転職とは、よりよい職場、やりがいを求め、キャリアを築いていくために、未来の可能性をつかむことにほかならない。しかし、チャレンジには常にリスクが伴うもの。転職のリスクと成功要因は外からはなかなか見えない。だからこそ、転職を成功させるための法則を押さえておきたい。転職のプロだけが知っている7つの法則とは?(アドバイスしてくれる人:株式会社キープレイヤーズ・代表取締役 高野秀敏さん)

【法則2:応用力】採用側のニーズをつかんだうえで、自分の強みを提案する

面接でアピールすべきことは「自分の希望」と「自分のできること・やってきたこと=結果」の2つだと思っているのでは。自己PRするうえでもうひとつ大切なことがあります。それは「企業のニーズ」。採用側のニーズを考えずに面接に挑んで独りよがりな自己PRを行い、採用に結びつかなかったケースは多々あります。欠員補充なのか、増員か、新規事業立ち上げスタッフなのか、募集背景によってPRポイントは変わります。まずは企業のニーズをとことん調べ、推測しましょう。

この円の共通部分が求人側にアピールできたなら、確実に内定は近くなる。

企業のニーズを探るために活用したいのがIR情報。投資家向けの資料なので経営状況がわかりやすくまとめてあり、企業研究の絶好の教科書となります。同時に、ライバル企業もチェックして。経営方針や事業戦略の違いが比較でき、それぞれの企業の強みや弱みが理解できるはず。上場していない企業であれば、最低限ホームページだけはチェックして情報収集を行ってください。

ここ数年、人事・総務・経理といった管理部門は募集案件が多い状況。高いスキルが求められますが秘書もニーズの高い職種。営業と違い、結果を示しにくい職種の場合、企業の経営状況を踏まえた自己PRを行えば、リサーチ力や洞察力が評価され、ポイントアップに。とくに、異職種/異業種への転職を目指すなら、情報収集は確実に。

【法則3:視野を広げる】複数のルートを使い、間口を広げている

求人情報を探すルートは少しでも多く確保して。複数のルートを使い、希望する案件に出合うチャンスを増やし、タイミングを計るのです。転職ルートは大きく分けて5通り。

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5つの転職ルート

【1:縁故・紹介】「上司(先輩)に誘われて」と、なりゆきで転職する方は多い。きっかけはどうであれ、目的意識のない転職はNG。

【2:ハローワーク】失業した方がメーンになるので、優先順位は下位。

【3:自己応募】自社ホームページで採用情報を掲載する企業は多い。狙っている企業を定期的にチェック。

【4:転職サイト】インターネットで気軽にエントリーできる手軽さが便利だが、満足いくオファーに巡り合うチャンスは少ない。企業側もエントリー者の100人中1人ぐらいしか適任者はいないと予想している。

【5:転職エージェント】無料でコンサルタントのアドバイスを受けることができ、公開情報だけでなく、エージェントだけが持つ求人情報を紹介してもらうことも可能。

おすすめは“転職エージェント”。キャリア相談や履歴書の添削、面接対策までケアし、採用側の要望を把握しているので、ミスマッチを防いでくれます。万が一、紹介された案件で内定を取れなかったとしても、ダメな理由をエージェントを通して知ることができ、自分の弱みを把握することが可能。転職エージェントを使う場合は、エージェントによって得意不得意の業界があるので、複数のエージェントに登録することをおすすめします。

【法則4:備える力】転職先でのあらゆるリスクを想定する

今も昔も、大手やその系列会社を希望する方は多いですね。しかし、大手といえども、業績不振で大量リストラを敢行する世の中。企業の合併・買収も多く、ある日突然、外国人が上司になるかもしれません。一方、「安定したベンチャー企業に行きたい」と言う方も多いですね。ですが、安定したベンチャー企業などありません。しかし、実際に求人があり、将来性があるのはベンチャー企業であることが多いのです。

近年、転職市場は活気づいていますが、年々転職活動は難しくなっていると感じています。企業の将来性や業界の先行きに“安定”を求めても、それがかなわないから。産業全体が右肩上がりに伸びていた時代と違い、今、実際に成長しているのはIT業界くらい。将来性のある企業が多い半面、消えていく企業も多いのが現実。また、ベンチャーのリスクは企業存続の可否だけではありません。仕事の範囲が広く、大企業なら分業しているところを、ベンチャーは自分ですべてこなさなければなりません。しかし、大企業ではできないことを経験できるので、キャリアアップには格好の場といえるのですが、それをリスクと取るか、メリットと感じるかは本人次第。リスクは万人に共通する事柄ではないのですから。

大手、ベンチャーにかぎらず、企業風土や人事制度が意にそわないことも。のびのびと働ける環境かどうかも見極めたい。自分の市場価値を上げるためにもリスクを取っていくべきですが、事前調査を怠らず、リスクを理解し、納得したうえで転職したいもの。実際は働いてみないとわかりませんが、転職する前に情報収集をしっかり行い、転職先でのリスクを想定しておくのが大切です。

高野秀敏
株式会社キープレイヤーズ 代表取締役。総合人材サービスのインテリジェンスに入社。転職サポート実績No.1を記録し、独立。3000人以上の経営者には人事や経営について、8000人以上の個人にはキャリアアドバイスを行ってきた。