学校に校則があるように、会社にも社則や、社則とまではいかなくても暗黙のルールといったものが存在します。少し前のことですが、書類への捺印時に、「印鑑を左に傾ける」というある金融系企業のルールが話題になりました。なぜ、斜めに捺すかというと、「部下が上司に対して、お辞儀しているように見せる」という意図がこめられているのだそう。なんとも特殊なルールだと感じるかもしれませんが、他にも独自のルールを設けている会社があるはず。そこで今回、働く女性たちに「私の職場の変わったルール」をテーマとして、話を聞きました。
Case.1 昼休みを除く外出は許可制
「昼休み以外の外出時には『外出届』という書類に記入し、上司に捺印してもらい、総務に提出することが義務付けられています。記入事項は外出時間や理由、目的など。例えば『業務で必要な食材を購入するため、スーパーで買い物』といった、仕事に関わる内容でも無断外出は許されません。転職して初めて知ったルールですが、明らかに変だと思います。社員を閉じ込めたがる会社なのでしょう」(27歳/食品)
厳しい学校を連想させるルールです。どんな細かい用事であろうと、昼休み以外であれば書類提出・承認はマストという決め事は、書類を受け取る総務も、捺印する上司もかなり面倒くさいのではないでしょうか。
Case.2 いただきもののスイーツは年功序列で選ぶ
「お土産や差し入れとしていただいたスイーツは、部署内で立場が上の人からもしくは年功序列で、好きなものを選択して取っていくと、決められています。先輩が選ばない限り、後輩は自分の分を選べないので、先輩が選び忘れてしまうと、後輩はいつまで経ってもありつけない、なんてことはザラ。『先に選んでいいよ』と言ってくれる優しい先輩もいましたが、ほかの先輩の目もあるのでけっこう気を遣いましたね」(32歳/サービス業)
コーヒーブレイクのお供にスイーツを食べるだけで、ここまで慎重に行動しなければならないとは! 特にルールを設けなくても、役職者や年配の人に勧めた後に、残りは席にいる人から順に回して、と自然になりそうですが……。賞味期限切れにも気遣いが必要です。
Case.3 社長の誕生日には部署ごとに祝福する
「社長の誕生日には部署ごとにプレゼントを用意します。当日は、その部署全員で社長をぐるりと取り囲み、『おめでとうございます!』と声を合わせて唱えます。その後、新入社員がプレゼントを恭しく手渡して、周囲は拍手。卒業証書の授受を思い出させます。バースデーソングも歌います。茶番感がすごいです」(25歳/IT)
寂しがり屋もしくはお祝いされたい願望の強い社長なのでしょうか。他部署とプレゼントが重複していないか、社長の好みのものが選べているかなど、気遣いも必要とされますね。部長の調整力や情報収集力が試されていそうです。
Case.4 上司宛のメールでは役職&様を付ける
「上司宛のメールに役職に加えて“様”を付けて送らないと怒られます。“さん付け”で送ろうものなら、返信をしないことで、怒っていると暗にアピールする上司もいるほど。他の会社に勤める友達が、上司に対して「◯◯さん」とラフなメールを送っていると聞いてびっくりしました」(27歳/メーカー)
カジュアルな雰囲気の企業では、「◯◯さん」と“さん付け”でメールを書き出すことも珍しくはありません。社風の違いですので、“役職&様付け”も会社のルールとして分からなくはありませんが、書き損じた際に、「返信しないことで、怒っているアピール」とは……。業務が滞らないのか心配になります。
Case.5 人事が“大安”に発令される
「会社の人事が発令されるのは大安の日と決まっています。毎年、人事異動の季節には、大安の日が近づくとそわそわしている人が社内各所で見受けられます」(40歳/マスコミ)
ビジネスとは“商売”ですから、中には“験担ぎ”を重視する社風の企業もありますよね。辞令を受ける側には、“大安気分でウキウキ”の人もいれば、“仏滅気分でどんより”の人もいそうです。
社外の人から見ると、中には「?」と思ってしまうようなルールもありますが、その会社に属している限りはルールを守って過ごす方が無難。とはいえ、時代錯誤であったり、業務上不都合が起こったりするようなルールならば、賛同者を募って少しずつ変えていくのも、働きやすい環境をつくるための賢い方法だといえるでしょう。その中には、会社の利益につながる“改革”も含まれているのではないでしょうか。
1986年生まれ。ライター、編集者。楽天、リアルワールドを経てフリーに。IT、マーケティングなどに関する記事が多め。