企業の人事採用担当が、こっそり教えるココだけの話。欲しい人材、採用を見送る人材とは? 子どもの有無、年齢は評価ポイントにどう響く? 異業種4企業の人事採用担当者たちに覆面座談会でホンネを語ってもらいました。

単に働きやすさだけで応募しているなら、お断りする

――女性採用への意欲、また出産・子育て中の女性の採用について、企業側の考えをお聞かせください。

【製薬】営業とスタッフ部門で女性を採用しているが、残念ながら現状では、営業職での女性採用は少ない。これまでは確率論として女性より男性が長く働き続けるだろうという思いから、男性を採用したがる風潮があった。だから同じレベルか、能力的に劣っていても男性を採用していた。でも将来を見据えると、女性の中途採用を積極的にしないと会社自体が終わってしまうという危機感を経営側が持つようになった。だから今は、優秀な女性なのに体力がない、結婚している、していないに関係なく採用しろとトップに厳命されている。

【精密】うちは販売主体の会社ですが、法人営業職の中途を男女区別なく採用し始めたのはごく最近。これまでは新卒中心でしたが、女性の中途採用を積極的にやり始めていますね。でも応募者は男性の1~2割と少ないのが現状です。

【IT】毎年40~50人採用していますが、欲しいのはエンジニア。けれど、そもそも女性のエンジニアが少ないので女性採用数は1~2割程度。応募してくる女性には2つのタイプがあります。他社に勤務し、出産のタイミングで辞めた人が多い中で、前職と同じように働き続けたいというタイプと、子育てなど制約があるので働きやすさを求めるタイプの2つ。もちろん会社としては働きやすさにも力を入れているけれど、そこだけで来られてもお断りする場合もある。

IT会社・人事部長/40代「経験上、素直な人が転職に成功している。相談や助けを求められる人は結果、成績もいい」

【精密】採用側が女性との面談で「結婚する予定はありますか」と聞くのは厳禁。結婚したら働けないのかなと思われるだろうし、絶対に聞きません。ただし、一番残念なのはいくら会社が女性の活躍推進や両立支援に力を入れているといっても、中途入社間もない時期に、出産・育児でお休みをいただきますと言われると、正直、何かだまされたなという感じはありますね。時短勤務を申し出られても「ああやられたな」という感じは残る。時短は法的制度なので使えないことはないのですが、「今の部署ではメンバーの構成上、短時間勤務はできませんが、それでも志望されますか」などと、必ず面接時に聞くようにしています。

【IT】確かにライフイベントを境に転職する人が多いので、「ご家族は今回の転職についてどう思っていますか」「子どもさんは小さいですが、大丈夫ですか」と聞いていますね。

【食品】子どもの有無はあまり関係ない。いなくてもいつできるかわからないしね(笑)。ただし、基本的には子どもがいるから定時に帰らないといけないと言う人は採用しない。面接では想定残業時間はこれくらいですという話はしている。ポジションによっては残業が少ないところもあるが、残業時間がどのくらいかで想定年収も違ってくる。年収の提示では、残業が月に30時間だと年収はこれぐらいになりますと話している。

【製薬】昇進したくないという女性は多いが、わが社は上に行くだけがキャリアパスとは考えていない。営業職の一エキスパートとして活躍している人もいる。リーダーの資質があり、上をめざしたいという人間は抜てきしていく一方、一スペシャリストでがんばりたいという人も必要だと考えている。中途採用の女性で、子育てなどで働き方に制約があるという人でも、この地域で、こういう仕事であれば成果を出せる自信があるという人なら問題なくOKだ。

【IT】うちも管理職になりたい人だけを採っているわけではないですし、管理職自体ポストが少ない。将来マネジャーを志望する人も募集しますが、生涯一エンジニアとして働きたい人も求めています。

【食品】昇進はしたくなく、働きやすさを求めてくる女性は多いが、そういう人はオペレーターみたいなポジションで採用している。その代わり、昇進しないと給与も上がらず、いずれ派遣スタッフに代替されてしまう可能性もあるかもしれない。そういうリスクを想定していない人は意外と多いね。

「勉強させてください」はNG!

――採用面接で、重点的にチェックされるポイントはありますか。

【製薬】面接ではこれまでカベにぶつかった経験を聞くね。どうやってそれを乗り越えたのかを聞いたときに「自分はこうして乗り越えた」と言う人と、「自分はこう考えたが無理なので誰かに相談して助けてもらった」と言う人がいる。採りたいのは後者。なぜなら、いかに仲間やチーム、上司からうまくサポートしてもらって解決したかが組織では大事だから。逆に修羅場を自ら乗り越えて成功している人というのは、もしかしたら何かのカベにぶつかったときに一人で抱え込んでしまう可能性があると見ている。

【精密】なぜうちの会社を選んだかを必ず聞いています。自分のキャリアを考えてわが社に入って得たいものは何か、それから自分が会社に貢献できることは何かという両面を整理して話せる人には魅力を感じます。単に自分はこんなことができます、これもできますと自己アピールだけをする人がいるけれど、こちらもだまされないぞと思ってしまう(笑)。

【食品】絶対の禁句は、中途で入るのに「勉強させてください」というひと言。いやいやうちで勉強されても困るし(笑)。自分の能力を伸ばしていきたいこと、会社に貢献したいことについて一生懸命に考えて整理することが大切だ。

食品会社・人事部長/50代「子どもの有無は基本的に関係ない。ただし、定時の帰宅がマストな人は、採用しない」

【IT】転職の動機を聞くと、今の会社があまりにも長時間労働なのでと言う人が多いですね。そんなことよりも、採用側としては、もっとエンジニアとしてのキャリアイメージを押し出してほしいのに。「今までの経験を活かしたい」とか「働きやすい会社だから」と言うだけでは断っています。

【精密】土日も仕事でつぶされ、きちんと休みたいので転職したいと言う人がいた。それは本心かもしれないがそのままストレートに伝えられると採ろうとは思わないですね。たとえば、「自分のキャリアを伸ばすためには時間と体力を消耗しながらやっている今の営業スタイルでは限界がある。もっと経営陣から投資してみたいと思われるようなコンサル的なキャリアを伸ばしたい。そうしない限り自分も伸びないし、収入も増えることはないのでぜひ御社に入りたいです」などと言われると、グッと響くものがありますね。

【製薬】営業担当を採用する際の基本的なチェックポイントは、営業パーソンとして個人で目標予算を持って、それを達成するという経験をしてきたのかどうか。他社との差別化を自分で考えてどのように実践し、成績につなげてきたかを、数字も含めて細かく聞いている。そういう意味では、日本の大企業で育ち、個人で責任を持った経験がない人はまず無理だろう。

40代前半でもウェルカム。年齢は気にしていない

――40代に近づくにつれ年齢を危惧する女性も多いです。年齢は重要視していますか。

【食品】年齢についてはそんなに気にしていない。中心ゾーンは20代の後半から30代前半だが、40代もいるよ。

【製薬】希望を言えば20代半ばから30代前半がストライクゾーンだな。20代半ばでも社会人経験は3~5年は欲しい。1~2年で辞めてしまう人は、また長続きしないのではないかと思ってしまうね。ただし、30代後半、40代前半の人でもウェルカムだ。昇進は望まないが、一営業担当者としてキャリアを積んでいきたいと言う人は大歓迎だし、正直、年齢は気にしていない。実際、成果を出す自信があると言い、若手の育成もやりますと宣言した40代半ばの女性を採用した実績もある。

【IT】プログラマーであれば30代前半までがギリギリ。プロジェクトマネジャーなら40歳を過ぎても採りますが、システムエンジニアは30代までかな。

【精密】やはり27、28歳から36歳までがベターかな。なぜかと言えば、管理職の年齢層がその上だから。私個人としては40歳であっても能力があれば落とさないだろうけれど、若い人ばかりの職場だから、40歳過ぎは落としています。若い人のほうが指導しやすいと考えているので。