Facebookなどを見ていると、やたらと「出会い」というキーワードを見かけませんか? 確かにある程度のキャリアになったら人脈は必須ですが、SNSの登場で“人脈”の意味や価値は大きく変わりつつあります。キャリアアップにつながる「出会い方」とは……?

出会い系……と書いてしまうと何やら怪しげな雰囲気ですが、今回のコラムはその出会い系じゃなくて、最近のビジネスパーソンの間で流行している「出会い系」のこと。

近頃、何気なくソーシャルメディアなどに投稿されているコメントなどを眺めていると「出会い」という言葉を頻繁に見かけませんか? 例えば「今日の素敵な出会いを私は一生忘れることがないだろう」「出会いの機会を与えてくれたサカタさん(仮名)には感謝してもしきれません」「ただ一言感動です。この出会いは財産になると思います」という感じ。人によっては毎日のように「出会っている」なんてことも珍しくない時代になっています。

ソーシャルメディアなどの「人付き合いを可視化する」ツールの出現によって、その出会いを「公知」する人も激増しています。意識的なのか無意識的なのか、その詳細は不明ですが、とにかく「出会った」ことを投稿し、その価値を、自分のネットワークに知らせようとしています。その行為にどういう効果があるのかは不明ですが、投稿を見て「私もこの年齢になったら、そろそろ人脈という言葉を意識する必要があるのだろうか?」と考えてしまう人が出てきても不思議ではありません。しかし、一朝一夕に人脈が作れるわけもなく、頑張って「出会い」を求めてさまよってしまうという人も増えているのです。

出会いの場所は無数にあるし、有益な場もある

「よし人脈を作ろう!」と意気込んでも、イマドキのビジネス社会で役に立つ人脈は、そう簡単に作れません。ソーシャルメディアなどのツールを利用すれば、人とつながること自体は、以前と比較して圧倒的に容易になりました。

しかしこれは、裏を返せば「人とつながりを持っていること自体に価値を持つ時代は終わった」ということです。今までなら「あの人なら知っている」と、有力な人物と知己であり、そのコネクションを利用することが重要であり、ある種の人脈と目されていた(誤解を恐れずにいうと、私の人脈の定義はここで示す例とは少し違います)のですが、それはもう人脈とは呼べない。だから人脈作りは難しい。

ただ、自分にとっての人脈になるかもしれないつながり、人脈作りのきっかけを作ることは容易になったともいえるのです。人と人がつながろうとしているイベントなどもソーシャルメディアでは比較的シェアされがちです。玉石混交とはいえ、自分の周囲の信頼できる人、目標としている人が参加しているイベントなら、自分もその場に身を投じてみるのも一つの「出会い」のスタイルです。勉強会などに参加して、知見を深めると同時に、似たようなことに興味を持つ人たちと交流を持つことも、ある種の出会いでしょう。もちろん、そこにあるのはただの「出会い」であり、きっかけにすぎません。その先はあなた次第なのです。

新鮮な出会いは「刺激的」で「気持ちいい」けれども

出会いの場を求めてさまよい始めると、日々が新鮮な感じがするという人も少なくありません。今まで会ったことがない人、全く未知の仕事、異なるバックボーンの同性など、その目新しさから刺激を受けることは請け合いです。ケースによっては「人に酔ってしまう」状態になる人も。しかし、冷静になればわかるのですが、誰かにただ会っているだけで、実はそれ以上のことは何も起きていません。が、ソーシャルメディアに投稿し、出会いに感謝することで、何かをした気になってしまう。新しい出会いを求めて忙しい日々、充実した生活を送っているのに、実は中身は空っぽだった、という悲劇も起きてしまいます。

さらに「出会い系女子」として活動を続けていると「会社の外でだけ有名」というカテゴリーの人と遭遇します。もちろん、会社員以外の顔を持ち、積極的に活動しているという人なら別です。が、有名企業で働いている、そこで活躍をしているということを鍵にして、人とのつながりを広げているのに、実際はその企業での評価は低く、たまたまその企業の別の人と会った時に「サカタさん(仮名)を知っていますよ」と自慢げに言っても「ああ、あの人ねぇ」と苦い顔をされるケースも少なくない。「知っていますよ」と人脈を誇示した結果、かえって墓穴を掘るという残念な事態になってしまいます。

“残念な出会い系女子”にならないために、少しだけ考えておこう

このコラムの読者には、一定以上のキャリアを持ち、仕事に邁進(まいしん)している女性が多いと思います。そういった人の場合は、それでも積極的に「社外の人とのつながり」を持つべきだと、私は思っています。

理由はとてもシンプルです。なぜなら、同じ組織の中に閉じた状態で人とつながっていると、視野が狭くなってしまうからです。それも圧倒的に。もちろん、趣味などでのつながりで視野を広げることも可能です。が、楽しい場所に仕事の話を持ち込まれることを嫌う人も多いでしょう。これからのキャリアを考えた時に、他の釜の飯を食っている人とのつながりを持つことによって、その視野の一部を垣間見るのは重要だと考えましょう。その上で「出会いの目的」をきちんと絞ることが肝心です。

ずるい言い方をすると、多少打算的だといわれようとも、計算高く「誰と会うことで自分のキャリアがアップできるか?」を考えることをいとわないようにするのが、何より重要なのです。それこそソーシャルメディアを見ていれば、あなたもきっと気づいているはずです。投稿を見て「この人、なんかガツガツしているなぁ」と思ってしまう人ほど、キャリアという面で意外に成功しているということを。そこで遠慮してしまうことで得られるものは、自己満足に過ぎないということにも薄々感づいているはず。

「貪欲上等!」という出会い系女子なら、キャリアの曲がり角も猛スピードで曲がりきれる……かもしれませんよ。

サカタカツミ/クリエイティブディレクター
就職や転職、若手社会人のキャリア開発などの各種サービスやウェブサイトのプロデュース、ディレクションを、数多く&幅広く手がけている。直近は、企業の人事が持つ様々なデータと個人のスキルデータを掛け合わせることにより、その組織が持つ特性や、求める人物像を可視化、最適な配置や育成が可能になるサービスを作っている。リクルートワークス研究所『「2025年の働く」予測』プロジェクトメンバー。著書に『就職のオキテ』『会社のオキテ』(以上、翔泳社)。「人が辞めない」という視点における寄稿記事や登壇も多数。