仕事のパフォーマンスアップは健康から。病気ではなくても気になる症状を、専門ドクターが解説します。今回は「足のむくみ」について――。

※本稿は、雑誌「プレジデント ウーマン」(2018年8月号)の記事を再編集したものです。

心配のないむくみ、危険なむくみの見分け方

夏になると、足のむくみを気にする女性が増える。特に夕方になると靴が履けなくなるほど足がパンパンになると悩む人も多い。

写真=iStock.com/yavdat

「女性は男性よりも筋力が弱いため、むくむ傾向にあります」と足の専門ドクター、桑原靖先生。

日中、足は心臓より常に低い位置にある。足まで行った血液を心臓に戻すには、ふくらはぎの筋肉がポンプの役割を果たして、血液を押し戻さなければならない。

「筋力が弱いと血液を戻す力も弱いため、血液循環が悪くなり皮膚の下に水分が過剰にしみ出し、たまります。これが『むくみ』。放置するとセルライトという脂肪になり、取れづらくなります」

むくみの度合いは人それぞれだが、生理現象のひとつなので、なんら心配はないと、桑原先生。特に足のむくみは、過剰な水分摂取や冷え、睡眠・運動不足、塩分の過剰摂取などで引き起こされる場合が多い。ただし、特定の疾患が原因の場合もあるので注意が必要だと話す。

「朝からむくんでいたり、動悸(どうき)・息切れがあり、手や顔もむくんでいるなら心臓や腎臓に疾患がある可能性も。特に腎機能低下が原因の場合は尿量がグンと減り、体重が増えるのが特徴です」

(1)足のむくみのチェック
□夕方になると靴がきつく感じる
□足が重だるく感じる
□すねを指で押すとくぼみができ、指の跡がなかなか戻らない
□靴下のゴム跡が残る
□ふだん履いている靴がきつくて履けなくなった
(2)危険なむくみのチェック
□食生活は変わらないのに、尿の回数や量が減った
□朝になっても「むくみ」が続いている
□動悸や息切れを感じることが多い
□1日に体重が1.5kg以上増加する
□2週間で体重が3kg以上増加した
→(1)の項目に1つでも当てはまり、なおかつ(2)の項目に1つ以上当てはまっているなら、病気が隠れていることも! まずは内科で受診を!

また、女性はホルモンの影響で月経直前にはむくみの症状が出やすいのだそう。

「夏にむくみを訴える人が多いのは、水分の摂取が増えることと、冷房が効いた中で知らず知らずに冷えをため込むから。冷えると血液循環が悪くなるので、夏は特にむくみやすいと言えます」

冷えはむくみの大敵。夏の冷房の効いた室内では、素足にサンダルはNGと心得よう。むくみを根本的に改善するなら、筋肉量をアップさせることがいちばん。運動は苦手でも、極力階段を利用するなどで運動量を増やしたいもの。またデスクワーク中でも、爪先を上下に動かして血流をアップさせたり、ふくらはぎを揉んだり、着圧や弾性ストッキングを着用したりするのもオススメ。

「入浴後にセルフマッサージをし、眠るときは足を少し高くして、滞りがちな血液を心臓に戻しやすくしましょう」

▼むくみの対処法
(1)適度な運動と十分な睡眠を
・エレベーターは極力使わない
・ひと駅手前で降りて、歩く
(2)食生活を見直す
・塩分を控える
・ビタミンB群、E、カリウムを摂取
(カリウム摂取量の目安:女性2000mg/日)
(3)夏でも“温める”を意識する
・冷たいものを飲みすぎない
・冷房対策をしっかり(素足にサンダルは要注意)
(4)むくみ予防アイテムを利用する
・足専用マッサージャー、弾性ストッキングなど
桑原 靖(くわはら・やすし)
足のクリニック表参道院長
形成外科医。日本初の足専門クリニックを2013年開設。形成外科、整形外科、皮膚科、血管外科、リウマチ科など足に関する各分野の専門的医療を提供。専門医やメディカルスタッフによるチーム医療を行い、外反母趾や足爪の悩みなどを中心に足の総合的な治療とケアを行う。