋肉の引きつり、こむら返りなどが生じやすいとされています。これらの症状がみられる場合は、“カラダのエネルギー”が不足している証拠です。

東洋医学では、「肝」が障害されると、感情的にはイライラしたり、怒りやすくなり、それが極まると便秘や手足の冷え、眼精疲労や喉の渇きなどの自律神経症状、さらには不眠やうつなどの精神症状が現れます。

なお、立春は、イライラや怒りやすいなどの感情的な変化が起こりやすい時期です。これらの症状が認められる場合は“ココロのエネルギー”が不足しています。

春先のココロとカラダに効く「養生法」を知ろう!

▼運動

春先は目の病気になりやすく、ストレスなどで目が痙攣しがちです。疲れ目や目ヤニ、目の充血など目の症状を感じた場合は、生活リズムを整えることが大切です。また、この時期は寒いこともあり、筋肉がこわばったり、こむら返りが起こったり、むくんだりします。そのため、カイロなどで筋肉を温めたり、ストレッチやマッサージでこまめにほぐしたりすることが大切です。

▼食養生

この季節にカラダを整えるのに効果的な食材は「ニラ」です。

フキノトウ

ニラは冬から春にかけて葉が厚くてやわらかくなり、旬を迎えます。ニラは温性で辛味があるため、カラダを温める作用があり、冷えや血液の巡りが悪い人に効果的です。また、春を知らせる食材として有名なフキノトウは、少し苦みがありますが、心臓を活発に働かせるとともに、血液の巡りを良くしてくれる効果があります。老化による心肺機能の衰えやカラダが冷えているときにはより効果的です。

合谷

▼お勧めのツボ

春のカラダ養生にお勧めのツボは、「合谷(ごうこく)」です。合谷は、ストレスのコントロールに有効なだけでなく、目の症状にも効果的なツボ。位置は手の親指と人差し指の間で、やや人差し指よりの場所にあり、イタ気持ちいい程度に5秒ほど圧迫を行います。

自分のタイプを知り、対処法を覚えよう!

「タイプ別・ストレス症状」

ストレスは、さまざまな原因で引き起こされます。まずは、一生懸命頑張りすぎで、自分にブレーキを掛けられない頑張り屋さんタイプ。このタイプの人は目が乾いたり、こむら返りが起こったりと自律神経症状のストレスが多く認められるのが特徴です。次は、食事や生活リズムが乱れることによって起こる生活習慣タイプ。このタイプの人はイライラしたり、怒りやすいなどの精神症状が多く認められるのが特徴です。最後は、加齢や体力が落ちることにより生じる加齢タイプです。このタイプの人は、疲れやすかったり、体力が落ちたり、気力がなかったりと全身症状が多く認められるのが特徴です。

「タイプ別・ストレス対処法」

頑張り屋さんタイプの人は、カラダを温めることが大切です。ストレスがかかるとカラダは丸まりますので、丸まった筋肉を伸ばすようにしましょう。具体的には胸の前の筋肉である大胸筋を伸ばすために、両手を開き、イタ気持ちいい程度まで手をゆっくりと開き、5~10秒程度伸ばします。手の角度は斜め上、横、斜め下と3カ所をそれぞれ5回ずつ行いましょう。

手のひらを上または後ろに向けた状態で手を開く
胸を後ろに開き、腕を後ろに引く

 

 

生活習慣タイプの人は、ココロを整えることが大切。具体的には呼吸を整えることがよいでしょう。3秒吸って5秒吐くというリズムが、脳をリラックスさせ、心を整えてくれます。

加齢タイプの人は運動することが大切。歩くことがよいでしょう。1日15~30分程度、太陽の光を浴びながら、一定リズムで歩くことで筋肉を鍛えましょう。

3秒吸って……
5秒吐く

 

 

立春は1年のはじまりの春の中の最初の節気です。冬に養生して貯めたエネルギーを、春の始まりとともに解き放し、新たなスタートを切る大切な時期です。心身を充実させることで、1年を乗り越えられるカラダをつくるようにしましょう。

なお、季節に関連した目や筋肉の症状がある人は、カラダが季節の変化に対応できていないサインです。この時期に必要なカラダのケアや食養生を行い、次の節気への準備をしっかり行いましょう。

「立春」の特徴まとめ
●心身の症状

カラダ:目の症状、筋肉のこわばり
ココロ:イライラ、怒りっぽい

●季節に多い症状

ストレス

●心身の養生法

生活を整える
カラダを温める(ストレッチ・マッサージなど)

●食養生に効く食材

ニラ、フキノトウ

●ツボ

合谷(ごうこく)

伊藤和憲(いとう・かずのり)
明治国際医療大学大学院/養生学寄付講座教授
鍼灸学医学博士・全日本鍼灸学会理事。同大学附属鍼灸センター長。トリガーポイント鍼治療の第一人者であり、慢性痛の緩和治療に精通。現代女性のための、東洋医学に基づく心身のセルフケアも指導している。