「初めてのスーツオーダー」に自腹で挑戦した編集部のT部員。1カ月してオーダーしたスーツが出来上がりました。果たしてその仕上がりは……。

きちんとした装いが求められる場面が多くなる管理職やリーダー。そんな人たちのための「最強の仕事服」として、編集部のT部員が求めるのは、1)いざというときに着て行ける、(2)男性管理職の中でも悪目立ちしない、(3)体に合っていて着心地がいい、この3拍子がそろうスーツ。予算は5万円程度という条件で、東京都千代田区にある生地商社が直営するオーダースーツの専門店、OGGI HOUSE(オッジハウス)に相談したところ、ジャケットとタイトスカートの組み合わせのスーツを、生地に縫製込み48000円(税抜)という価格で、セミオーダーすることとなりました。

「最強の仕事服を手に入れる」、【前編】の「予算5万円」でオーダースーツ! ――初めての“おあつらえ”を成功させる秘訣とは?(http://woman.president.jp/articles/-/789)」では、STEP1~3として生地選び、ジャケットのデザイン決定をリポートしました。【後編】では引き続き、スカート、シャツのデザイン決定、採寸、試着についてレポートします。

STEP4:スカート丈は、ソファに座ったときを考えて

続いてタイトスカートです。「体型上、『タイトスカートは私には無理だ』と、諦めていたんですよね」とT部員。試しに採寸してみると、「確かに、ウエストとヒップの差が大きいですね」(OGGI HOUSE 東京神田店の店長 堀越雅美さん)。こうしたやりとりも、女性テーラーさんとなら抵抗なくできます。

スカートで重要なのは、丈です。基本は膝が隠れるくらい。応接室に通されてソファに腰掛けることもあるので、必ず座ったときのことも考えましょう。「Tさんは膝下が細いので、そこを隠さずに見せる丈がいいと思います」という堀越さんの見立てを参考に、スカート丈は決まりました。

STEP5:シャツは襟の形と開き具合がポイント

最後はシャツです。オーソドックスでベーシック、どこに行くにも困らない初めてのオーダースーツを“基準スーツ”と呼ぶならば、シャツも同様。“基準シャツ”として背伸びせず、オプションなしのシンプルなものを作ります。お値段は1着7800円(税抜)と、既製品とそう変わりません。

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【写真左】女性のスーツオーダーでは非常に重要になるスカート丈。OGGI HOUSE(オッジハウス)では、スカート丈を刺繍した専用の道具を使って、仕上がりのイメージを確認することも。【写真右】ターンナップと呼ばれる折り返しがあるデザインの袖口。ジャケットを脱ぐことが多い人は、このように袖口にデザインを加えても。イニシャルを刺繍することもできる。

生地は、1着目はストライプの織り模様が入った白、2着目は淡いピンクを選びました。シャツは柄や色の選び方で、全体の印象を調整することができます。チェックだとカジュアルな雰囲気に、はっきりしたストライプだとクールな印象になります。ピンクは柔らかい印象になるので、チームで共同作業をするときに着てみるなど、使い方を工夫することもできます。

シャツの形は、バリエーションの幅が広く組み合わせは無限にありますが、ポイントは襟の形と開き具合になります。自分の好みや身長、顔立ちに合わせて決めます。「Tさんは、あご周りが小さいので、襟も小ぶりなものがお似合いですね」(堀越さん)。T部員も「小さくて詰まった感じの襟が好きなのです」ということで、すんなり決まりました。

ボタンは好みで配置できるため、全体のバランスを見ながら襟の開き具合を決めることができます。「Tさんは首が細くて長いですね。身長とのバランスから見ても、あまり開きすぎない方がよさそう」(堀越さん)ということで、ボタンの位置を少し上の方にしました。

このほか、カフスの形、ウエストラインのシルエット、前立てのデザインを選びます。カフスは、白の方はオーソドックスな形に、ピンクの方は「ジャケットを脱いだときにポイントになる」(T部員)ということで、ターンナップという、折り返しのあるデザインにしました。

STEP6:採寸で既製服とのギャップを補正

ジャケット、スカート、シャツのデザインを決めた後、採寸に移ります。首周りとゆき丈、袖丈など、細かく測ります。「身長も低いし、腕も短いので、シャツは袖を折って着るのが当たり前でした。なんでオーダーを思いつかなかったのかな……」と話すT部員。この日着ていた既製品のシャツの袖は、理想の丈より7センチも長いものでした。堀越さんは「既製品は、少し長めに作られていますから。また、腕の長さが左右で異なる人も多いですが、オーダーシャツならそちらにも対応できます」と言います。

「寸法が同じだとしても、人によって肉付きや顔の大きさなどが異なりますので、“お似合いの一着”は違ってきます。だからこそ、テーラーは大変な仕事ですが、楽しいですよ」と言う言葉を胸に、出来上がりを待ちます。

最高の着心地、自分だけの1着

注文・採寸をしてから1カ月半後、再び東京・神田のOGGI HOUSEを訪れました。オーダーなので、さぞや完璧なものが出来上がっているに違いない、と期待したいところですが、洋服は「着てみないと分からない」もの。体を入れてみて初めて気付くことも多いといいます。T部員の“初めてのオーダースーツ”の場合はどうでしょうか?

試着第一声は「うわー、気持ちいいですね! 体に合った服ってこんなに楽なんだ」。まさにT部員の当初の希望「シャープな印象」のスーツが出来上がりました。クールさと女性らしい柔らかさの両方を醸し出しています。

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【写真左】袖丈の採寸。既製品は、理想の丈より7センチも長かった。女性の場合は、ジャケットの袖口かシャツがのぞかないのがスマート。ジャケットに合わせてシャツを仕立てておくと、グッドバランスの組み合わせとなる。【写真右】試着。既製品にはないフィット感に大満足。

タイトスカートもぴったりの仕上がりです。「“似合わない”のではなくて、“体に合っていなかった”から、諦めていただけなのですね……」(T部員)。すっきり背が高く見えますし、本人が気にしていた「お尻が大きい」という体型の悩みを感じさせない着姿です。

着る際は、体に対してシャツの前中心(ボタンの位置)、タイトスカートの中心(後ろ中心の線)がずれないようにすることがポイントです。「でも、タイトスカートって、はいて歩いているといつのまにか回っちゃうんですよね……。どうしたらいいのでしょう?」(T部員)。これに対して堀越さんは、「それは確実にサイズの問題です。体に合ってなかったからですよ。ウエストとヒップがフィットしていれば、回らないものです」と説明してくれました。試着の結果は大満足。今回は直しの必要はありませんでしたが、もし着心地で気になる点がある場合は、試着の時点で相談しましょう。

オーダースーツが「ラク」と言われる理由

OGGI HOUSEでは、女性テーラーの堀越さんが店長を務めていることから、女性のオーダースーツも多く手がけています。一度利用すると、その後リピーターになる女性が多いそう。その理由として最も多く挙がるのが「ラクだから」というもの。体にフィットするスーツは、“着疲れ”しないため仕事もはかどります。

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【写真左】2つボタンに水平のポケット口。初めてのスーツオーダーは、オーソドックスなデザインがお勧め。【写真右】シャツを替えることでイメージチェンジ。アクセサリーでアクセントをつけられるのは女性ならではの特権。

また、基本を押さえつつ、生地やデザインでバリエーションを持たせたスーツとシャツをいくつか用意しておけば、着回しが利き、毎日のコーディネートで悩まずに済みます。忙しい女性こそ、オーダースーツはベストの選択と言えるかもしれません。

「“オーダースーツはラク”というのは『緩くてラク』ではなく、『体と気持ちを適切にサポートしてくれてラク』という感覚です。どんな人に会うときも、このスーツを着ていれば、服を気にしてひるむようなことがありません。自分だけの1着をオーダーするのは楽しくて、気分もアガります。美容院で自分に合う髪型にしてもらうように、構えずに1度相談してみるといいと思います」とはT部員の声でした。

【スーツオーダー、6つのポイント】

1.予約がお勧め
迷ったり悩んだりするのも楽しいものです。特に初回は、じっくり時間を掛けるつもりで出かけましょう(ちなみにT部員の場合は、デザイン決定と採寸で2時間かかりました)。

2.実際にスーツを着るときに近い格好で
トップスは薄手のブラウスやカットソーなど。スカートをオーダーする場合は、合わせたい靴を持参するか、履いて行きましょう。特にパンツスーツの場合は、ヒールの高さに合わせて、総丈(ウエストベルト上端から裾までの長さ)を調整します。パンツに合わせる靴を用意していきましょう。

3.遠慮しないで頼る
テーラーさんはプロです。不安なこと、気になっていること、体形の悩みなどはどんどん相談しましょう。スーツに関するマナーや、お手入れについてもアドバイスがもらえます。

4.小さな生地サンプルだけで決めない
生地は面積が広くなると、印象が変わります。実際に使用する生地がある場合は、広げてもらい、肩に当てて顔写りや体形とのバランスなどを確認してから決めましょう。サンプルしかない場合は、スーツに仕立てた際の印象を、お店の人に聞いてみましょう。

5.欲張らない
高級な生地、華やかな裏地、凝ったボタンや刺繍などのオプションを見ると、つい「せっかくだから」と背伸びしたくなりますが、1着目はできるだけオーソドックスに、基準スーツを作ることを意識して。応用編は、2着目以降のお楽しみに。

6.出来上がってからがスタート
完成し、実際に着てみてからがスタートです。気になるところがあれば、遠慮なくテーラーさんに相談して、可能なら直してもらいましょう。

OGGI HOUSE(オッジハウス)東京神田店
住所:〒101-0047 東京都千代田区内神田3-4-7戸羽ビル1F
電話番号:03-3252-0050
定休日:日曜日、祝日
営業時間:11:00~19:00(土曜日は18:00まで)