仕事、家庭生活、お金、親子関係……、さまざまなお悩みに、110冊以上の著作を誇る作家の本田健さんと、PRESIDENT WOMAN Onlineの連載「WOMAN千夜一夜物語」でおなじみのコラムニスト河崎環さんが回答する人生相談、今回は「ミスをなすりつける上司」に関するご相談です。

【今回のご相談】
上司が自分のミスを部下になすりつけてきます。例えば、自分が聞き漏らしたのに「部下の○○から報告がなかった」と言ったり、自分が資料作成を誤ったのに「部下の××が作った元のデータに誤りがあった」と言ったりします。このような場合、「自分のミスではない」と無実の罪であることを明らかにした方がよいのでしょうか。それとも黙っていることで上司に恩を売った方がよいのでしょうか。
どこにでもいる自分のミスを人のせいにする人。相手が職場の上司の場合は、対応がより一層悩ましくなります。(イラスト=伊野孝行)

相手の言い訳を先読みしてフォロー

【河崎環さんの回答】

やるべきことは、両方です。上司のミスを上司に直接気づかせ、対外的には一切を自分がかぶっておく。すると直接の指摘で気まずい思いをした上司は仕事上の正確さを期するよう気をつけ始めるとともに、あなたには頭が上がりません。うわ、一挙両得ではありませんか!

自分のミスをすぐ部下になすりつける上司というのは、プライドが高い割に自信がないのです。部下を「ダメなヤツだ」ということで自分の立場を持ち上げる人格的な癖があるわけで、部下としてはそれにいちいち怒っていると諍いばかりで前進しません。だって、上司人生何十年とかけてその人格を築いてしまったのですから。こういうタイプは、他人の前で間違いを指摘されるとプライドが傷つけられてむくれるので、公正にやってしまうと逆効果。「ま~たやってるわ、小物だなぁ~」と、その小物ぶりも含めてサポートする方針へ変更しましょう。

濡れ衣を着せてきたら見過ごさず、すかさず本人に向かって「その件は○月○日、○○の件をご報告したメールに付記しておりました。お忙しくていらっしゃるので紛れてしまったのかもしれませんね」と、キッパリと事実を指摘しつつ、相手の言い訳を先読みしてフォローします。メールは他のメンバーもCCに入れて、証拠を残しておくよう心がけます。すると、上司の他責的なコミュニケーションを封じるだけでなく、本人に気付かせることができるのです。「そうか、部下が細かく報告しているのに、自分が整理できていないのを棚上げして文句を言ったら、まずいよなぁ」。

本人がそこまで反省をするタイプかどうかはともかく、上司自身の事実の誤認を知らしめることはできるでしょう。そして心理的には「お忙しいから仕方ないですよね。分からないことがあればいつでもお尋ねください」と、柔らかくサポート。角を立てずに、上司との関係の力学を調整できますよ。

女性回答者プロフィール:河崎環(かわさき・たまき)
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。

恩は売れない。自衛手段を講じて

【本田健さんの回答】

どんな職場にも、ちょっと変わった人、責任感を持って仕事ができない人はいます。要は、その人たちとどういう距離感を取るかだと思います。その人が、法的に問題のあることをやるような人なのか、人格的に問題があるのか、単に仕事ができないのかでも変わってきます。

もし、その人に法的な問題がありそうなら、自分の立場をはっきりさせておかないと、とばっちりを食う可能性があります。ですので、メールなどでやりとりの証拠をしっかりと取っておく必要があるでしょう。

人格に問題があるのなら、その人の上司も、部下もよく分かっているはずです。こういう人には、根に持つタイプも多いので、ちょっと気を付けましょう。中には、仕事ができる人もいるので、どうつきあうのかがなかなか難しいものがあります。

特に、人を操作する達人もいるので、自分のキャリアを邪魔されないように、その人の上司とも人間関係を築いておくことです。ふだんからいい関係を持っておくと、何かあったときに、あなたには問題がないと考えてもらえる可能性が高くなります。

単に仕事ができない人の場合は、適当な距離を取っておくと、そのうちその人はいなくなります。「自分は悪くない」と言い張る人には、事実を突きつけても、逆恨みされたり、「生意気な奴だな」と思われたりするだけで損です。黙っていても、恩を売ったことにはならないでしょう。なぜなら、そのことに気が付かないぐらい鈍感だからです(笑)。

自分の人間的器を大きくする練習だと思って、上手にさらっと流しましょう。

男性回答者プロフィール:本田健(ほんだ・けん)
作家。神戸生まれ。経営コンサルタント、投資家を経て、29歳で育児セミリタイヤ生活に入る。4年の育児生活中に作家になるビジョンを得て、執筆活動をスタートする。「お金と幸せ」をテーマにした1000人規模の講演会、セミナーを全国で開催。インターネットラジオ「本田健の人生相談~Dear Ken~」は2200万ダウンロードを記録。
代表作『ユダヤ人大富豪の教え』(大和書房刊)など、これまでに著書は110冊以上、累計発行部数は700万部を突破。
【本田 健 公式サイト】http://www.aiueoffice.com/