仕事、家庭生活、お金、親子関係……、さまざまなお悩みに、100冊以上の著作を誇る作家の本田健さんと、PRESIDENT WOMAN Onlineの連載「WOMAN千夜一夜物語」でおなじみのコラムニスト河崎環さんが回答する人生相談、今回は「尊敬できない上司」についてのご相談です。

【今回のご相談】
上司の能力が低く、かつ人格的にも問題があります。私は「人間関係とは、互いが互いに敬意を持つところから始まる」と考えているため、尊敬できない上司に意見伺いをしたり、その言葉に耳を傾けたりすることに強いストレスを感じます。上司が尊敬できない人物である場合、部下としてどのように受け止め、振る舞えばいいのでしょうか。
「嫌なヤツだけど、仕事はできる」「仕事はダメだけど、人がいい」、どちらの場合も一緒にやっていけそうですが、仕事もダメ、人間性もダメとなると……。(イラスト=伊野孝行)

上司は気付いている。問われるのはあなたの「人間力」

【本田健さんの回答】

上司の能力が低く、人格的にも問題がある場合、あなたの人間関係のスキルを磨くチャンス到来です。なぜなら、困った人とうまく人間関係を持つスキルは、面倒なクライアント、部下を持ったときにも使えるからです。

ですからこの状況を、あなたの「人間力」を高める一つの試練として捉えてみましょう。なぜ、その人は能力が低いのに、あなたの上司になれたのか、どうして人格的に問題があるのか、リサーチするところから始めましょう。FBIのプロファイラーのように、その人の性格がどこでどうゆがんでしまったのか、なぜ、そのようなコミュニケーションを取るようになったのかを考えてみましょう。

またその人は、自分には人望も、能力もないことをうすうす感じているはずです。そしてあなたに尊敬されていないことも気付いていると思いますし、他の人からも同様に扱われている可能性があります。もしかしたら、家でもそうかもしれません。

視点を変えると、能力がないのに、自分には無理な立場を与えられた被害者でもあるのです。そういうかわいそうな人に対して、優しく接するのか、批判的になるのかで、あなたの人間力も決まります。

上司をできるだけ理解して、サポートしてあげることで、上司の幸せに貢献できるのは、間違いないでしょう。あなたが広い心で接してくれることを知ったら、好意的になり、きっといい評価もしてくれるでしょう。

そう考えてみると、今の環境はあなたの捉え方次第で、とっても興味深い体験になるとは思いませんか? ぜひその状況を楽しんで、自分の成長の機会にしてください。

男性回答者プロフィール:本田健(ほんだ・けん)
作家。神戸生まれ。経営コンサルタント、投資家を経て、29歳で育児セミリタイヤ生活に入る。4年の育児生活中に作家になるビジョンを得て、執筆活動をスタートする。「お金と幸せ」をテーマにした1000人規模の講演会、セミナーを全国で開催。インターネットラジオ「本田健の人生相談~Dear Ken~」は2200万ダウンロードを記録。
代表作『ユダヤ人大富豪の教え』(大和書房刊)など、これまでに著書は100冊以上、累計発行部数は680万部を突破。
【本田 健 公式サイト】http://www.aiueoffice.com/

そんな人ともやっていける距離感を測って

【河崎環さんの回答】

あっ、近い近い。あなたと上司の距離が近すぎます。「上司の能力が低くて人格的にも問題がある」。手厳しい評価ですが、上司をそこまでザッパリと斬るからには、おそらく生理的なレベルでも相当お嫌いなのではないか、そんな気がします。だから距離を置きましょう。

人間関係には、鏡の法則があります。そしてまさにあなたのおっしゃる通り「人間関係とは、互いが互いに敬意を持つところから始まる」ものですよね。

日々顔を合わせ、同じ利益を追求する職場のチームの一員であるはずの上司に対してかなり厳しい評価をお持ちのようですが、あなたの態度や相手への評価は、ほぼそのまま、相手の態度やあなたへの評価としてはね返ってきます。相手に尊重されたいのなら、どんなに公正に客観的に見て相手の「能力が低く、人格に問題がある」としても、まずあなたの側が相手を尊重することから始めなければ、人間関係はずっと平行線です。

「上司が尊敬できない人間だ」との断定一択から話が始まる時点で、あなたの側のシャッターが閉まっているわけで、しかしながら二者の距離は近いという息苦しさ。そのままでは解決は遠そうです。自分が相手を見下しているのに、「なぜ相手は私を尊重できないのか」と憤慨しても始まりません。

100%何もかもダメという人はいません。何か一点だけでも、いいところを見つけて評価し、程よい(近づきすぎてうっかり神経を逆なでされない)距離をあなたなりに見つけて付き合っていくことで、あなた自身の肩の力が抜け、相手への敬意が生まれ、やがて敬意が返ってくるのではないでしょうか。キーワードは「そんなポンコツな相手にも敬意を払える、心の距離探し」です。

女性回答者プロフィール:河崎環(かわさき・たまき)
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。