先日、ロングインタビューを主体とするテレビ番組を見ていると、思わず、「その通り!」と声が出そうなった瞬間があった。インタビュアーが企業の代表であるゲストに「商売人の基本、一番核になること、大切なことは何ですか?」という質問をした。ゲストは一瞬、カメラの方を向き「え? それは……撮影ってことじゃなくて、個人的に? どういうこと?」と。

インタビュアーが再び「私自身が一番お聞きしたいことです!」と問いかけると、ゲストは笑顔で、しかし真剣にこう答えた。

「ちゃんと答えようとしたら1、2時間かかりますよ。“経営理念です”と簡潔に答えたところで、“そんなこと分かっています”で終わっちゃうでしょ。

ビジネスは、日々の仕事や計画の中で困難に陥った時、どう立ち向かっていけばいいのか、変えちゃいない原理原則と細かい方法論の組み合わせの繰り返しですから。(この番組で、あなたがインタビュアーだからこそ)正直に答えたいので、ひと言で語れるものではありません」と。

お茶を濁すように、無難に質問をクリアしようとせず、正直に、真剣に答えたゲストの言葉は新鮮に私の心に届いた。そうなのだ……簡単に答えを聞いてはいけないのだ。

『もう悩まない! 働く女性の感情整理術』(嶋津良智著/静山社刊)

書店で平積みになっている自己啓発書、ロングセラーとなっているビジネス書、タイトルを見ていくと、「現代のストレス」が助けを叫んでいるように感じる。悩んでいる人、読者は藁にもすがる思いでそういった本に答えを求めていく。

だが、ダイエット本と同じく、明確な1冊はないのが事実。つまりある人にとっては上手くいくやり方、考え方であって、万人に共通する完璧な1冊は存在しない。忙しい読者はすぐに解決策、答えを求め過ぎなのではないだろうか?

自分を制するものが「勝利」を掴む

今回、紹介させていただく『もう悩まない! 働く女性の感情整理術』は、解決策というよりは、感情コントロールの手引き書であり、それもレンガをひとつずつ重ねて壁をつくっていくように、著者が読者に対して疑問を投げかけ、考えてもらい(ここが大切!)、最善策はこうなのでは? と展開する構成になっている。

いきなり答えではなく、まして答えは読者自身が納得して得るものだという志向性を、章が進むごと強く感じる書である。

男性は「結果主義で勝負プライド型」、女性は「プロセス思考で共感協調型」という認識を持ち、「女性が思う以上に、男性は女性の気持ちを分かっていない」と理解することから感情の整理を始めていくと、会社、ビジネス、もっと言えば日常もよく変わっていくのではないか、と投げかけている。

それを考え方のベースに置き、次のように説く。

(1)感情整理の基本は、書くこと。悩みも不安も落ち込みも書き出し、不安の誇大妄想を取り除くこと。
(2)「できない」「知らない」を自分の中で禁句にすること。「できない」ならば「できる」ように努力するか、「できる人」にお願いする。「知らない」ことも同様、調べたり、人に聞いたりすること。

以上を実行していくと、例え真っ暗なトンネルの中を歩いていても、出口(光)が見えてくる、そう本書を読んで感じた。

――働く女性にとっては、まだまだ働きづらい環境であり、理不尽に感じる状況が多いかもしれません。(中略)「自分に何ができるか?」という発想の転換をして、解決策に集中してほしい、自分の感情をコントロールする術(すべ)が必要なのです。(本書、エピローグより抜粋)

悩みが何であるのかを理解し、逃れられない不安から解放されるために、まず「書き出す」。後は行動あるのみ。安易に答えのある本を探すのではなく、自分自身の手で悩みを明確にし、考え、行動してほしい。きっと出口(光)が見えてくるから……。