女性を本気で伸ばしたい会社と口先だけの会社は、どこが違うのでしょうか。どうすれば見極められるのでしょうか。
「女性管理職比率」や「役員比率」だけでは見えてこない、企業の“本気度”がわかる独自の格付け方法を編み出しました。
出世とやりがいは期待できないけれど、女性にやさしい会社
※WLB型とは? 格付けのA~Cの定義とは?
【あなたが働く企業はどのタイプ? 6つのタイプ別「企業の特徴」http://woman.president.jp/articles/-/788】を参照
こちらは、有休が取りやすく、ハードな職場ではありません。女性の既婚率や有子者率が高く、結婚後も出産後も仕事を続けていることがわかります。さらに、育児休暇もきちんと取っています。
いいことずくめではありますが、問題はキャリア。まず、総合職で採用される女性は多くありません。役職者の女性比率も低い。つまり、一般職かもしくは総合職でもアシスタント的に働く、というタイプの企業となります。
●超大手企業のグループ会社が多い
企業の顔ぶれの特徴は、そのほとんどが、超大手のグループ会社・関連会社であること。東芝ソリューション、東芝テック、富士通エフサス、日立システムズなど、頭に親会社の名前がつく企業のほかに、デンソー、愛三工業、アイシン精機、日野自動車の4社はいずれもトヨタ自動車系列です。
こうした超大手企業のグループ会社は、人事制度なども親会社に準じて設定されるため、待遇や雇用条件なども優れている場合が多いのです。
もともと日本の大手は、「女性は結婚までの腰掛け勤務」という見方をしている企業が一般的でした。そこから、徐々に女性進出、女性活用が始まり、今、変化の途上にあるところです。
その第一段階が、一般職社員が長く働けるようになること。こうした企業では、キャリアアップよりも勤続が優先され、その分ワークライフバランスが整うということになります。
●男性社会で脇役として働く
ここに挙げた企業は、まさにこの段階にあるのでしょう。そこからさらに進化して、狭き門型やキャリア万全型に移っていくことになります。
ということなので、WLB重視型企業では、本当の女性活躍はまだまだこれからであり、男性社会の中で、女性はあくまでも脇役であることを覚悟する必要がありそうです。主役ではなく、縁の下の力持ち。競争より奉仕。そんな価値観で、緩く長~く働きたい女性に向いているといえるでしょう。
社員が告白! データには出ない本当の話
Aさん:デンソー 40代男性「男性は総合職、女性は一般職という区分けが明確です」
Bさん:アイシン精機 30代男性「女性は男性と張り合わず、補助的な仕事に徹しています」
Cさん:バンダイナムコエンターテインメント 30代女性「残業時間は、部署によって極端に差があります」
※取材協力者は「キャリコネ」を運営するグローバルウェイを通じて募集。
トヨタ系の自動車部品メーカー、デンソーは、産休・育休、短時間勤務制度など、仕事と家庭を両立させる制度が充実しており、本社内には託児所も。
男性社員Aさんが言う。
「女性従業員比率は11%というまさに男社会です。しかも総合職は男性、一般職は女性という区分けが明確で、驚くべきことに、つい最近までは社員番号の最初の数字が男女で違ったほどでした。特に技術部門では総合職の女性はほとんどいません。一般職の女性にとっては、残業も休日出勤もほとんどなく、有休も取れ、給料も地元レベルでは高いので、よい職場といえるでしょう。結婚相手の男性が社内で見つかるかもしれませんし」
同じくトヨタ系の部品メーカー、アイシン精機も同様の男社会で、託児所を含め、女性が働くための制度面も充実している。有休消化年平均は18.4日、女性の既婚率は実に86.3%だ。
男性社員Bさんいわく、「女性は男性とは張り合わず、男性を助ける補助的な仕事だけを担当する。こうした男女の性別役割分業は、トヨタを含めた3社の所在地である愛知・三河地方の企業の伝統かもしれません」。
ただ、Bさんはこうくぎを刺す。
「特に30代後半から40代の女性社員に、給料分はしっかり働いてほしいと思ってしまう人が多い。簡単な事務仕事しかしていないのに結構な年収を得て、他人の迷惑を顧みず、自分勝手に休みを取ってしまう」
こうした女性の行動をなぜ是正できないのか。
「役職者の娘や親戚であることが多く、上司が強く言えないのです。でも20代から30代前半の未婚女性は違って、結婚や出産と仕事を両立させたいという意識が強い。時代が変わったのでしょう。彼女たちが結婚や出産をして、権利を行使する場合、先輩たちのようにならないでほしい」
●法律の成立で存続危うし!?
トヨタ系のこの2社、実は2014年に、現状の女性管理職の数を20年までに3倍にする施策を打ち出している。WLB重視型からキャリア万全型にかじを切ろうとしているのである。
デンソーでは、優秀な女性を一般職から、管理職になれる総合職に転換させたり、女性専用の新しい管理職を設けたりしている。
アイシン精機でも、女性の管理職予備軍を人事が把握し、説得して課長試験に臨ませている。ただこうした動きに、Aさん、Bさんはともに懐疑的だ。
「げたを履かせて女性を管理職に上げることが企業にとっていいことなのか、大いに疑問です。将来、名ばかり管理職ができなければいいのですが」
この背景にあるのが、今年8月末に成立した女性活躍推進法だ。企業に女性登用の行動計画の策定・届け出と公表を求める同法は、WLB重視型の存続を危うくさせる可能性がある。
●データは平均値部署ごとに確認を!
もう一社、ゲーム大手、バンダイナムコエンターテインメントの女性社員Cさんに話を聞くことができた。
同社で特筆すべきは、14.0日という有休消化の高さだが、Cさんはこんなふうに言う。
「有休は年間で最大20日、支給されます。自分のパソコンから申請できるので、上司に気兼ねなく取得できるのは事実ですが、あくまで平均の数字です。残業を含め、労働時間が長い部署と短い部署とで極端な差があります。イベントが土日にあるので、休日出勤が当たり前、残業が月平均60時間という部署もあります。そういう部署では産休から復帰して時短勤務に移行したものの、子どもを寝かしつけ、家事も終えた真夜中に残務処理のメールに追われる場合もあるようです」
待遇も芳しくないという。
「忙しくても待遇がよければいいのですが、もうかっているわりには、給料は同業他社に比べても低く、女性を育てる会社といわれても首をひねってしまいます。ただ、フレックス制なので、子どもが病気になるなど、突発事項があった場合、臨機応変に対応できるのは助かります」
こうした数字は部署ごと、職種ごとに見る必要があるということだ。