デジタルツールをスマートに使いこなす人、カッコいい!とあこがれること、ありませんか? でも意外なことに、時代をつくるクリエイターは「手書きメモ派」だったのです。仕事の効率がぐんぐん上がるその理由とは?
全国の書店で即完売、品切れ状態が続き、話題となっている雑誌『MEKURU』(小泉今日子特集)、ご覧になった方はいらっしゃいますか?
その中のQ&A:「デジタルとアナログ、今後どう使い分けていきますか?」という質問に、小泉今日子さんは「使用する側としてはどんどんデジタルを取り入れていこうと思いますが、役を演じるとか、歌を歌うとかいうことは、心も含めてアナログでい続けないといけないと思うんです」と答えています。
「デジタルは便利だけど、心が今ひとつ欠けている」、でも「時間が掛かっても絶対にアナログ主義!」でもない。「デジタルの利便性を活用しながらも、時にはアナログの持つ温かさ、情感は忘れずにいたい」――私は彼女の答えをそのように理解しました。
この回答は企業で働く人間もうなずける、とても柔軟な考え方だと思いませんか?
そして今回ご紹介する書籍として選んだのは、タイトルもズバリ! 『仕事のスピード・質が劇的に上がる すごいメモ。』。
メモをとるという行為は、堅実で保守的、アナログ的な印象を受けます。しかし、本書にはタイトルからも分かるとおり、「メモは最大の武器になる」ということが、具体的、実践的に書かれています。
著者の小西利行氏は博報堂出身のコピーライターで、クリエーター。「モノより思い出」(日産セレナ)のキャッチコピーや、サントリー「伊右衛門」「ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム」等の商品開発でも活躍中の人物です。
ヒットを生み出す彼の仕事術は、新人(驚くほど平凡で、プライドだけ高く、扱いづらかったらしい)時代からの「メモ」に支えられていること、またさらにメモの取り方に工夫を重ねた結果、人生が劇的に変わるほどパフォーマンスが上がったというメモ活用が軸になっています。
著者はこう語ります。「メモは“未来の自分”に向けて書くもの」
一般的にメモというと、聞いている情報や考えを「残す」ものですが、本書ではその概念を転換して、未来の自分がそれを見て、「考えるきっかけ」が生み出せるように書く、そのための14のメソッドを紹介しています。
メモに日付や記号(→や○や?等)を使用して、さらに漫画のように吹き出しを加える……実に具体的で簡単で明瞭な、未来の自分に向けてのメッセージです。メソッドに沿って、毎日1つずつ実践すれば、たった2週間でメモの達人になり、結果的に仕事のスピードと質が向上していく、という内容。
「どんなにデジタル機器やアプリケーションが進化しても、『1枚のメモ』に勝るものはない」と著者は実感を込めて語り、情報過多で、ゴチャゴチャと混乱した頭の中をメモによって整理整頓することで、日々がより良く変化していくと論じます。『すごいメモ』を読むと、おそらく新しい手帳やノートを購入したくなると思います 。
早速私は、本書を読み始めた時からパソコンのキーのすぐ横に紙を一枚置き、
思いついたことはすぐにメモをとるようにしました。
実感はというと、「すぐにやるべきこと」「指示を出すこと」「後で調べること」等が明確になり、飛躍的に仕事のスピードが上がっています。社内・社外に向けての発信と文書作成はパソコンで、自分の頭や気持ちの整理は、手書きのメモで――こうして活用始めたメモは「過去を記述した記録」ではなく、「現在の心境や仕事の進捗」、さらに発展して「未来へ向けての思考、行動」が一目瞭然となり、実に心地よいのです。
本書の巻末に収録された著者・小西利行氏と作家・伊坂幸太郎氏の対談では、伊坂氏がこう言っています。「メモするんだったら、手書きじゃないとダメって思ってます。幻想かもしれないですけどね。手書き幻想(笑)」
冒頭に触れた、小泉今日子さんの「デジタルとアナログについて」の答えとも通じるメモ術です。
そういえば『すごいメモ』を読み、思い出した人物が2名いました。1人は20代で出版社勤務の女性、もう1人は還暦を過ぎた現在も音楽プロデューサーとして活躍中の男性。
共通しているのは「メモ魔」ということ。会議室、喫茶店での打合せはもちろん、電車の中、呑み会の席でも「ちょっとメモさせて頂いていいですか?」と言い終わらないうちに手帳を取り出し、メモを始めます。それぞれ抜群に仕事ができます。メモ活用で、仕事や日常をさりげなく、今よりさらに良く変化させてみませんか。