自分が知らないところで何かが動いているような感じがする。多くの人にとって、社内政治とはそんな不気味な存在かもしれません。ライフネット生命保険の出口治明会長がスッキリ明快にアドバイスします。

タバコ部屋で人事? 何ですかそれは。タバコ部屋で人事の話をするような人たちのことは放っておきましょう。ご存じですか。いまや世界のビジネスリーダーの中では喫煙者は少数派です。そもそもタバコ部屋や酒の席など、誰が聞いているかわからない、気も緩みがちな席で仕事や人事の話をするようなリーダーは、これからおそらく一掃されるだろうし、一掃されるべきだと思います。

Q:タバコ部屋で重要なことが話されていそうな気がする

ロンドン駐在時代に学びましたが、欧米の一流ビジネスパーソンは公私をきちんと分けています。たとえ社長がタバコ部屋で誰かとひそひそ話をしていたとしても、そのようなかつての高度成長時代における男性中心社会の遺物のようなうわべだけの社内政治は、世界が相手になったいま通用しません。これからの時代は人口減少に労働力不足と、女性にとってはチャレンジする機会の多い時代です。古いオジサンの慣習は無視して、性差という発想がないグローバルなマネジメントをどんどん学んでください。

そのためにも、まずはどこに行っても通用する「手に職」を。スキルさえあれば置かれた場所で咲く必要はなく、古い職場がイヤなら場所を変えればいい。ここでやってやろうと思うのなら、とにかく上司をよく観察すること。面倒かもしれませんが、上司はある程度恋人のようなものと思って接するのがうまくいくコツです。

出口治明さん「古いオジサンの慣習は無視しちゃってください」

●社内のゴシップは知っておくべき?
そんなことが気になるのは、会社人間になっている証拠です。1年は8760時間。そのうち労働時間はわずか2~3割。人生で大事なことはむしろ残りの時間をパートナーや友人とどう過ごすか。ゴシップなど気にせず自分が納得したやり方で、思い切って仕事に励んでください。

●社内情報を得る方法は?
実際は大したことのない社内の「ここだけの話」を気にするよりも、自社のホームページに公開されているIR情報やプレスリリースに徹底的に目を通してください。会社の現状や今後の見通しを把握すれば、自分の戦略を立てるのにとても役に立ちます。

出口治明(でぐち・はるあき)
ライフネット生命保険会長兼CEO。1948年三重県生まれ。京都大学を卒業後、72年に日本生命保険に入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て、同社を退職。2008年ライフネット生命保険を開業。13年6月より現職。『直球勝負の会社』など著書多数。

構成=やまよし子 撮影=的野弘路 アンケート調査=NTTコム オンライン