将来のために、お金を増やしたい。でも、手元の資金は多くはないし、仕事が忙しくて毎日株価を追ってもいられない――そんな“普通”のビジネスパーソンが資産を作ろうとするとき、しなければならない3つのこととは?
毎日普通に生活しながら資産を作っていくためには?
「私たち生活者が将来の経済的自立を実現するためには、預貯金だけではダメで投資が不可欠であり、そして万人に投資を最も合理的な仕組みとして提供してくれるのが投資信託である」さらに、「真っ当な投資信託を見つけるために、いきなり金融機関へ相談に行って言われるがままにおススメの商品を買うなど、他人任せはダメ!」と、前回はお伝えしました。
そこで自ら考え行動する、能動的で自立した投資家になるために、まずは“生活者投資家が資産形成を叶えるための3原則”についてお話ししましょう。
1つめは、これまで何度もお伝えしてきた「長期」です。すぐにもうかるチャンスを求めて相場の値動きを追いかけるのは“投機”です。一方、10年、20年、30年とたっぷり時間を味方につけて、お金を経済活動の中へ働きに出し、経済成長を養分として、お金をゆっくりと育てていくのが“長期投資”でしたね。
2つめは「分散」です。「卵を1つのカゴに盛るな」という格言をご存じですか? 5つの卵をひとまとめにして持っていると、うっかり手を滑らせた時に全部割れてしまいます。これを、5つに分けておけば、1つを落としてしまっても他の4つは無事でいられます。これが「分散」の効果です。分散投資とは、1つの銘柄や単一の市場だけに資金を集中させず、多くの銘柄やさまざまな市場にお金を分ける投資方法のことを言い、分散した資産の集合体をポートフォリオと呼びます。
1つの対象に集中して投資を行った場合、その値動きがズバリ当たれば一発大もうけもあり得ますが、逆の結果も考えられます。投資対象を複数に分けることは、大やけどを防ぐ、即ちリスクを抑える効用があるのです。この「長期」と「分散」を併せた「長期分散投資」が真っ当な資産形成の大原則です。また少額でも分散ポートフォリオを実現できるのが、投資信託の大きなメリットでもあります。
「ツミタテ」のメリットは心の安寧が得られること
3つめは「ツミタテ」です。これは積立投資のことで、投資するタイミングを集中させずに分けて買う、時間分散の効用を得るものです。いっぺんにまとまったお金で投資を始めると、人はどうなると思いますか? 誰でも、買った価格が頭にこびりついて、気になって仕方なくなります。そして、翌日から相場が下がろうものなら動揺し、怖くなりすぐに売却して自ら損を確定させてしまいがちです。
「ツミタテ」は、こうした人間の弱さを克服してくれる、いわば心の良薬としての役割を果してくれます。毎月1万円、2万円などと決まった金額を、一定のリズムで買い続けていくのが積立投資です。これなら怖くありませんし、相場が下がっても次はその下がった安い値段で買えるので、むしろうれしくなるものです。
まとまったお金がなくても気軽に投資が始められますし、ずっと「ツミタテ」を続けているうちに、いちいち買い値を気にする必要がなくなっていきます。こうした心の安寧は、長期投資を続ける上でとても大事なことなのです。
「長期」「分散」「ツミタテ」の3原則を、将来への財産作りのための行動規範として柱に据えましょう。
そして次に学ぶべきは“具体的な長期資産育成にふさわしい投資信託選びの5条件”です。
5つの条件とは、1.無期限の投資信託であること、2.分配回数が年1回で、かつ再投資型であること、3.販売手数料がノーロードで、信託報酬もリーズナブルな水準のもの、4.純資産残高が少なくとも30億円以上のもの、5安定した資金流入が継続しているもの。
ちょっと難しい表現でのポイント羅列になりましたが、6000本近くある公募投資信託をこの5条件でスクリーニングすると、数十本程度に絞り込まれるはずです。
次回はなぜこの5条件が重要なのか、その理由を明らかにしていきます。その上で、世界中に分散したポートフォリオである「長期国際分散投資」の合理的有効性について分かりやすく解説しましょう。
ここまで来れば、スマートでカッコいい長期投資家デビューはもう目の前です。
セゾン投信株式会社 代表取締役社長
1987年明治大学商学部卒業後、現在の株式会社クレディセゾン入社。セゾングループで投資顧問事業を立ち上げ、海外契約資産などの運用アドバイスを手がける。その後、株式会社クレディセゾン インベストメント事業部長を経て2006年に株式会社セゾン投信を設立、2007年4月より現職。米バンガード・グループとの提携を実現し、現在2本の長期投資型ファンドを設定、販売会社を介さず資産形成世代を中心に直接販売を行っている。セゾン文化財団理事。NPO法人元気な日本をつくる会理事。著書に『投資信託はこうして買いなさい』(ダイヤモンド社)、『預金バカ』(講談社)など。