感謝やお詫びの気持ち、社内のちょっとしたメッセージを、受け取った相手の心が震えるような文章で伝えたい。コピーライターの佐々木圭一さんと、一緒に書いてみよう!

パソコンやスマホで簡単にテキストを打ち、あっという間に用件を相手へ送ることができる今の時代。一文字、一文字、手書きで、切手を貼り、相手のもとに届くまでに最低1日はかかる手紙ほど、非効率なものはありません。けれど、手間も時間もかけるからこそ、相手に伝わるその想いはデジタルの文字で見る文章の何倍もの効力を発揮するのです。

佐々木圭一さん

ただし、気をつけなければいけないのは「手紙を書けばそれでいい」と思ってしまうこと。礼儀を重視するあまり、電報の定型文のような文章を書くと「マナー本の丸写しだな」と相手にバレバレでかえって逆効果。感謝の気持ちを伝えるお礼状や、ミスや不手際を謝罪する詫び状ならなおのこと、紋切り型の文章ではなく、コトバで感情を30%増しに表現するくらいがちょうどいい。

「心に響く文を作るのは“センス”だ」と言う人がいますが、僕はそうは思いません。美味しい料理にレシピがあるように、心に響く美しい手紙にも“レシピ=法則”があります。

例えば、喜びを伝えるなら、自分の感情や感覚を赤裸々に綴る。お詫びをするなら、相手が自分にとってどれだけ大切な存在かを具体的に表現する。すると、文面はさらにイキイキと輝きを増し相手の心を揺さぶるものへと昇華していきます。そこに書き手の息づかいまで伝わりそうな文字が並べば、その手紙は大切に手もとに残される宝物にもなりうるのです。

お礼の手紙 ――自分の体温を吹き込む

●自分の感情や体感を具体的な言葉で赤裸々に表現

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お礼の手紙

お礼の手紙では、感謝の気持ちをいかに伝えるかが重要。そこで効果的なのが、自分の感情や体感を赤裸々に表現する方法。相手からお菓子を頂いたお礼の場合、まず伝えたいのはそのお菓子が「美味しかった」ということ。この美味しさに対する感動を「目を見開いてしまいました」という体の反応で表現。食べている光景が目に浮かび、相手は「贈ってよかった」と思うはず。


【こんなフレーズも】
・思わず声が出てしまうほど驚きました!
・喉がカラカラになるほど、感動のご著書でした。

お詫びの手紙 ――スペシャル感を出す

●「あなただけ」と相手を限定し誠実な姿勢を表す

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お詫びの手紙

相手に不快な思いをさせてしまったとき、まず見せるべきは誠実な姿勢。相手に向き合っていることを証明する表し方が「○○さんだけには」と相手を名指しする方法だ。あえて文面に名前を入れることで、「自分を必要と思ってくれている」と感じてもらえれば、マイナスに働いていた相手の気持ちをプラスに変えることも可能。相手を思うスペシャル感が失敗を成功に変える秘訣にもなる。


【こんなフレーズも】
・伊藤さまからのご依頼なので、どうにかできないかと調整したのですが……。
・鈴木さまにはどうしてもお許しいただきたいのです。

佐々木圭一
コピーライター、作詞家。ウゴカス代表取締役社長。日本人初となる米国の広告賞One Show Designでゴールド賞を獲得(Mr.Childrenの楽曲のコピー)するなど、国内外で数々のアワードを受賞。仕事を通して得た“伝え方”のノウハウをまとめた『伝え方が9割』(ダイヤモンド社)は66万部のヒット作に。近著に『伝え方が9割2』。携わるモノに感動をつくりだすことをライフワークとし、現在は大学の非常勤講師として学生向けの講座を持つ。