1年に1度は資産の中身をチェックしよう

一年の総括をしたい年末。大掃除より優先したい! と思っていることがあります。

保有している預金や株式といった「金融資産」のチェック、棚卸しです。一年のおわりに、「いくらあるか」と「偏っていないか」をチェックしておきたいのです。

毎月、積立貯蓄をしたり、ボーナスの残りを銀行口座においたままにしていたりなどで、「貯蓄は昨年末より増えているはず」、という人も多いでしょう。とはいえ、すべての資産を合計するといくらになるかは、意外とわからないもの。「A口座は増えているけれどB口座は減っていて、全体的には減っていた!」なんてことが起きているかも知れません。

また普通預金ばかりで定期預金や投資をまったくしていないなど、資産の中身に偏りがないかも要チェック。逆に「投資をしすぎて、急にまとまったお金が必要になったら困る」といった問題点に気付く可能性もあります。

少なくとも年に1度程度は資産の状況を把握し、昨年から増えたか減ったか、また全体のバランスなどを確認しましょう。

ざっくりでいいから現状を把握

多くの人は、銀行、証券会社など、複数の金融機関に口座を保有しており、どこにいくら預けているか、合計するといくらの資産を保有しているのかを正確に把握できてないケースも少なくありません。まずは銀行預金の最新の残高を確認し、一覧表にまとめてみましょう。

定期預金など、実際には利子が付いて通帳に記載された額とは異なることがありますが、ざっくりと全体像をつかめればいいので、細かい金額にこだわらなくてもOKです。

株式や外貨、投資信託などの投資商品は値動きがあるので、時価をチェック。保有している株式などの時価をネットで調べてもいいですし、面倒なら金融機関から送られた取引報告書の数字でもいいでしょう(最新とはいきませんが……)。ネット証券などで取引している場合は、ログインページの口座情報で確認できます。

終身保険や学資保険など、先々、保険金や満期金などが受け取れる保険も、金融資産の一部です。保険証券を見ると、現時点で解約した場合の解約返戻金の額が記載されていると思います。それが今の時点の資産額といえます。

「そこまでするのは面倒!」という人は、預金や投資の分だけでも構いません。「そのほかにも○○保険がある」と覚えておきましょう。面倒だから放っておく、というより、ざっくりでも把握する、というほうが大切です。

さて、リストアップしたものを合計したのが、現時点での金融資産の(ざっくりとした)合計額です。

偏りを確認することが大切

次は「偏っていないか」のチェックです。

つくったリストをもとに、どんな資産を、いくら保有しているかを円グラフで表すと全体のバランスを捉えやすくなります。

金融資産は「流動性資産」、「安全性資産」、「利殖性資産」の3つに分類します。

【流動性資産】
生活費として必要なお金、病気やケガ、冠婚葬祭など、急な出費に備えるためのお金で、いつでも引き出せる資産。おもに普通預金や貯蓄預金など。

【安全性資産】
元本が保証されている資産で、定期預金などが該当する。住宅購入の頭金、教育費、車の買い替え資金など、ライフイベントに備える資金。個人向け国債は元本保証がないが、国で利払いや償還を実質的に保障しているので、安全性資産に位置付けられる。終身保険なども、保険会社の健全性に問題がなければ安全性資産としていい。

【利殖性資産】
株式や投資信託など、元本保証がない代わりに、収益性が期待できる資産。元本割れのリスクがあるものの、預貯金よりリターンが期待できる。

それぞれの資産がいくらずつあるかを計算して、円グラフを描きます。金融資産が300万円で、定期預金と個人向け国債が100万円なら、100万円÷300万円×100で、安全性資産の割合は33%です。

利殖性資産については、その中身も要チェック。単に「投資信託」というのではなく、投信が投資している資産(株式、債券、リートなど)に注目します。

株式に偏っていれば、株式とは異なる値動きをしやすいと考えられている債券を併せ持つ、国内だけに投資しているなら海外の資産も組み入れるなど、分散を考える必要があります。

「流動性資産がほとんど」という人は、安全性資産を増やして少しでも有利に増えるようにした方がいいですし、「利殖性資産が多い」という場合は、住宅購入の費用や教育資金などを安全性資産にしなくていいか、考えたいところです。

結果を来年に活かす

さて、現状を把握したら、来年の貯蓄計画に活かしましょう。

貯蓄が思ったほど増えていなかった人は、家計を見直して積立額を増やすなどの計画を。

利殖性資産がほとんどないという人は、投資信託の積立購入などを検討しましょう。

年末がムリなら年明けでもいいと思います(私もそうなりそう)。毎年の習慣に加えるのが理想的です。

金融資産のほか、資産には自宅や車なども含まれますし、住宅ローンなどの負債もマイナスの資産として捉える必要があります。そのあたりについては別の機会に述べたいと思います。

フリーライター 高橋晴美(たかはし・はるみ)
1989年よりライターとして活動。資産形成、投資信託、住宅ローン、保険、経済学などが主な執筆テーマ。