小川さん/会社員を経て、独立。子どもは3人。PTA役員は未経験のまま、今年度、会長に立候補。
田山さん/企業での勤務を経て起業。子どもは3人。4年連続で役員としてPTA活動にかかわった。
大西さん/大手出版社を経てフリーライターに。子どもは2人。今年度、PTAの書記を担当している。
つまらないPTA便りを刷新してみたら……
【小川】今年度、立候補してPTAの会長をやっています。
【田山】私も3人の子持ちで、役員を4年連続でやりました。
【大西】私は2人の子どもがいるフリーライターです。現在、書記をやっています。それにしても小川さん、会長とはすごいですね。
【小川】未経験のまま、いきなり会長に立候補しました(笑)。PTAってブラックだ、ブラックだといわれますが、本当はどんな組織なのか知りたくて。
【田山】私がPTAに入ったのも、先生への疑問からでした。だったら学校の運営に携わるPTAに入ろうと思ったんです。
【大西】私は、完全にポイントのためですね(笑)。PTA便りを作るのが一つの仕事なんですけど、つい“ライター魂”に火が付いて、誌面を刷新しました。
【田山】すごい! 私も変えたかったのですが、「前例がないから」と言われ断念しました。
【大西】会長の挨拶がどうだのと、誰も関心のないことばかり載っているので、イラストを満載して、誌面を刷新したんです。でも、ほかの書記さんから、できない人もいるから困ると言われて……。
【田山】前例主義ね。それに、そもそも「ポイント制」もおかしいですよね。1ポイントたまれば来年は拒否権がもらえるとか。子どもが5年生の段階でポイント0だと、恐怖の卒対(卒業対策)委員にならなきゃいけない。
【小川】私もポイント制は反対で、導入しませんでした。それでも、今は募集をかけると、募集人数よりも応募者が多いんです。
【田山】どうやったんですか?
【小川】毎年、改善提案を現場の各委員が出すのです。たとえば、ベルマーク切るのってどうなのとか、代わりにテトラパックをやりたいねとか。そんな工夫をしています。あとは、PTAの「見える化」ですね。年間スケジュールやテーマを開示するんです。
PTAを解体する小学校も
【田山】私がPTAにいたときも仕事の見える化をしました。それと、出前授業の導入、図書改革の3本柱で改革をしたんです。子どものためじゃないものは、全部やめようと。バレーボールやコーラスとか、P連のための会があるでしょう。そのための打ち合わせもあって、ペチャクチャやるだけで超くだらないですし(笑)。
【大西】地域によっては、PTAを解体した小学校もありますよね。
【田山】はい。PTAを解散して、全部ボランティアからなる「PTO」にした小学校がありますね。PTAは次に引き継ぐということが必要だから、来年の人ができるかどうかを考えないといけない。その点、ボランティアはできる人が好きにやればいい。
【大西】実際PTAの中には暴走する人もいますしね。だから、ウチのPTAなんて、クーデターが起きた(笑)。副会長に居座ろうとした母親に、会長のお父さんが、「あなたは去年勝手な活動をしたから今年は遠慮してください」って直言したんです。でも「モンスターA」が消えたら、「モンスターB」が生まれてしまって。
【一同】(笑)
【大西】PTAの委員であることをかさに着て、PTA室の掃除をしましょう! とか張り切る人で。こういう勘違いが生まれやすいので、私はもうPTAは解体したほうがいいと思っています。働く女性にとって弊害でしかない。
【田山】現状、子どもにお金がかけられていない。図書改革も、行政の予算がつかずに、PTAの予算でやったくらいですから。
【大西】予算があれば、ベルマークを集めなくていいですし。
【小川】私は、教育にもエビデンスを出していただきたい。例えば、タブレットを持たせることが本当にいいのか、科学的根拠に基づいたデータを開示してほしい。
【大西】私は、PTAの解体。そこまでいかなくても、女性の活躍推進をうたう総理の口からPTA活動についても大号令があってよいのではないかと思います。
▼「働く親とPTA問題」に関して
これからのPTAのあり方について下記により要望いたしますので、よろしくご配意賜りますよう、切にお願い申し上げます。
(1)子どもたちのために、もっと投資を!
働く親にとって、PTA活動の負担は非常に重いものです。女性の活躍を推進するのであれば、PTAがボランティアでやっていることを教育費でまかなえるよう、教育への投資をお願いいたします。
(2)PTA活動について、総理の大号令を期待します!
地域によってPTAのあり方にバラツキがあります。働く女性の活躍を推進していくにあたり、PTA活動についても総理の大号令をお願いいたします。
以上 第19回 座談会参加者 一同
▼フリー編集者・ライター 大塚玲子さんから
提言:PTAは任意参加だということを国がはっきりと示すべきです
子育て世帯においても共働きが主流となり、ここ数年で保護者の意識が急速に変わってきました。そんな中、PTAのあり方は昔と変わらず、働く母親たちの負担感を強めています。
例えば活動時間。専業主婦が比較的多い都市部では、いまだに平日日中の活動が多く、お勤めの母親たちを悩ませています。非効率な活動が多いのも辛いところです。かつて性別役割分業がスタンダードだった時代は、PTAが家に残された妻たちの交流の場となっていましたが、いまはそんな場を求める人は少なくなりました。母親たちも父親と同様に仕事上の人間関係を持つようになりましたし、連絡手段も豊富にあります。みんなLINEやメールで気軽に連絡を取り合っており、わざわざ集まる必要性を感じていません。
最大の問題は、活動を強制しがちな点です。もしやりたい人だけがやる形なら、平日の日中や非効率な活動でも問題ないのです。それを「6年の間に全員必ず1度は役員をやる」「この日は必ず学校に集まる」などと強制するから、みんな困ってしまうのです。
なぜそうなるのか? 原因はいくつか考えられます。(1)多くのPTAはそもそも加入を強制していること、(2)学校や教育委員会から協力を頼まれると、PTA役員である保護者も学校に子どもを預ける立場なので断れず、他の保護者に参加を強いがちなこと、(3)母親の間で参加強制圧力が働くこと、など。
教育委員会や文部科学省は、「PTAは保護者の私的な活動だから指導はできない」と言います。確かにそういう面もありますが、歴史的な背景を見れば、文科省の意図でいまのPTAの形が導かれたことは事実です。
PTAが任意で加入&活動する団体であることを、国からもはっきりと示す必要があります。