仕事や私生活での「モヤモヤ」を、識者が解決する「プレジデントウーマン」の好評連載。今回の回答者はクレディセゾン代表取締役社長の林野 宏さんです。テーマは「喫煙と仕事」について――。

【今回のご相談】
ヘルスケア事業部のリーダーになって3カ月目、突然解任されました。喫煙ルームにいる私を見て、「部のイメージダウンになる」と上司が判断したのです。「きみは吸わないと思ってた。男ならともかく女性はねぇ~」と。タバコを吸う女性は、頑張っても報われないんですか? 理不尽すぎます。私はたくさん吸ってはいませんが、禁煙には2度失敗しています……。[35歳・不動産・シモーヌ]

私もかつては1日に60本くらい吸っていました。入社2年目、1965年の成人喫煙率は、男性82.3%、女性15.7%。社内の営業マンはほぼ全員、取引先のお客さまもたいてい吸っていました。打ち合わせのときは一緒に吸う。タバコはコミュニケーションの道具だったのです。

林野 宏●1942年、京都府生まれ。埼玉大学文理学部を卒業後、西武百貨店(現そごう・西武)入社。82年、西武クレジット(現クレディセゾン)に転籍し、2000年6月より代表取締役社長に就任。

私は企画や戦略を考えるクリエーティブな職種でしたが、「タバコで気分転換」するのが当たり前で、吸うといいアイデアが出ると考えていた。まあ、今思えば錯覚なんでしょうけどね(笑)。

しかし時代は変わりました。私のまわりでも、同じ会社で働く仲間がたてつづけに肺がんで亡くなったのがきっかけで、禁煙になりました。

肺がんのリスクはかなり前から指摘されてきましたが、近年は受動喫煙が社会問題になり、禁煙の流れがますます加速しています。2016年の成人喫煙率は、男性29.7%、女性は9.7%。

ですから、ヘルスケア事業部のリーダーが喫煙者ではまずいという上司の判断は、間違ってはいません。問題なのは、喫煙者かどうかチェックせずに部下を抜てきし、一方的に解任したこと。そして「男ならともかく」という差別的な発言です。まったくロジカルじゃありません。

リーダーに選ばれたということは、あなたの仕事の能力は高いのでしょう。タバコを吸うことと仕事の能力は別物ですから、「理不尽」と言いたくなる気持ちはわかります。

1日に60本吸っていた私でも禁煙できた

しかしビジネスパーソンは、「自分が人からどう見られているか」を意識することも大切です。「タバコは第三者にも害を及ぼす」という事実が明らかになり、社会全体の流れが禁煙に向かっているのですから、喫煙者に対するイメージが今後よくなることはない。喫煙のメリットとデメリットを比較したら、デメリットのほうが大きいのは明らかです。

どうすることが賢明なのか、あなたはもうわかっていますよね。

上司を見返すためにも、生まれ変わったつもりで、今度こそタバコと決別してはいかがですか?

私が禁煙を決意したのは、47歳のとき。夜、寝るときに咳(せき)が止まらなくなったのがきっかけです。最初はフラストレーションがたまって、上司にすすめられて吸ってしまう夢を見たりしました。しかし、1年後には完全にやめられました。1日に60本も吸っていた私ができたんです。たくさん吸わないあなたなら、きっとできますよ!