話し上手、PR上手、段取り上手で、イザというときの対応もバッチリ! 仕事ができる印象のある広報の皆さんが日々心がけていることとは? どの部署でも活かせる知恵満載です。

「取り上げて!」ではなく好きになってもらうところからスタート
●日本ロレアル プロフェッショナル プロダクツ事業本部 広報本部 部長 安尾美由紀さん

(左)日本ロレアル プロフェッショナル プロダクツ事業本部 広報本部 部長 安尾美由紀さん(右上)板井麻衣子さんを招いて顧客のサロンでトークショーを行うことも。(右下)ランチョンは「行ってみたいけどなかなか行けない」クラスの会場にこだわる。

すてきだなと思う方には私が担当するブランドのヘアケアやスキンケア製品を贈り、お礼とともに、よかったらお試しいただきたいこと、機会があればお会いしたいことを手紙で伝えることがあります。お会いしたからといって、すぐにビジネスとして何か成そうとは思っていないのですが、結果的につながっていくことはよくあります。メディアに対しても、「製品を取り上げてもらいたい!」と売り込むよりも、「まず好きになってもらいたい」という気持ちが一番。製品のファンになってもらえれば、何かの機会に取り上げていただけるかもしれないですから。

今では大きな製品発表会を開けるようになりましたが、以前はよくプレスランチョンを行っていました。当時の、私が担当する美容室流通ブランドは、まだ無名。プレスの方々は私たちからすると、モテモテの女性と同じで、数々の魅力的なブランドから招待を受けています。どうしたら選んでもらえるのかと考えたとき、「このブランドも安尾さんもよく知らないけど、このレストランには行ってみたい」という理由でもいいから来てほしいと思ったんです。来ていただけなかったら、製品の良さをPRすることすらできません。なので、会場も千円や2千円で行けるレストランは選ばないようにしました。最初は「ここで食べさせてもらえたらラッキー」で構わない。結果的に当社の製品を好きになってもらえたらもうけものです(笑)。

売り込み以上に情報提供を心がけます
●ライフネット生命保険 営業本部 マーケティング部 広報グループ グループリーダー 関谷 誠さん

(左)ロゴ入りTシャツを着用し、最寄り駅でチラシ配りを行うことも。(右)ライフネット生命保険 営業本部 マーケティング部 広報グループ グループリーダー 関谷 誠さん

メディアは、相当のことがない限り、1社に偏った情報は取り上げづらいですよね。当社の情報を取り上げてもらう場合でも、なるべくバランスを意識した情報提供を心がけています。

例えば、最近始まったマイナス金利政策は保険業界にも影響が大きく、貯蓄性商品が販売停止になったりしています。お客さまにも、いきなり「当社への影響は、これこれこうですからご安心ください」ではなくて、保険業界の状況を説明したうえで、当社における影響を説明しないときちんと伝わりません。メディアも本当に知りたいのは、恐らく「保険業界はどうなの?」ということで、当社の情報の1つ上にあるところ。そのあたりの情報もなるべく集めて対応するように心がけています。

メディア、一般を問わず、保険ってわかりづらいという意識を持っている方も少なくないと思いますが、積極的に情報を出すことで、そのイメージを打破したいんです。良いことも悪いことも包み隠さず情報発信し続けることで、少しでも生命保険に興味・関心を持ってもらえるようになればと思っています。

お客さまにじかに理念を伝えます
●マツダ 広報本部 国内広報部 国内商品グループ 新田 梢さん

(左)マツダ 広報本部 国内広報部 国内商品グループ 新田 梢さん(右)初めて書いたリリース(右)は言い切り調だった。

この10年で、当社のプレスリリースは大きく変わりました。10年前はリリースというとプレス向けに作成するもので、ニュース性の高い内容から順番に事実だけを正確にきちんと書くという形がルールでした。

ところが、近ごろでは、お客さまがホームページから直接リリースをチェックすることができますし、リリースをそのまま転載するウェブサイトも増えてきました。プレスリリースもそうした状況にあわせて変化し、「マツダからお客さまに向けてのメッセージ」という形で、文体も「です・ます」調に変わっています。お客さま向けのイベント募集なども、リリースとして配信するようになりました。

当社がこだわっているポイントは、マツダの「理念」をメッセージとして盛り込むこと。なぜマツダがこれを造ったのか? なぜこのイベントを行うのか? その製品によってお客さまのカーライフにどんな影響があるのか? そうした強いメッセージがお客さまのところにダイレクトに届くように心がけています。

お客さま向けにメッセージを発信するようになった一方、記者の方々にとっては、パッと見ただけではニュースのポイントがわかりにくいリリースになっていることも事実。そのため、広報担当者は記者クラブ等に足を運び、個別にポイントを説明するなどしてフォローしています。

安尾美由紀
日本ロレアル プロフェッショナル プロダクツ事業本部 広報本部 部長。1967年生まれ。明治学院大学卒業後、91年、コーセー入社。美容部員を経験後、美容部員教育部。96年日本ロレアルに転籍入社し、98年より広報。7つの美容室流通ブランドと取引美容室のPR、社会貢献を担当。1児の母。
関谷 誠
ライフネット生命保険 営業本部 マーケティング部 広報グループ グループリーダー。1979年生まれ。レストランチェーンでブライダル事業などを担当。広告代理店へ転職し、企業に対するデジタルマーケティング戦略の企画・提案に従事。2008年ライフネット生命保険にウェブプロモーション担当として入社。
新田 梢
マツダ 広報本部 国内広報部 国内商品グループ。1982年生まれ。大学卒業後、マツダに入社。広島本社で広報のキャリアをスタート。3年間広報に携わった後、当時新設されたCSR・環境部の立ち上げメンバーに。2年後に東京へ異動。企業広報を経て現在は商品広報を担当。