仕事、家庭生活、お金、親子関係……、さまざまなお悩みに、110冊以上の著作を誇る作家の本田健さんと、PRESIDENT WOMAN Onlineの連載「WOMAN千夜一夜物語」でおなじみのコラムニスト河崎環さんが回答する人生相談、今回は「家庭での料理に関する上司からのアドバイス」についてご相談です。
30代中盤の会社員です。昨年、念願の結婚を果たしました。先日、会社の飲み会で、男性上司2人から「旦那さんにおいしいご飯を作ってあげなさい」と言われました。私は残業が多く、帰宅時刻はたいてい23時を回るため、平日は夕食を作れません。家庭の心配をしてくれるのはうれしいのですが、仕事と家庭を天秤に掛けて仕事を優先させているのに……と思うとちょっと不満です。こういう時は何と返答すべきでしょうか。ちなみに上司が妻の愛情を感じる料理は、揚げ物(油の処理に手間がかかるから)と焼き魚(誰でもできるが、おいしく焼くのが難しいから)だそうです。私がよく作るのは、麻婆豆腐、かに玉、チキンのトマト煮など、極力包丁を使わないで済むものです。
あなたが満足させなければならない相手は誰?
【本田健さんの回答】
まず、結婚おめでとうございます! まだ新婚さんということは、幸せな関係が続いていると思います。
周りの人は、そんなに考えずに、適当に意見を言っているのではないでしょうか。そんなコメントに対して、カリカリすることはありません。相手に対して皮肉を言いたければ、「残業をなくしてくれたら、ご飯を作ってあげられていいんですけど」と言うのもありでしょう。
でも、あなたが大人の対応をしたければ、「そうですね~。でも、料理が得意じゃなくて」と言えばいいのです。すると、「いや、やっぱり男は、手料理を作ってくれたらうれしいよ」という、適当なアドバイスが返ってくるかもしれません。そういうときは、「どんな料理を作ってあげればいいんですか?」と聞いてあげたら、先輩面して、とうとうと語り始めるはずです。
しかし、それにあなたが付き合う必要はありません。結婚生活のカウンセリングを受けているわけではないので、適当に聞き流せばいいのです。
あなたが満足させなければいけなければいけないのは、旦那さんだけです。どういう料理を食べたいのか、あるいは一緒に作りたいのか、聞いてみましょう。すると、あなたが思っている以上に、気にしていないかもしれません。ひょっとしたら、もっと料理をして欲しいと考えているかもしれません。いずれにしても、お互いにとってより幸せな関係が築けると思います。
作家。神戸生まれ。経営コンサルタント、投資家を経て、29歳で育児セミリタイヤ生活に入る。4年の育児生活中に作家になるビジョンを得て、執筆活動をスタートする。「お金と幸せ」をテーマにした1000人規模の講演会、セミナーを全国で開催。インターネットラジオ「本田健の人生相談~Dear Ken~」は2200万ダウンロードを記録。
代表作『ユダヤ人大富豪の教え』(大和書房刊)など、これまでに著書は110冊以上、累計発行部数は680万部を突破。
【本田 健 公式サイト】http://www.aiueoffice.com/
現代を生きる共働き夫婦の模範解答は……
【河崎環さんの回答】
まったく、世間のおじさんって口下手でカワイイ生き物ですねぇ。おじさんたちが言いたかったのは「うちに帰りたい、奥さんと一緒にいたいと思えるような居場所づくりをしてあげてね」ということなのですよ。たぶん、自分の(家庭に居場所がなくて辛い)経験を経て、心からそう言っているんだと思います。おいしいご飯があれば、それだけでおうちに帰ろうと思うよ、それをきっかけに会話だってできるよ、関係が和むんだよ、そういうことなんですよね。
で、そのおいしいご飯なるものは“奥さん”が“毎晩”、“手作り”せにゃならんものか? というのが、現代の共働き夫婦の議論の焦点となるわけです。家においしいご飯があればいいわけでしょう、自分もホッとしますよね。作るのが妻じゃなくてもいいし、毎晩じゃなくてもいいし(外食の日とか作り置きとか)、手作りじゃなくても大丈夫ですよね(お惣菜デリを活用するとか)。
長い間、子育て関連の分野で相談原稿も書いてきたのですが、これは新米お母さんが子供の離乳食やヘルシーな食生活に悩むのと同じ構図なんです。相手のことを思って、おいしいものを上手につくって食べさせてあげたい。それがいいのはわかっている。でも苦手だったり時間的な余裕がなかったりで、「どうしたらいいですか?」。
私はいつもこう答えます。「ものを見るスパンを1週間にして考えましょう」。毎日完璧な食事を提供するプレッシャーに苦しむくらいなら、3日や1週間で帳尻を合わせましょう、平日は忙しいのなら、休日にいいものを作って食べて、“プラマイ”がプラスになればそれでいいじゃない、ということです。
揚げ物とか焼き魚とか、専業主婦だっていまどきそんなの毎日作らないです。キッチン汚れるし。そういうのは休日の楽しみに残しておきましょうよ。平日は、とりあえずコンビニ弁当じゃなきゃいいや、いやコンビニ弁当だっていいよね、というレベルで発想するくらいじゃなきゃ、自分も相手も持ちません。口下手なおじさん上司の温かい(少々お節介な)助言には、「平日は忙しくて手を抜くことも多くなってしまうんですが、休日は頑張ります(ハート)」でオッケー、です。
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。