仕事のパフォーマンスアップは健康から。病気ではなくても気になる症状を、専門ドクターが解説します。今回は「水虫」について――。

※本稿は、雑誌「プレジデント ウーマン」(2018年7月号)の記事を再編集したものです。

気温と湿度が高くなると、靴内の湿度も急上昇。そこで気をつけたいのが「水虫」。水虫=男性のイメージが強いが、近年、女性の水虫患者も急増中。では、そもそも水虫とは何なのか、皮膚科医の花房火月先生に伺った。

写真=iStock.com/RyanKing999

「カビの一種の白癬(はくせん)菌に感染して起こる皮膚炎が水虫。多くは足に感染しますが、放置すると、足爪、手、手爪、陰部、頭などにも白癬菌が広がってしまうことも」

足の水虫が多い理由は、靴を履いているときの環境が菌の増殖に最適だからだそう。

「足は汗をかきやすく、靴の中は高温多湿に。さらにストッキングなどのナイロン素材は吸水性が低く、つま先の細い靴だと指先が広がらず指間が湿りやすいので、菌にとっては快適な状態なのです」

水虫のタイプは大きく3つ。さらに水虫を放置することで、菌が爪の間に入り込み「爪水虫」を引き起こす。自覚症状はほとんどないが、爪が白濁し、分厚くなり変形してくるという。

「爪水虫の人は、足にも水虫があることがほとんどです」

マニキュアなどで隠してしまう女性もいるが、水虫は確実に進行。では、水虫にはどこで感染するのだろうか。

「白癬菌はジメジメした場所ならどこにでもいます。足裏の皮膚から菌が入り込み罹患(りかん)。水虫罹患者が靴を脱いで歩く、ジムやプール、温泉施設、飲食店の座敷、家庭内などは感染リスクが高い場所。ただし、皮膚が健康な状態なら菌が付着しても24時間以内に足を石けんでよく洗って乾かせば感染しません。ただし、足裏に微細な傷がある場合、すぐに感染することも」

もし落としきれずに水虫になってしまったら、自己判断・自己治療は危険だと花房先生は言う。

(左)趾間型水虫/指の間の皮がむけてかゆみを伴う。進行すると赤くジクジクして、浸出液を伴う。
(右)爪水虫/爪が変色して厚くなり、ボロボロと欠ける。水虫が爪に移行する前にしっかり治療を。

「水虫に似た症状の皮膚疾患もあり、自己判断で市販の水虫薬を使用しても改善しないことも。水虫のような症状があれば、まずは皮膚科の受診を。自己判断での水虫の寛解率は10%程度。医師の診断による適切な薬の使用で完治させることが大切です」

足はいつも清潔に保ち、オフィス内では、時々靴を脱ぐのも水虫対策には有効のよう。

▼水虫の種類
【趾間(しかん)型】
もっとも多いタイプで、足の指の間の皮がふやけ、強いかゆみをともなう。
【小水疱(しょうすいほう)型】
足裏や側面に小さな赤い水疱が多発し乾燥して皮がむける。かゆいことも多い。
【角質増殖型】
足裏の角質が厚くなり表面がごわつく。かかとがひび割れることも。かゆみは少ない。
▼水虫症状チェック
○足の指間がムズがゆい
○足の皮がむけている
○足裏に小水疱がある
○足裏が角質でザラザラし、ひび割れることもある
○足の爪が白濁してきた
1つでもあるなら、即受診を!
▼感染原因は日常生活の中に……
(1)高温多湿の環境で増殖
・通気性の悪い靴を履き続ける
・雨などで足がぬれたまま靴を履き続ける
(2)水虫罹患者との二次接触
・家族と足拭きマットを共有して感染
・ジムや温泉施設などのマットから感染
・居酒屋などの畳、スリッパから感染
▼感染予防には……
(1)毎日同じ靴を履かない
(2)靴を乾燥させる
(3)足拭きマットやスリッパを共有しない
(4)帰宅したら足をせっけんで洗う
(5)足をよく乾燥させる
(6)靴下やストッキングは毎日取り替える
(7)オフィスでは時々靴を脱ぐ
花房火月(はなふさ・ひづき)
はなふさ皮膚科理事長
皮膚科医。一般的な皮膚疾患から難治性の皮膚疾患、さらにシミ・シワなどの美容皮膚科分野まで、患者とじっくり向き合いながら、症状を改善する最良の治療に取り組むと評判。傷痕が目立たない皮膚外科手術にも定評あり。2015年、ジャパンタイムズ紙による「アジアの次世代リーダー100人」に、日本人皮膚科医として初選出された。