壱番屋創業者秘書をはじめ、30年以上に渡りその道を究め、日本秘書協会の「ベストセクレタリー」にも選ばれた“プロ秘書”中村由美さんから、すべてのビジネスパーソンに通じる“秘書の素養”を教わります。

プロとは「人には寛容、自分には厳しく」できる人

新人がつまずくのは、大抵自分の仕事に慣れ、自信を持ったときです。「自分は100パーセントできている」と思った段階で、成長は止まってしまいますし、他人の意見を聞く耳も持てなくなってしまいます。さらには、必要以上に相手に厳しく当たってしまったりもするのです。プロの秘書は「相手のミスを言及しない、自分のミスを弁明しない」ことをモットーにしています。

仕事に慣れ、できることが増えると仕事はどんどん楽しくなる。そんな新人が自分の力を過信し、大きなミスをしました。あなたならどんな声がけをしますか? またあなたはそこから何を学びますか?

特に新人のときは、「自分はまだできていない」「自分には足りていない部分がある」という謙虚な気持ちが必要です。これは、自分の実力を誠実に見つめ直すということ。その気持ちがあればこそ、他人のアドバイスを素直に受け入れ、自分のものにしていくことができるのです。その気持ちがなくなった瞬間、多くの人は自分を過信し、大きな落とし穴に落ちてしまいます。

ちっぽけな自信を捨て去る

間違いを犯さないためには、自分を完璧だと思わないこと、自分で自分を過小評価したり、過大評価したりしないこと、自分を第三者的に見ること、が必要です。自分はどんなに完璧にやり遂げたと思っていても、上司や周りからの評価は違うものです。100パーセント完璧どころか、ギリギリ合格点の60パーセントという場合もあるかもしれません。そう思っていれば、仕事が完成しても「何かミスはないか」と必ず確認することができますし、上司に提出する際にも自然と「お待たせいたしました。これでよろしいでしょうか」という謙虚な言葉が出るはずです。自分が完璧だなどと思わなければ、他人のミスを必要以上に責めたり、上から目線で発言したりすることもなくなります。

それには、自分で自分を評価しないということを肝に銘じる必要があります。そもそも評価というのは、第三者がすることなのです。新人にかぎらず、それを分かっていない人が驚くほど多いように思います。そして、自分の評価は得てして甘くなりがちなので、実力を過信したり、さらには「上司が認めてくれない」「会社は分かっていない」と不平不満を言うことになります。しかし、その実態はといえば、周りや上司の評価のほうが正しく、自分が実力を見誤っているケースのほうが断然多いものなのです。

なぜ少し仕事に慣れてきた頃に失敗をしやすいのか。それは、ちょっとした自信が邪魔をして、最初の頃には徹底されていたダブルチェック、トリプルチェックが疎かにされるからです。

手痛い失敗から学ばずにすむよう、常に謙虚な心を持ち続け、慎重な行動を心がけてください。これは新人だけでなく、どんなベテランビジネスパーソンにも必要なことです。

 プロ秘書からのメッセージ 
自分で自分を評価しないということを肝に銘じる

中村由美(なかむら・ゆみ)
コンサルタント会社の社長秘書を経た後、株式会社壱番屋に入社。創業者・宗次徳二氏をはじめ、3代の社長に仕える。日本秘書協会(元)理事、ベスト・セクレタリー、秘書技能指導者認定、サービス接遇指導者認定。カレーハウスCoCo壱番屋創業者(宗次夫妻)秘書。著書に『日本一のプロ秘書はなぜ「この気遣い」を大事にするのか』(プレジデント社刊)(http://presidentstore.jp/books/products/detail.php?product_id=1730)などがある。