お金のことを知り尽くしている金融機関の女性たちは、いったいどんなふうにお金を貯めているんだろう? 野村信託、シティバンク、三井住友、UBS、三菱UFJ国際投信、ゴールドマン・サックス――。最前線で働く6人の女性がこっそり教えてくれた。

金融機関で働く女性たちに、どのように経済や金融の流れを捉え、金銭感覚をブラッシュアップしてきたのかをインタビュー。運用のイロハや、プライベートのお財布事情にまで踏み込んで話を聞いてみたところ、戸惑いながらも、しっかりした口調で答えてくれた。

経歴も、携わった仕事も異なる彼女たちだが、話を聞いていくなかで、4つの共通点が見つかった。

1つ目は、金融情報に敏感であるために、日経新聞やブルームバーグなどで、経済ニュースに毎日触れ続けているということ。その蓄積が、知の土台となっている。

2つ目は、「運用の基本は、分散&長期」と考えていること。値が上下する商品に手を出す場合、必ず資金を分散させてリスクヘッジをおこなう。また、目先の利を追わず、長年持ち続けることで経済の大きなうねりを体感している。

3つ目は、貯蓄や投資用のお金は“ないもの”として、生活口座とは切り離していること。お金を使うときは、自分にとって本当に価値あるものかどうかを熟考する。

そして4つ目は、アベノミクスを機に、日本経済が大きな節目を迎えていると認識し、自身で資産を守る手段を講じていること。

彼女たちにならい、お金と賢くつきあっていきたいものだ。

昨年、国内の銀行で戦後初の女性トップとなった鳥海智絵さんは、米スタンフォード大学にMBA留学した経験を持つ。

野村信託銀行・鳥海(眞保)智絵さん

「米国人と比較すると、日本人は金融資産に対する意識が希薄です。特に日本の会社員は源泉徴収されるので、税への関心も薄れがちですよね」

その点、米国では個人が確定申告を行うので、生活コストや税金の額をしっかり把握し、対策を練っている。

「日本のシステムは楽ですが、その分資産に対する“手触り”のような感覚が弱くなるように思います」

超低金利時代の今は、自分で工夫して資産を守ったり、つくる必要がある。

「お金を増やすには、普段使いの口座と貯める口座を分けると良いと言います。当社のようにキャッシュカードがないネット銀行もあり、貯める口座向きですよ(笑)」

鳥海さん自身は、給与天引きで投資信託を累積投資で購入し続け、値下がり時に買い増し、平均購入単価を下げる「ドルコスト平均法」を実践中。

「少額から積み立てでき、資産運用を考える時間のない方にもお勧めです」

若手のトレーダー時代から心に刻んでいる教訓は、「損して得を取れ」。

「目先の損得でなく、中長期で考える冷静さが、資産運用を長続きさせるコツだと思います」


●鳥海さんの財布
部長に昇進した際、義母がプレゼントしてくれたコーチの長財布。ポイントカードも複数持ち、しっかり貯めている。

●好きな洋服
BERARDI

●ラッキーアイテム
えんじ色のもの

●好きな人
錦織 圭

●金融以外の仕事につくなら
チョコレート屋さん

●鳥海さんにとって、お金とは?
努力と成長にレバレッジをかけるもの


野村信託銀行 鳥海(眞保)智絵
執行役社長。1989年、早稲田大学法学部卒業後、野村證券に入社。2010年、野村ホールディングスの経営企画部長に就任、12年から執行役員。14年4月より現職。49歳。