自己流改善に限界。会議時間を減らしたい
少数精鋭の不動産仲介会社で店長を務める小野淳美さん。洗練されたオシャレな店舗で部下を育てる忙しい日々の中、抱えている問題がある。それは、社長を交えた支店長会議の短縮ができないこと。時間割をつくり、アジェンダをつくって誘導してみても、話は脱線し、時間も守られず、結局はうまくいかなかった。特に問題だと感じているのは、会議の途中にレクチャーがはじまり、長くなっていることだ。
「テレビ会議は遠方の幹部が集まって話し合いをするのにはとても便利ですが、議事録をホワイトボードなどで随時まとめられないため、目隠し将棋のような状態に陥り、エンドレスで話し合いが続いてしまうことが多い」と言うのは、ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズのディレクター、榊巻亮さん。
まず挙げるのは、終了条件を設定すること。
「会議が終わったときの状態を先に決めます。目的地がハッキリしていれば、おのずと話し合いは効率的に進みますし、脱線したときに『それは議題から外れていますよ、後で話しましょう』と言われても、気分を害する人はいません」(榊巻さん)
教える人
ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ ディレクター 榊巻 亮さん
業務改革からIT導入までをファシリテートするコンサルティング会社でコンサルタントを務める。1級建築士。著書に『業務改革の教科書』『世界で一番やさしい会議の教科書』など。
相談する人
不動産仲介会社支店長 小野淳美さん
平均年齢26歳の不動産仲介会社の支店長。ネットの賃貸サイトを見て問い合わせのあったお客さまや来店者に物件を紹介する営業の補佐も行う。現在、7人の総合職新人を育成中。
お悩み3:上級
ITは導入しているのに
残業が減らないんです(泣)
【小野】なかなか残業が減らず、悩んでいます。社内イントラもチャットもテレビ会議システムもあるのですが……。
【榊巻】社内で情報共有しているのですね。IT化は進んでいるほうではないでしょうか。資料をオンラインで共有するなどもされているのですか。
【小野】はい、一通りやっています。テレビ会議中にオンライン共有して議事録をつくろうとしたこともあるのですが、タイムラグが出てやめたくらいで。
【榊巻】うーん、なぜ残業が減らないんでしょうね。コミュニケーションのツールは何ですか。
【小野】支店長同士のネットワークではLINEグループをつくっています。ただ、支店長会議など、社長を交えたやり取りは英会話型のテレビ会議システムです。
【榊巻】それは、全員参加というより、1人対複数の人間の対話が並行して行われるというようなシステムですよね。
【小野】はい。そのためか、どうしても社長の話が長くなる傾向はあります。午後5時から始めた会議で、4時間かかるということも……。
チャレンジ!
ITと時短テクで会議時間を劇的に減らす!
――セルフIT革命(1)―― 目的を明確にし、共有する
事前に、会議完了時の「状態」を参加者全員で共有
「今日の会議では『明日から具体的に動ける状態』をつくりましょう」というように明確に、終了時の状態を設定。
(1)テレビ会議前に社長とすべての支店長に通知。
(2)会議中、目的から脱線した場合は「議題からずれていますので、その件は終了後必要な方だけに」と伝えて軌道修正。
目標達成のための効率的な会議に
――セルフIT革命(2)―― コミュニケーションのルールづくり
基本の作法を共有し会話を効率化
発言するとき「質問です」など一言加える、答えるときは簡潔に、など、会議を短くするルールを社内でつくる。
簡潔明瞭な会話で会議時間を短縮
――セルフIT革命(3)―― 議事録の代わりにチャットを活用
会議の流れをLINE併用で流し議事録代わりに
すでに決まったことや出された意見をLINEにまとめ、随時、確認できるようにすることで、会議の流れが明確になる。
意見のすり合わせがスムーズに
IT導入を支えるのはアナログの調整力
「これまでも、いろいろなことを試してきたので、手詰まりだと思っていましたが、全員で意識を共有することで、会議時間がグッと短縮できそうです」と小野さん。会議途中のレクチャーも切り離して後回しにすることに成功。
「ITツールはただ導入すればよいというものではありません。組織の状況、文化によって、必要なものは変わってきますし、アナログの要素やトライアンドエラーを重ねて、ベストな環境をつくることが大切です。今回は、小野さんご自身がすでに随分、試行錯誤してこられているので、あとは人の動きを調整していくだけだと思います」と榊巻さん。IT化の仕上げは、アナログでの調整が必須だ。
●会議中の脱線が激減し会議時間短縮
●ルール徹底で有意義な会議が実現
榊巻さんおすすめツール
ビジネス用チャットツール chatwork
http://www.chatwork.com/ja/
クラウド型ビジネスチャットツール。テレビ会議の際に同時にチャットも活用し、発言を「見える化」することで、意思統一しやすくなる。