日本初の“成果報酬型”夫婦参加妊活サポートサービスをスタートさせたファミワン。個人向けサービスだけではなく、企業に向けてもサービスの提供を進めています。後編では、企業が妊活をサポートする必要性や男性の妊活に対する意識向上について、ファミワン代表取締役社長の石川勇介さんに話を聞きました(本文敬称略)。

<前編「妊活版ライザップ? “妊娠しなかったら返金”システムに込めた3つの願い」はこちらから( http://woman.president.jp/articles/-/1001)>

妊活サポートは企業にとってもメリットが!

――企業に向けて、福利厚生の一環としてのサービスも提案しているとのことですが、個人向けのサービスとの違いはありますか。

【株式会社ファミワン代表取締役社長 石川勇介(以下、石川)】サービスの内容自体は個人向けと同じです。主に企業による社員に向けた費用補助制度としての導入を想定しています。通常、月額2万円となるサービス利用料の一部を、会社が負担するという形です。

株式会社ファミワン 代表取締役社長 石川勇介さん。2006年3月慶應義塾大学経済学部卒業。前職のエムスリー株式会社では、AskDoctors評価サービスを担当し、企画、営業、運用を実施。2015年6月に株式会社ファミワンを設立。結婚後、1年間の妊活を経て、2015年7月には第1子が誕生。

妊活というのはセンシティブな領域ですので、企業側から強く打ち出すのは難しいものです。しかしキャリア設計などを含め、社員には妊娠について早いうちから意識をしてもらえた方が、企業としてもメリットがあると思います。決して社員に妊活を強制するのではなく、「もしサポートサービスを使いたい人がいたら補助しますよ」と、会社から好意的な姿勢を示すことがまずは重要だと考えています。女性が出産を経ても長く働き続けられるように、「イクメン」という言葉に象徴される男性の育休取得や女性の管理職の比率の向上などさまざまな策が打ち出されていますが、企業は妊活という入り口から支えていくことも大切だと思います。

――サービス導入を検討している企業に特徴はありますか?

【石川】業種も業態も規模もバラバラです。まずは女性が活躍している企業や福利厚生を重要視している企業などを中心に話を進めています。企業による妊活サポートの導入は、最初はハードルがあるかもしれません。しかし、産休や育休のように"当たり前"となる日を目指します。昔は結婚や出産を機に女性が会社を辞めるのが一般的でしたが、今では多くの企業で産休や育休を取れるようになってきていますよね。年齢の面から考えると、早くに妊娠することで産後の体力のスムーズな回復が期待できますし、キャリアに目を向けながら妊娠するタイミングを考えることは、働き方に対する意識を高めることにつながると思います。

企業向けのサービスとしては、福利厚生だけではなく、社員向けのセミナー開催や新入社員研修の1コマを使って妊活の話をするというメニューも用意しています。

今は関心がない人に、妊活情報を届けるのが使命

――「いつかは子供がほしい」と思っている女性の中でも、妊活について知識・関心がある人とない人がいます。「もっと早くに知っていればよかった!」という声をよく耳にしますが、その差はどのように埋めていけばいいと思いますか?

【石川】地道で時間がかかりますが、情報を発信し続けることは大切ですね。今までもいろいろな企業や団体が情報を発信してきていますが、まだ十分に届いているとは言えません。妊活というテーマに絞ると、すでに妊活を意識している人にしか届かないので、ファミワンからはもう少し範囲を広げた情報発信を行い、興味を持つ人を増やしたいと考えています。

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2016年12月6日に東京大学駒場キャンパスで開かれたワークショップのテーマは「産む/生まれるをめぐる哲学対話」。学生をはじめ、多数が参加した。

例えば「妊活のイベント」と言うと、今妊娠したいと思っている人以外は集まりませんが、「カップルヨガ」や「ファミリーフォト」のイベントにすると、妊活の周辺にいる人を集められます。さらに対象を広げて、東京大学との協力で「産む/生まれるをめぐる哲学対話」という哲学対話のワークショップや、健康歯科協会との協力で「オーラルケアから考える妊活」というイベントなどを行っています。学生やすでに子供がいる夫婦など、幅広い層の来場がありました。2016年春には、妊活・不妊だけでなく、もう少し広い観点から情報を発信するメディアを立ち上げる予定です。

――では、男性にはどのような働きかけを行っているのでしょうか。

【石川】男性は物事を効率や損得で考える傾向があるので、そのあたりを切り口とした情報発信が妊活への関心を高めると考えます。具体的には「いずれ子供がほしいなら早めに妊活した方が効率的」「男性不妊の検査を受けて、結果を知った方が後で後悔しない」と思ってもらえるように、男性の妊活についての実例や生の声を集めて発信していきます。あまり知られていませんが、不妊の48%は男性にも要因があると言われています。原因について早い段階で分かったら、それを踏まえて次のステップを考えることができますよね。

男性の検査へのハードルを下げ、関心を高める体験談

【石川】女性と同様に、男性も検査で精子の動きが悪かったり、治療が必要だと分かったりするのは怖いです。女性の場合は、婦人科の定期検診や乳がん検査などがあるので、検査に対するハードルがそう高くないのですが、男性はそもそも生殖に関して検査をする経験がほぼありません。自分自身の体について知る機会が乏しく、また検査後についての話を聞く機会も大変少ないです。だからなおさら男性は検査を特別視してしまい、自分は大丈夫だと思い込み、クリニックに行きたがらないケースが多いです。

イベントに登壇する石川氏。妊活をはじめ、「産む」周辺に関する情報を、ネット、リアルを問わず、積極的に発信し続けている。

ただ、興味深いことに、第三者の体験談があると、「自分もやってみようかな」と思うようです。ファミワンのサービスを利用している男性で、最初は検査のことなど全く考えていなかったのに、体験談や正しい情報を知ることで検査に踏み出したという例もあります。女性側に負担がかかっている妊活が多く見られますが、こうした部分から少しでも男性の意識を変えていければと思います。

――最後に、将来子供がほしいと思っている人や、今まさに妊活中の人にメッセージをお願いします。

【石川】将来的に子供がほしいと思っていれば、まずは試しにファミワンを使ってみる、そんな気持ちを持ってもらえるとうれしいです。「自分達はまだ早いかな」と思わず、「妊娠しなかったら返金されるし、その時にどうするか考えよう」というくらいの気持ちで構いません。自己啓発を目的として英会話やヨガといった習い事に、月にいくらかをかけている人もいるかと思います。それと同じように未来の自分たちに向けた投資の1つとして、情報を得て、第三者の声を聞きながら妊活を進めていく。夫婦どちらかに任せっきりにせずに話をする。是非、家族の未来を考えるきっかけにしてもらいたいですね。