いつの時代でも、「~らしく」は付きまとう。「男らしく」「女らしく」「親らしく」「子供らしく」「(会社では)リーダーらしく」「(学校では)先生らしく」等々。「~らしく」している分には、見えない鎧を着ているようで、攻撃されにくい。が、いったん「自分らしく」「私らしく」といった自分本位の主張をしだすと、とたんにその鎧は消え去り、攻撃されることが多々ある。

出版業界で、また書店の棚や平積みにここ数年、如実に見られる傾向は「働き方」「ライフスタイル」に関する書籍(ビジネス本、自己啓発本)の刊行が増えているということだ。“「こうあるべきだ!」という見えない価値観の支配から逃れよう、打ち破ろうというカタチ”、“先人たちの賢い知恵、古の言葉から、今を乗り越えようとするカタチ”、“対立するのではなく全く新しい志向性で挑むカタチ”、明確な答えのない問いかけに対して様々なカタチを表す書籍でいっぱいだ。

『二人が最高のチームになる ワーキングカップルの人生戦略』
著者:小室淑恵・駒崎弘樹 英治出版・刊

ロングセラーとなっている『ワーキングカップルの人生戦略』は「仕事術」「新しい夫婦のカタチ」を軸として解りやすい構成で作られている。

「コミュニケーション戦略」「時間戦略」「妊娠・出産戦略」「育児戦略」「お金戦略」と章が組まれ、問題点、解決策が経験から語られ、失敗や著者たち自身の試行錯誤も書かれているため、親近感も有り、それが多くの読者から愛されている理由なのだろう。

著者は小室淑恵氏と駒崎弘樹氏の二人。

「二人の“先生”がロールモデルを“指南”する場(本)ではない」とし、多くの人が読後、次の瞬間に行動に移せるようなステップを示そう、という想いからこの本はつくられたという。

「働き方」×「家族の在り方」それぞれのカタチ

お二人は、共働き&子持ち経営者という共通項があり、序章~終章まで対談形式、イラスト、グラフも含めた「合理的な片付け方法」「家計分担表あれこれ」「教育費はいくらかかるか」等、具体例が書かれていることも嬉しい。

時代感覚として「今日よりも明日がよくなる」という日本は存在しない。(中略)大きな企業に入れば安心で、結婚して子どもをもったらマイホームをローンで購入し、夜遅くまで働いてなるべく出世して、定年まで勤め上げる、という人生の確固たる線路が過去に「あった」ことは知ってはいるが、自分も含め、同世代の周りの人間たちがそうした人生を送ることはもうないであろうことも知っている。(本書より抜粋)

男は「企業戦士」、女は「専業主婦」という時代は終わったにも関わらず、なかなか古い価値観に縛られ、「仕事」「家事」「育児」の悩みを持つ女性は多い。そして男性は、「職場」にも「家庭」にも居場所がなく苛まれている。

「~らしく」生きていくこと、当たり前のように意識と行動を制約する古い価値観から解放されなければ、もっと柔らかく考えると日常のどうでもいいようなことをより良くしていくことこそ、幸せな暮らしに繋がっていくのではないかと問うている(共に考えている)のが本書である。

「働き方」と「家族の在り方」は切り離せないのである。

これから就職する学生に、30代・40代で転職をした(考えている)社会人に、管理職となっている男性にも、女性にも読んでほしい。共働きの夫婦、これから職場へ復帰するという妻、妻が働いて再就職活動中の夫、様々な場面で本書に出会ってほしい。

「○○だからできない」という“言い訳”を力説するよりも、「○○するために何をすればいいのか」を“考えていく”ことの大切さをこの本は語っている。

必読の一冊である。