「器が小さいと思う男上司の行動」を、男上司の下で働く30代・40代の正社員、男女各500人聞いたところ、手厳しい結果に……。なぜ、そんな行動をしてしまうのか、そして部下はどう対処すべきか。上司側の心理もわかるという人材育成企業FeelWorks創業者 前川孝雄さんに分析していただきました。

※[調査概要]楽天リサーチの協力でインターネットでのアンケート調査を実施。対象は、男上司の下で働く30代・40代の正社員、男女各500人。期間は2015年12月26~27日。
※ランキングは、「かなり小さいと思う」「小さ目だと思う」人の合計が多いものから順に並べました。

1位:自分の非を認めない

イラスト=中村純司

業績が厳しく終身雇用の崩れた組織では、非を認めると未来が失われてしまう恐れから、一層非を認められないオジさんが増えています。「裏を返すと、上司に期待しすぎてはいけないということです」と前川さん。「上司が希望通りに動いてくれることがあったら、思いきり感謝して持ち上げてみるのがオススメ。部下の側からそうやって啓蒙すると、上司も『こういう対応を部下は求めているのか』と理解して変わっていくものですよ」

▼「かなり小さい」と思う人の割合
女性:83.0% 男性:64.0%

2位:成功はすべて自分の手柄にする

「組織の論理では、上司はチームとしての最終責任を負うんです。ですから部下の非は上司の非となり、部下の成功は上司の成功に。究極的には、それでいいと割り切ったほうがいい」と前川さん。あなたの成功が上司の成功となって、チーム全体の評価が上がり、上司のポジションも上がり、自分を引き立ててくれ、巡り巡って自分に返ってくるのが組織というもの。「自分のほうから変わってギブの精神になれば、先々テイクがあるのです」

▼「かなり小さい」と思う人の割合
女性 77.6% 男性 65.6%

3位:上にペコペコ、下にエラそう

イラスト=中村純司

トップダウンにあらがわない中間管理職が重宝される潮流の中で会社員人生を送ってきた上司たちには、どうしてもこういう性質を持った人が多いのが現実。「そういうものなんだと達観したうえで、上司が受けているプレッシャーを想像してみましょう」と前川さん。例えば「チームによる成果を要求されているのに、部下への態度が問題でチームに亀裂が生じている」と建設的な助言をすれば、上司は聞く耳を持つかもしれません。

▼「かなり小さい」と思う人の割合
女性 76.0% 男性 64.2%

4位:視野が狭い

「視野を広げてもらうには、上司のさらに上から働きかけてもらうのが一番」(前川さん)。女性は組織の序列を超えて人間関係をつくるのが上手なので、“偉い人”とコミュニケーションを取れるのであれば相談してみては。また、大企業になればなるほど、管理職は内向きになりがち。そういう状況を打破するために、外部の管理職研修などを利用して刺激を受けてもらうのも一案です。

▼「かなり小さい」と思う人の割合
女性 53.8% 男性 40.8%

5位:ピンチに際してあたふたする

イラスト=中村純司

「リスクを取ってきた人ならばピンチには動じないけれど、できるだけミスや非を避けて会社員人生を送ってきたような人は、ピンチに弱いんです。根本的には修羅場をくぐってもらうしかない」(前川さん)。そんなとき、部下ができることは、ピンチの渦中にある上司にそっと優しい言葉をかけ、味方になること。「ここでコミュニケーションをはかって、味方にしてしまうのです。むしろチャンスだと思って!」

▼「かなり小さい」と思う人の割合
女性 52.0% 男性 45.8%

6位:人をねたむ

男性の嫉妬は一番怖いというけれど、「男とはねたむものなんですよ……。誰が勝ったとか負けたとか言ってけんかする男の子が、そのまま50代になっているのだと思ってください」と前川さん。男性の部長や事業部長同士が口もきかないというような組織は、決して珍しくないそう。直接会話するとお互いのライバル心や嫉妬心でギクシャクしてしまうので、「コミュニケーションのバイパス、潤滑油になれるのは女性ならではです」。

▼「かなり小さい」と思う人の割合
女性 69.0% 男性 57.2%

7位:保身に走る

上司がなぜ保身に走るのか、その理由は「善しあしは別にして、特に50代以上の企業戦士は、会社の中での出世や肩書が自己の尊厳とダイレクトにつながっているからです」(前川さん)。娘の結婚式で「部長」として挨拶したいばかりに肩書にしがみつく人もいるくらいなのだとか。ポジションや年収ダウンなどの評価次第で、自己評価が痛々しいほど下がってしまう上司の心理が理解できれば、「気の毒に」と思えるようになる……かも?

▼「かなり小さい」と思う人の割合
女性 59.8% 男性 53.2%

8位:意見がブレる

「組織の上がくしゃみをすると、現場が寝込む。中間管理職もまた、上層部の意見のブレに右往左往しているのですが、ブレる人への対応は、発言などを議事録でちゃんと記録しておくことしかありません」(前川さん)。これは、プロジェクトマネジメントの基本スキル。一つ一つきちんとコンセンサスを形成し、ブレる上司を御しながら前進する技術を身につけましょう。「いつか大きなプロジェクトを動かす練習台だと思って」

▼「かなり小さい」と思う人の割合
女性 43.4% 男性 40.8%

9位:情緒不安定

突然キレる、当たり散らすなど、とかく周囲に与えるストレスが大きいタイプですが、
「それも、何かきっかけや予兆があるはず」と前川さん。部下としては上司をよく観察して、例えば「役員とそりが合わなくなってきたようだ」と察知したら、先回りをして準備しておけば「おまえ、デキるやつだな!」と、途端に信頼のあつい部下に格上げです。「ダメ上司にあたったときこそ、人間力を磨くチャンスだと思って対応しましょう」

▼「かなり小さい」と思う人の割合
女性 49.8% 男性 44.4%

10位:周囲からの批判に弱い

イラスト=中村純司

波風を立てずに順調に来てしまったタイプに多いのが、周囲からの批判に弱い上司。「あるベテラン人事部長さんの言葉ですが、管理職の辞令を出した段階では、まだ管理職ではないと。上司も、組織人としては成長の途中なんです。トントン拍子で出世した人はだいたい挫折するんですよ。部下がついてこないから。そこから修業が始まるんです」(前川さん)。上司も人間、いっそお客さんだと思えば、腹も立たなくなるかもしれません。

▼「かなり小さい」と思う人の割合
女性 49.6% 男性 39.0%

前川孝雄
人材育成企業FeelWorks創業者。「上司力研修」、社内報編集などで250社以上の「人が育つ現場づくり」を支援。『上司の9割は部下の成長に無関心』『ダイバーシティの教科書』など著書多数。青山学院大学兼任講師。