「指示を出すのが苦手」という人がいますが、適切な指示を行えないと、業務に支障を来す場合もあります。分かりやすい指示を出すポイントとなる“形容詞や副詞”と“数字”の使い方について、教育コミュニケーション協会代表の木暮太一さんに教わります。

まずは目的を明確に

説明力の研修を行っていると、「部下や後輩に分かりやすく指示ができない」と悩む女性マネージャーに多く出会います。彼女たちの“分かりづらい指示”によって発生する問題の多くは「説明表現があいまい」という点に起因します。

指示を出したはずなのに、思う通りに進んでおらずイライラしたことはありませんか? 指示を受けた部下は、動きたくても動けなかったのかもしれません。あなたの指示の出し方を見直してみましょう。

部下・後輩に分かりやすい指示を出すには、どこを改善すればいいのでしょうか?

まず、「自分の目的」を明確に捉えます。「相手に、“それ”を伝える目的」、つまり「自分は今、何のために“それ”を伝えようとしているのか?」ということです。「伝えたい具体的な内容」よりも前に、「そもそもなぜそれを伝えたいのか」という目的があるはずです。「何のために伝えるか」「何をしたくて伝えているのか」、この点を自分自身が理解していなければいけません。

あなたの目的は、状況を説明することかもしれません。また、相手に何かの行動をとってもらうことかもしれません。

説明することが目的の場合は、状況を伝えて、「以上、知っておいてください」で終わってもいいでしょう。しかし、行動してもらうことが目的の場合は、状況を説明した上で、「だから、あなたにこれをしてもらいたい」と言葉にしなければいけません。

形容詞や副詞を使わない。すべて数字で伝える

ぼくから皆さんにお願いがあります。今度の月曜日に、大人数の会議を開くので広い会議室を押さえてほしいのです。

そう依頼されたら、どうしますか? 果たして、ちゃんとぼくの意図通りの広い会議室を押さえられるでしょうか?

……無理ですよね。確かに言葉の意味は分かります。ですが、多くの人はこう考えるはずです。「大人数って何人? 20人? 30人? もしかして100人? 具体的にどれくらいの広さなのかまったく分からない、無理だよ!」と。

ぼくがイメージしていたのは、「50人入れる会議室」です。皆さん、分かりましたでしょうか? もしかするとあなたは「木暮さんが今行っているプロジェクトを考えると、大人数って50人くらいかな、一番広い会議室を予約すればいいかな」と、気を利かせて判断し、適切な会議室を押さえられるかもしれません。しかしこれは一般的には通用しない、相手がそう考えてくれるとは期待しない方がいいです。

似たような出来事が実際に多くの会社で、よく起こっています。

「早めに資料を用意しておいて」
「遅めの出勤でいいよ」
「大きい会議室をとっておいて」
「小さめの会場を探しておいてくれる?」
「ちょっと多いな~」
「少なめで発注しておいて」

これでは受け手は分かりません。そのため、「形容詞や副詞を使わない」「できるだけ数字で伝える」を徹底してください。

会議室の例であれば、「今度の月曜日に、50人前後の会議を開くので60人入れる会議室を押さえてください」と伝えます。

「明日はいつもより早く朝礼が始まります」
→「明日はいつもより10分早く朝礼が始まります」

「また、参加人数が増えたので、多めに配布資料を準備してください」
→「また、参加人数が増えたので、配布資料を20部多く準備してください」

このように数字を交えて話せば、明確に伝わります。

「よろしくお願いします」を使わない

指示が分かりづらくなってしまう理由に「お願いしたいことを明確にしていない」ということがあります。その代表例が「よろしくお願いします」です。

日本語の「よろしくお願いします」はとても便利な表現で、頻繁に使われます。しかし、この言葉自体は内容を何も表していません。

「今週の定例会議は、会議室予約の都合で、通常より30分短くなりますので、よろしくお願いします」

この最後の「通常より30分短くなりますので、よろしくお願いします」という部分に注目してください。よろしくお願いされたのは分かりますが、何をお願いされたのかは分かりません。

「よろしくお願いします」が、「普段より30分短くなりますが、ご了承ください」なのか、「いつもより30分短いので、絶対遅刻しないでください」なのか、「事前にある程度考えをまとめてきてください」なのか、分からないのです。

「ご了承ください」の意味であれば、参加者が準備してこなければいけないことは特にありませんので、実害はないでしょう。しかし、「事前にある程度考えをまとめてきてください」というつもりだったら? 中には準備してこない人もいるでしょう。ここで「事前に『よろしくお願いします』とお伝えしたはずですが」と、相手を責めることはできません。この言い方では伝わらないからです。

「この扉は、強風で突然開くことがありますので、よろしくお願いします」
→「この扉は、強風で突然開くことがありますので、この付近に立ち止まらないでください」

「出発前に、お渡しした備品が全部そろっているかご確認よろしくお願いします」
→「出発前に、お渡しした備品が全部そろっているか確認し、万が一不備があった場合は○○営業部までご連絡ください」

「よろしくお願いします」の代わりに、相手に取ってもらいたい行動を明言しましょう。それだけで意図を分かりやすく伝えられます。

木暮太一(こぐれ・たいち)
一般社団法人 教育コミュニケーション協会 代表。
学生時代から難しいことを簡単に説明することに定評があり、大学時代に自作で作った経済学の解説本が学内で爆発的にヒット。独自に磨いてきた「わかりやすく説明する」ノウハウに基づき、2013年に教育コミュニケーション協会を設立、「説明力養成講座」「マーケティング説明力養成講座」「キッズ作文トレーナー養成講座」で教え始める。現在、経済ジャーナリストとしてテレビ等メディアでの経済ニュース解説を行うほか、企業・大学・団体向けに多くの講演活動を行っている。