「動いて、チャンスの表面積を増やす」に奮い立つ
僕は高校を中退しているんです。それ以前の僕のルーツは野球にあります。しかし、怪我で野球ができなくなったことなどで学校に行く意味も見い出せなくなってしまったのです。ある日、「野球一筋で生きてきて、自分は将来、一体何をしたいのだろう?」と深く考えました。
その答えはやはり、野球でした。とりわけ、自身が小さい頃から続け、その効果を、野球を通じて体感していた丹田呼吸による集中力の向上。あれは一体なんだったのかを深く深く知りたくなったのです。
そして出合ったのが、偶然書店で見つけたセロン・Q・デュモンの『集中力』。僕に2つの大きなインパクトを与えてくれました。
まず「集中力を深く知るには、脳を知るしかない」という示唆を得たこと。それが脳、スポーツ、メンタルの関係性への興味を強固にし、UCLAで神経科学を本格的に学びたいという想いの一端になりました。
2つ目のインパクトは、『集中力』に書かれていたいくつものメッセージ。「チャンスは訪れるものではなく、自分が見つけるもの」「自分が行動するからチャンスは生まれる。まずは動いて、チャンスの表面積を増やす」といった言葉の数々が、僕を何度も奮い立たせてくれたのを覚えています。
UCLAを目指した当初は、周りから「高校を中退してUCLAだなんて」「英語もろくに話せないのに」と猛バッシングを受けましたが、そんな言葉も耳に入らなくなりました。渡米後も、モチベーションが下がったり、気持ちが落ち込むと、この本を開きました。初心に戻れる大切な一冊です。
睡眠2時間ペースの過酷な状況で飛び級を目指した
もう一冊、僕のUCLA行きを決断させた本があります。それがノーマン・カズンズの『笑いと治癒力』。難病である膠原(こうげん)病を、自らの工夫で克服した闘病体験が書かれています。ある日突然、そんな病に侵されたら、絶望的になるのが普通ですよね。だけど、彼は違う。自分の体に起こったことと冷静に向き合い、自分の体を使って実験と研究をはじめるんです。そして結果的に、笑うことと、ビタミンの摂取を毎日続けることで病を克服してしまう。
彼の研究内容もさることながら、絶望的な縁に立ってなお、希望を見失わずに自身を被験者とし、信じた方法にトライし続ける、彼のその姿勢には大きな感銘を受けましたし、壁にぶちあたるたびに、自分の困難の小ささを感じ、勇気を与えてもらいました。実はノーマン・カズンズは以前UCLAで教鞭をとっており、ますますUCLAで学びたくなりました。
大学で「読む」といえば、ほとんどが論文です。授業のほか、病院でボランティアをし、合間に論文を読んで必死に勉強をする。睡眠2時間ペースの過酷な状況で飛び級を目指しました。それができたのは、日本を離れる際に「脳の勉強を必死でするんだ」と心に誓っていたからでもありますが、くじけそうなときに救ってくれたのが、この2冊の本なんです。『集中力』でモチベーションを上げ、『笑いと治癒力』で自分の困難を無効化する。さらに、カズンズに倣い、勉強の合間の15分はコーヒーを飲みながら、大好きなお笑い番組を見て、思いきり笑ってリラックスする。そうすることで、パフォーマンスを落とすことなく走り続けることができました。
仕事以外のことに、没頭して脳を休める
今も多くの本や論文を読みますが、移動時間に読んでいるのは、実はマンガが多いんです。なぜか? マンガって、すごく没頭しやすいんです。仕事以外の何かに没頭することは、仕事で使う脳の休息にはかなり効果的なんです。僕は冒険ものが好きなんですよ。会社経営をしていることもあり、仲間を大切にする主人公の想いに共鳴することも多いのでしょう。今もバッグの中に『ワンピース』や『約束のネバーランド』などのマンガが5冊ほど入っています(笑)。
書籍もマンガも、僕は紙で読むことが多いです。本の重みやにおい、ページをめくる手の感触が落ち着くのかもしれません。読書は行動、モチベーション、リラックスなど、さまざまなよい刺激を与えてくれます。心を整えたいとき、目的別にお気に入りの本があるといいかもしれませんね。
『アルマゲドン』
監督:マイケル・ベイ
1998年・アメリカ
ブルース・ウィリス主演のパニック映画。人類滅亡の危機を救うため宇宙に飛び立った石油採掘作業員の活躍を描く。「開拓心や探検心が芽生えるきっかけになった作品。家族愛、犠牲愛にあふれた話で、見るたびに泣いてしまいます(笑)」
DAncing Einstein代表
高校中退後、渡米。UCLAにて神経科学部を飛び級で卒業。帰国後、脳神経科学の知見を人材開発や教育現場に生かすべく起業。世界初のNeuroEdTeck(R)という分野を開拓しつつ発明活動も行い、いくつもの特許を取得している。