2016年4月から施行となる「女性活躍推進法」。「話題になっているけど、今ひとつどんな法律なのかよく分からない」という人のために、そのポイントを解説します。果たして、2016年は女性活躍元年となるのでしょうか!?
※この内容は2016年1月14日に開催された女性活躍推進法セミナー(株式会社ビズリーチ、株式会社Waris共催)での厚生労働省雇用均等政策課福田有香氏の講演内容を元に構成したものです。
なぜ女性の活躍を推進するのか?
2016年4月から施行となる女性活躍推進法。正式には「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」で、その名の通り「働く女性の活躍を後押ししますよ」という法律だ。
現在、日本の女性の就業率(15歳~64歳)は上昇してきているが、下記のとおりいまだライフステージの変化に伴い離職するケースが少なくないなど、課題も多い。
●第一子出産を機に6割の女性が離職する
●育児後に再就職する際はパート・アルバイトになる場合が多く、女性雇用者における非正規雇用者は56.6%と、6割近い
●女性の管理職は1割程度と、国際的に見ても低い水準である
このように、まだまだ女性が活躍しているとは言えない状況だ。そのため、もっと活躍してもらうため、企業に女性活躍推進の取り組みを実施してもらおうと成立させたのが、この女性活躍推進法だ。
しかし、なぜ今さらこうした法律ができたのだろうか? その背景にあるのは、ずばり労働力不足だ。少子化による急速な人口減少により、将来の労働力不足が懸念されており、女性に、もっと多く、もっと長く、もっと高い能力を発揮して「働いてほしい」というわけなのだ。
企業に求められる取り組み、4つのステップ
女性活躍推進法の施行にともなって、企業にはどのようなことが求められているのだろうか。一言で言うと「自社の女性活躍に関わる状況を把握し、行動計画を策定すること」。具体的には、次の4つのステップになる。
ステップ2:行動計画の策定、社内周知し、外部に公表すること
ステップ3:行動計画を策定した旨、労働局へ届け出ること
ステップ4:行動計画に従って取組を実施し、定期的に効果測定すること
本法の施行以降、企業はこれら4つのステップに取り組むことを求められるようになる。そして、この取り組みは、従業員301人以上の事業主については、企業だけでなく、国や自治体、学校、病院などあらゆる組織に義務付けられている。なお、従業員300人以下の事業主に関しては、努力義務とされている。ステップごとに順を追って説明していこう。
ステップ1:状況把握と課題の分析
女性従業員の割合、男女の平均勤続年数の差、平均残業時間数、管理職に占める女性の割合など、女性活躍に関わるさまざまな項目について自社の状況を把握し、そこから女性活躍を図る上での課題はなにか、分析を行う。例えば、女性従業員が7割を占めるのに、女性管理職の割合は2%しかない、という企業は、女性管理職の割合が低いことが課題となる。
ステップ2:行動計画の策定と社内外への公表
それぞれの課題に基づいて行動計画を立てていく。行動計画には「営業職で働く女性の比率を4割以上にする」「男女の勤続年数の差を5年以下にする」など、自社の課題にあった具体的な数値目標を掲げると共に、計画期間、取組内容、取り組みの実施時期を盛り込み、社内に周知するだけでなく、社外への公表も行う。
ステップ3:労働局への届け出
策定した行動計画を所定の様式の書類にまとめて、各都道府県の労働局に届ける。
ステップ4:実施と効果測定
行動計画に従って施策を実施し、定期的にその実施状況や数値目標の達成状況をチェックし、新たな課題が見つかれば、再度ステップ1からこの取り組みを繰り返し、改善していく。
女性の働き方が変わる10年
では、この女性活躍推進法はどの程度、実効性があるのだろうか。ステップ3で提出する書類には、行動計画に盛り込む取り組み内容の例として「男性の子育て目的の休暇の取得促進」「子どもを育てる労働者が利用できる事業所内保育施設の設置及び運営」「短時間正社員制度の導入・定着」「若手に対する多様なロールモデル、多様なキャリアパス事例の紹介」「非正社員から正社員への転換制度の積極利用」など、さまざまな子育て支援や多様な働き方を実現するための取り組みが多数掲載されている。
どんな取り組みを行動計画に盛り込むかは、企業によって異なり、その本気度にも差は出てくるだろう。しかし、法律として施行されることで、今まで女性活躍推進に積極的でなかった企業も、なんらかのアクションを起こさざるを得ない状況となってくることは確かだ。
なにより、この法律の最大のポイントとなるのは、「女性活躍に関する情報公表」が義務づけられているところだ。従業員301名以上の事業主は就職活動中の学生や求職者が就職先を選ぶ際の参考になるよう、ステップ1で把握した女性活躍に関わる情報を自社ホーム―ページや厚労省のウェブサイトに公表しなくてはならない。
厚労省のウェブサイトには、少なくとも1万5000社の企業の女性活躍状況がデータベース化され、他社と比較して見ることができるようになる。企業によっては採用やブランド戦略などにも影響が及ぶ可能性もあり、これまで女性活躍推進に取り組めずにいた企業の腰を上げさせる効果は期待できるのではないか。
ただし、この法律は10年の時限立法。この先10年間で、女性の働き方はどこまで変わるのか。働く女性の意識もまた変えるべき時がきているのかもしれない。