鋭い人間観察力がさえ渡る、5人の働きウーマンが集結。数々の男性上司のもとで働いた経験から、「器の大きさ」を見抜き、対処するワザを編み出していった彼女たち。その奥義を余すところなく語り尽くします。
●外資系金融会社 アシスタントマネジャー 宇野絵美さん(39歳/仮名)
●専門商社 事務 粟野紀子さん(45歳/仮名)
●金融関連企業 法人営業 村松里子さん(34歳/仮名)
●物流サービス企業 広報 佐藤奈美さん(32歳/仮名)
コモノ上司は飲み会のネタにされている
【梅沢】器の大きい・小さいは、個人の資質かもしれないけれど、まだまだ会社って男性社会。「ちっちぇな」ってあきれちゃうダメ上司のサンプルは、やっぱり男性のほうが多いですよね。
【粟野】絶対どこの会社にもいますよね、ちょっとおかしな、イタい上司……。
【宇野】いるいる! 決断力のないおじさん上司、のさばってますよ。
【佐藤】わたし、基本的に毎日飲みに行くんですけど、「器が小さい上司シリーズ」は、盛り上がる話題のひとつ。酒の肴(さかな)だと思えば、上司の小さい行動にもまったくイライラしない。むしろおもしろいなーと思って観察しちゃう。
【村松】シリーズ化してるんだ(笑)。
【佐藤】そうそう、タイプ別に分類して、ジャンル名をつけたりしてる。たとえば、「こじらせチビ」ってカテゴライズした人たちがいるんだけど、これは身長が低いことをコンプレックスに思いすぎてる人。男性って「高身長=モテる」だったりするじゃないですか。だから、そこを気にしてる人って、どうにか自分を大きく見せようと必死。
【宇野】あー、うちの会社にもいる!
【佐藤】でも、コンプレックスが根深すぎて、本当は女性が怖い。女子にモテないとか、バカにされるとか、そういう嫌な目に遭ってきたせいで、ひねくれまくっちゃってるんです。それで、気の弱い同類の若手男子をはけ口にするっていうのが、共通する傾向。こじらせチビな上司にねちねち怒られてる若手男子を見ると、「おまえはねじれちゃダメだぞ」って思います。
【梅沢】自分の力を誇示できる相手めがけてストレスを発散させるって、人としてもかなり残念……。
【佐藤】女性ってこういうこじらせ方はしないですよね。
【梅沢】確かに、男性特有の行動かも。でも、コンプレックスって捉え方ひとつ。以前勤めていた会社には、「ちっちゃいおじさん」って呼ばれている方がいましたけれど、彼はそれを自分の強みにしていました。社内外の人から慕われて、トップセールスでガンガン成績も上げていましたね。
【佐藤】突き抜けて三枚目になれると強いんですよね。
心にダメージを与える上司にご用心!
【宇野】酒の肴にして笑えたらいいんだけど、深刻な悩みになることもありますよね。実は私、それで休職したことがあるんです……。
【全員】それは……!
【宇野】ずっとブツブツ愚痴を言い続ける上司だったんです。それを聞かされ続けたら、ノイローゼ気味になっちゃって。さらに上の上司にも訴えたんですけれど、そこまで切羽詰まっているとは思わなかったみたいで、何もしてくれなかった。それである日、会社に行けなくなってしまったんです。
【粟野】私も、職場でのパワハラに悩んだことがあるので、その気持ちわかります。パワハラ男は上司というより同僚だったんですが、私よりも社歴が長いから、自分のほうが上だと思っていたみたい。彼の意にそぐわないことを言うと、いきなり大声で怒鳴ったりするから、本当に恐ろしかった……。男のプライドってこれなんだ! と。
【村松】周りは見て見ぬふり?
【粟野】上に訴えても、「コミュニケーション不足だろう」って軽く片づけられて、悔しかったですね。その後、上司が異動し、パワハラ男ともきっちり業務を分けてもらえたのでよかったんですが……。あのまま続いていたら、私も会社に行けなくなっていたかも。
【佐藤】実害が出る場合は、ガマンしないで上層部や人事に直訴しないと、ですね。危ない……!
【村松】男性の器っていろいろなところでわかりますよね。本当にささいな言動にも、器の大小がチラリと見え隠れする。たとえば誰と同期なのかを聞いたとき、たくさんいる中から自分より役職が下の人の名前を挙げる人。男性って、同期の中でどれだけ早く出世するかを気にしている人が多いから、そういうところでも「俺のほうが上だぞ」ってさりげなくアピールしてるんだと思う。
【梅沢】さっきのパワハラ男も、社歴の長さで「オレのほうがエラい」って勘違いしていましたよね。役職とか社歴をカサに着るタイプですね。
【佐藤】品格がない、っていうのも、女性的にはポイント低いですよね。海外出張でマイルをためまくってる役員がいるんですけれど、そのため方がまたセコくて。どの航空会社でどういうルートで行けばより効率よくマイルをためられるか、エクセルに独自の計算式をつくって入力してるの。しかも、それを得意げに見せてくるから笑える。
【村松】自慢しちゃうんだ……!
【佐藤】社長秘書に、「これをうまく使えば、お前の株も上がるから」なんて言って、お手製のエクセルをちらつかせたりして。本当におもしろすぎるんですよね。あなたの頑張るところ、そこじゃないでしょ、って。
【梅沢】そこまでいくと、すごい(笑)。
【佐藤】その人、本当にどケチで、部内の飲み会でもかっちり割り勘。部下をねぎらうなんて発想はまるでない。でも自分は、ネイルサロンに通って、爪までピカピカなんですよ!
【村松】……美意識はすごい。
【宇野】他人にはビタ一文使いたくないっていうことですね。徹底してる!
自己アピールに執着する男は嫌われる
【佐藤】自分をよく見せたいっていう、パフォーマンス型も多いですよね。私の上司はまさにソレ。経営会議の場に、自分の部署はこんなに仕事してますよーっていうアピール資料を出したりするんです。
【粟野】その資料はもちろん、部下に作らせるわけですよね。
【佐藤】そう。そんな報告書からは一銭の利益も生まれないのに、見栄えにも超こだわって、やり直しさせられることも。時間のムダ! 正直、面倒です。
【宇野】うちの会社には、部下に送るメールのBCCに役員を入れるコモノ上司がいます。「私は的確に部下を指導しています」っていうアピールと、「こいつ、こんなことやらかしましたよ」っていうチクリ。私は、役員付きのアシスタントでメールもすべて見られるのでわかったんですけど……。震えますよね。
【村松】気持ち悪すぎる!
【梅沢】パフォーマンスもいいけれど、上に立つ人には、行動力、判断力がないと。前の会社の社長で、「僕は君たちを信じている、君たちならきっと業績を上げてくれる」って微動だにしない人がいました。なんとなく響きのいい言葉だけど、結局、全部他人任せってことでしょ? 部下は内心、「おまえもちょっとは動かんかい!」って毒づいていた(笑)。
【宇野】そういう人って、何か困った事態が発生すると「聞いてない」「どうするつもりだ!」とかって言い出すんですよね。
【粟野】出ました、最悪発言。責任とりたくない、自分は関係ないって、一目散に逃げちゃうのは、コモノの極み。完全に誰からも信頼されないですよね。
【村松】以前は、上司の言うことでも納得できないことがあれば、正面からぶつかっていました。でも、それで上司が変わるわけではないし、ただ疲れとストレスがたまるばかり。いいことないなって気づきました。
【宇野】相手のペースに巻き込まれちゃうと、しんどいですよね。
【村松】そうなんです、私がガマンならないのは、仕事をしない人。そういう人って、自分抜きで物事が進んでいても案外気にしない。だから、「これでいきます」ってどんどん進めるようにしたら、ムダな衝突がなくなりました。
【宇野】私も同じやり方です。「ここだけお願いします」って、その人ができるところも残しておけば、彼のメンツも保てる。黒子に徹して、上司のプライドを傷つけない配慮をすることで、仕事はかなりスムーズに進みます。
【梅沢】男性を動かすには、「プライドの壁」をどう乗り越えるかが大事なんですね。
【宇野】やっぱり「男は女より上なんだ」っていう意識はしつこいから(笑)。
【梅沢】受け身の体勢では、コモノ上司に振り回されるだけ。より上の上司、他部署、同僚、縦・横・斜めの関係をうまく使いながら、先手をとる!
【宇野】トレーニングですね。むしろ、自分の実力はつきますよ。見る人は見ていますから、黒子の期間も絶対にムダにはならないはず。