管理職になるとますます増える社内調整や、交渉ごと。チームで大きい成果を挙げるのに必要な力とは?(アドバイスしてくれる人:日産自動車代表取締役副会長 志賀俊之さん)

政治に走らず、やりたいことを言い続けることです。最初は抵抗勢力もいますが、その人たちに鍛えられる。私は新人のころから「日産でこれがやりたい」と言い続けてきました。職場でも飲み会でも車座になって、先輩にも後輩にも同じことを言い続けた。志賀節なんて言われましたね。すると「彼は軸がぶれない」となる。「彼をあのポジションにつけたら、こんなことをやってくれるかも」と周りが勝手に期待値を高めてくれて、気づいたら昇格していたんです。

Q:企画を通すために、自前の根回しは大切だ

やりたいことを伝えるときに大切なのは、相手にも共通理解の土俵に立ってもらうこと。たとえばゴーンさんがこれをやれと言えば、従業員はもちろんやりますが、やらされている感覚が強いと気持ちがのらないので結果がついてこない。日産が電気自動車(EV)への参入を発表したのは2007年でしたが、社内の説明に2年かかりました。なぜハイブリッド(HV)車ではなくEVなのか、環境負荷、データ、将来性を説明し続けたことで共通理解を各部署に持ってもらうことができ、社内一丸で取り組む態勢を築くことができました。

COO在任期間中には、自分が何を思っているか、何をやりたいかを社内のメルマガで発信し続けました。たまに、私はそうは思わないと反対する人がいるとうれしくなりました。彼と自分の理解で違うところはどこだろうと思い、たくさん話したくなるのです。

志賀俊之さん「抵抗勢力がいても、言い続けること。巻き込み力がつきます」

●紅一点の課長会議で発言するには?
最若手の役員として役員会議に出るようになった当初、会議で1案件につき1度は発言するぞと自らにノルマを課し、ノートに正の字を書いて自分を奮起させていました。何か違和感を感じることがあったらぜひ、その理由や考えを発言しましょう。

●さらに上に行くには女を捨てるべき?
捨てないで! 以前、ある高級車のデザイン決定会議に出席していた女性メンバーが、私がカッコいいと感じたグレーの柄模様の内装を見て、「男性の下着の柄みたいだ」と発言。女性ならではの視点にはっとしました。ありのままの女性らしさがあれば、頭角を現す日が来るでしょう。

志賀俊之(しが・としゆき)
日産自動車代表取締役副会長。1953年和歌山県生まれ。大阪府立大学経済学部卒業。76年、日産自動車入社。企画室長、アライアンス推進室長を経て2000年常務、05年最高執行責任者(COO)、13年副会長に就任。

構成=やまよし子 撮影=的野弘路 アンケート調査=NTTコム オンライン