オシャレな国、日本で製品をブラッシュアップ

私がこのBMW Motorrad(二輪車生産・販売部門)に入社したのは、いまから2年ほど前のことになります。ヨーロッパの二輪メーカーではもちろん、たくさんの女性が働いていますが、マーケティング部のマネジャークラスを務めるのは初めてです。

BMW Motorradドイツ本社 マーケティング部長 サンドラ・エイムさん

仕事の内容はマーケティングとブランディングの全ての統括。CRM(Customer Relationship Management=顧客関係管理)、SNS、プロダクトの開発にも携わっています。

今回、来日したのはG310Rという中型バイクのプロモーションと、東京で開かれるワークショップに参加するためでした。

日本は私たちにとって、とてもファッション性の高い国だという認識があるんです。ワークショップでは特に女性に集まってもらい、より乗りやすいフィーリングのバイクにするためには何が必要かの意見交換を行いました。日本からの意見を取り入れることで、バイクをより良くしていくことが目的です。

女性のライフスタイルに溶け込むバイクを

いま私たちの会社は、大きなターニングポイントを迎えています。会社が大きく成長をしている最中で、新しい製品が次々に開発されているからです。その中でさらなる成長をするためには、これまでBMWのイメージだった大型バイクだけではなく、300ccクラスの中型バイクにも力を入れていかなければなりません。

そこでマーケティングでは従来通りに製品の技術的な部分を重視しながら、ライフスタイルに溶け込むバイクの魅力を、これまで以上に提案していきたいと考えています。

バイクが好きな特定の人たちへの発信ではなく、もっと大きなグループへいかに製品の魅力を伝えること。例えば、いまはバイクのことをあまり知らない人、違う年齢層の人などに向けて、どんなメッセージを送り出していくか。今回のワークショップも、そうした大きな流れの中の一つだと言えるでしょう。

「これ」を選ぶ消費者の心理に魅せられて

さて、私がBMWに入社することになったのは、BMW Motorrad(モトラッド)がこれまでの自分の経験が最も活かせる職場だと感じたからでした。私はミュンヘンのブランディングの会社に10年ほど在籍し、車やバイクに限らず様々な業種のクライアントに携わってきました。

マーケティングやブランディングという仕事は業界が違っても課題は同じで、どのようにしてクライアントのサービスや製品を特別なものに見せるかが、課せられてきた役割でした。

例えば、同じ機能を持つAとBの商品が目の前にあるとき、なぜある人はAを選び、別のある人はBを選ぶのか。あるいは、なぜスターバックスのコーヒーに対して、人は数百円というお金を払うのか。それは、それぞれの商品に消費者の心に訴えかける何かがあるからです。

その「何か」を考えることの面白さを、私は仕事そのものの中から学んで来たように感じています。製品の機能ではなく、その人の内面から出てくる「好き」という理由や愛情を、マーケティングやブランディングによって作り上げていく。それは今では自分にとって最も刺激的な仕事だと思っています。

サンドラ・エイム
ドイツ生まれ。大学で経営学を専攻した後、各種ブランドのブランドマネジメントおよび、ブランド構築を専門に活躍。自動車、自転車、レジャー、スポーツ、ファッション、金融など様々な産業でマーケティングを経験後、2014年にBMW Motorradに転職し、現職に就く。