仕事、家庭生活、お金、親子関係……、さまざまなお悩みに、100冊以上の著作を誇る作家の本田健さんと、PRESIDENT WOMAN Onlineの連載「WOMAN千夜一夜物語」でおなじみのコラムニスト河崎環さんが回答する人生相談、連載第8回は「目上の相手に対するコミュニケーション」に関するご相談です。

【今回のご相談】
私は年齢や肩書などを聞くと、特に自分より目上の人に対しては、つい力が入ったコミュニケーションになってしまいます。力を抜いて、誰とでもコミュニケーションを取れるようになるにはどうしたらいいでしょうか?
目上の人とのコミュニケーションは、ビジネスでもプライベートでも欠かせないもの。かしこまり過ぎると、お互い疲れてしまうことも……。(イラスト=伊野孝行)

「うれしくて緊張してしまう」とカミングアウト

【本田健さんの回答】

これは、どんな人にも経験があるのではないでしょうか。まず、誰とでも自由にコミュニケーションを取れる人は、この世界でほとんどいないと思ってください。自分は平気だという人の大半は、空気が読めなくて、厚かましいヤツだと思われているかもしれません(笑)。

ある有名な人と話をしていて(私はその人といて緊張しましたが)、「すごい人といると緊張してしまいますよね」という話になりました。そして、その方も、普通は緊張しないけど、イギリスのとあるコンサートで、ダイアナ妃と同じ列の席に座ったとき、とても緊張して楽しむどころではなかったと教えてくれました。

なので、どんなに偉い人も、緊張するものなのです。誰かといて、自分が「うぁ、ちょっと硬くなっている」と思ったら、深呼吸を1つしましょう。そして、「○○さんといると、うれしくて緊張してしまいます」と言って、自分が硬くなっていることを素直に相手に伝えましょう。すると、よほどの偏屈の人でないかぎり、向こうが「大丈夫ですよ」といった言葉をかけてくれるはずです。そして、やや大げさに肩を2、3回上げ下げしながら深呼吸すると、相手も笑ってくれるでしょう。

そうすると、リラックスした自分が戻ってきます。今度そういうシチュエーションになったら、ぜひ試してみてください。

男性回答者プロフィール:本田健(ほんだ・けん)
作家。神戸生まれ。経営コンサルタント、投資家を経て、29歳で育児セミリタイヤ生活に入る。4年の育児生活中に作家になるビジョンを得て、執筆活動をスタートする。「お金と幸せ」をテーマにした1000人規模の講演会、セミナーを全国で開催。インターネットラジオ「本田健の人生相談~Dear Ken~」は2000万ダウンロードを記録。
代表作『ユダヤ人大富豪の教え』(大和書房刊)など、これまでに著書は100冊以上、累計発行部数は680万部を突破。
【本田 健 公式サイト】http://www.aiueoffice.com/

相手の「偉さ」を見極める経験を

【河崎環さんの回答】

世間の中途半端に偉い(?)人には「大いに畏れ、敬われ、かしずかれたい」と欲している人も少なくないので、そんな人々はあなたの「つい力が入ったコミュニケーション」を「ホホッ、苦しゅうない」と思っているはずです。でも面倒なのは、中にはそんな一生懸命なあなたを安く値踏みしたり、「重たい」と敬遠したりする人もいることですね。尊重と「かしこまる」のは別物です。

ではなぜ力が入ってしまうのかを検証しましょう。「年齢が上である」。年上ならきっと自分より経験値が高いと思うのですね? 「肩書が偉い」。肩書がゴツければ、きっと知見もお金もあって自分より上等な人間にちがいないと恐縮するのですね? でもその「上等なはず」の人が一生懸命なあなたを安く扱ったり、重たいと遠ざけたりするものでしょうか? 本当に「偉い」とはどういうことか。もし相手が形式的な上下関係に価値をおかず、人間を年齢や肩書でなく本質で見る習慣を持ち、だからこそその肩書を手にしているバランスの良い人なら、あなたをリラックスさせる一言をかける力があるはずです。

この儒教社会の日本においては、目上の人を敬うことは大切な社会スキルです。あなたはそこに羨ましいほど疑問や屈折がなく、むしろ適応しているとも言えます。初めのうちは力が入っていていいのです。いろいろな人に会い、さまざまな扱いを受けるうちに、自然とあなたの中で人間観が育まれ、調整がついていきます。

女性回答者プロフィール:河崎環(かわさき・たまき)
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。